外部CTOに組織運営について相談しよう

 TDのコレクティブである、BASSDRUMが外部CTOと言う新たな職種を提案している。

 素晴らしい取り組みである。以前も自分も記事に書いたが、フィジビリティチェックはTDの価値そのものなので有料であるべきだし、一方でカジュアルにフィジビリティの相談をできる環境も同時に用意するべきだ、と思っている。

 『我々に持ってきたこの仕事を貴方(クライアント)は依頼するべきでない』という資料を自分のノウハウをフル動員し、時間をかけて丁寧に作成し、そのうえでMTGに臨み、めでたく意見を認めてもらい発注取り下げ!ノーマネーでフィニッシュ!というのはなんとも悲しい。かといって全部の相談を『一回見積もり取ってから答えさせていただきます』というのもなんだか片っ苦しい。ぜひ業界の商慣習になってもらいたい。

が、僕のところに時々相談に来る『CTO的相談』は外部CTO的なもので解決できるものとできないものがあるのであたりを書いていこうかな、と思う。

1.プロジェクトの最初期の0-1のフィジビリティチェック
 恐らくここが最も外部CTOが効果を発揮するところだ。企画層が考えたことをカジュアルに聞いて0-1の芽を早期に判断する。もっというと芽の出そうにないやつを秒単位で潰す。企画→判断のサイクルが数十倍、数百倍にになるだろう。
 プロトタイプを作って検証する必要がある場合もあるかもしれない。が、彼らは『何処を検証すればこの企画が成立するか』を判断できる(原理試作ではなく、単一の、あるいはいくつかの機能試作で済ませられる)のでプロトタイプの速度も速い。

2.企画をモノにするための外部を含めた開発チームビルディング
 ここもかなり外部CTOがコミットできる範囲だろう。新しい何かを作る際、クライアント側にその人的リソースがない、あるいは人的リソースを分けてもらうことが基本難しいケースが多い。そのため外部で組んでしまったほうが開発効率が圧倒的に良い。

3.会社の組織運営コンサルティング
 最近自分のところに来る相談で増えてるのがこのジャンルだ。すごく平たく言うと『新規事業をバリバリ生み出す組織に会社を変えていきたいがどうしたら良いだろう』というメタ新規事業開発な相談である。
 『作り手や技術屋視点からの会社経営コンサルティング』みたいなことが業務内容となる。それってマジモンのCTOじゃん、という気もする。諸説色々あるだろうが、自分の考えるCTOの定義は『技術やエンジニアの見方を会社経営のレイヤで展開するヒト』である。会社経営のレイヤで展開する、ということはつまり、『技術やエンジニアの見方を会社の「ヒト」「モノ」「カネ」に変換して喋る』ということだ。ちなみに、ちょっと調べたが社外取締役兼CTOの事例は殆どなかった。なので『経営コンサルティングする技術屋/エンジニア』というのが実際の業務内容としての落とし所になっていると思う。この3は外部CTOのやることリストには入っていない。恐らくクライアントを非常に選ぶからだろう。
 
自走する会社組織を目指すために
 3.はTD出身の身からするとめっちゃしんどい。技術が分かってるだけで、やってることは普通のコンサルティングなので、必要なスキルの半分がTDとは異なってるためだ。にも関わらず、個人的にはここに今一番コストを割いている。何故か。
 BASSDRUMから外部CTOがいれば1.でイケそうな企画を見つけられる。2.でその企画を開発することもできる。でも2.で作ったチームで新製品/新サービスを『運用』することは難しい。
 広告制作会社や映像制作会社のような、運用の発生しないことを生業としている会社ならそれで問題ない。しかし、新規事業や新製品開発を目指すなら運用は必須だ。特にアジャイルやリーンといった開発手法が叫ばれる今、『開発』と『運用』がシームレスにつながらないチームはナンセンスだ(なので2の時にも実は3を結構考えなければならない)。
 開発しながらチームの中心を外部から会社内部に段々と移していく必要がある。そうして自走する新規事業部、自走する会社組織になっていく。これが理想だ。
 このあたりの運用も含めた会社丸ごとの組織作りが『新規事業相談』だけ切り出して動いてると放置されたまま、プロダクトリリースとなってしまう場合がある。結果、広告みたいなローンチ直後がピークのサービスになってしまう。一方、ここがうまく繋がれサービスはローンチ後のユーザの反応を見ながらどんどん良くなり、うまく行けば社会になじんでいく、市場にフィットさせる動きができるようになる。最初の企画の着弾点が少しずれていても修正していけるのだ。打率は大きく上がる。
 是非、外部CTOを入れて1と2の業務をお願いしようとしている会社はそれのみならず、3を外部CTOと一緒に考えて欲しい。きっともっと新製品/新事業の打率が上がるはずだ。


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