『虚構世界はなぜ必要か?』を読んだ
すごく久しぶりにこういった作品批評、もっというとサブカル批評を読んでみたら面白かったので共有。SFアニメを中心としたアニメ批評、というよりも考察だ。
ポスト・トゥルースの時代において、あるいは技術が世界を大きく変える時代においてSFアニメ(=フィクション=虚構世界)の想像力はどのように世界と接点を持ちうるのかを考察した本になっている。
サブカル批評が花咲いていた時代よりも後の作品を取り上げてしっかり考察を書いている。
第一章はインターネット以前と以後をベースに『世界』がどれだけ膨らみ、それが作品にどういう風に影響を与えているかを書いてます。空間的な仕切りをしても、情報的な仕切りもないと世界が成立しなくなる現代において、ユートピアやディストピアへの続く道への作り方の難しさを説明しているように思えます。
第2章と3章はlainと攻殻機動隊。ザ・インターネットっていう感じのセレクション。記憶の連続性と自己の連続性に対する疑問、連続せず広がっていく可能性世界へのイントロダクション。何気にlainについて真面目に書いた書籍を読んだのははじめてかもしれない。
4章と5章はVR・ARですね。特にARという世界との重ね合わせという構造は虚構内虚構が虚構内現実に染み出すストーリーを誘発します(lainとかもそうだけど)。
6章は時間を扱ってます。時間を超えたものを提示する『ほしのこえ』とあくまで冷徹な時間の流れを描写する『トップをねらえ!』。この2つの作品の対比にフォーカスが当たっています。
7章と8章のテーマは中二病。よく考えたら中二病って援助交際などと同様、ちゃんと調査したほうが良い社会現象のような気がしてきました。ぶっちゃけどちらの作品も見たことなかったのですが非常におすすめの解説です。
9から12章と、一番大きく枠を取って取り扱われる多世界解釈を扱う作品について。ゼーガペインは他の2つのような多世界解釈論に乗っかったものではないですが、主人公の世界の現実は非常に多重化する、ということで同じカテゴリで扱っています。
13章と14章は社会と技術について。『大人』となった主役たちが『体制内ヒーロー』として戦う『逆襲のシャア』と2項対立の殻を破ってその先の何かを模索しようとする『ガンダムユニコーン』と『ガッチャマンクラウズ』を取り上げています。
また、『クラウズ』についてはテクノロジーの指し示す未来、作中で使われていたGALAXについてかなり言及しています。ここから発生する『みんな』というものをどう扱っていくか、という話はテクノロジーに触れる人はみんな読んでみても良い話かもしれません。
15章と16章は『マイマイ新子』と『この世界の片隅に』。マイマイ新子情報が全然手元になかったせいかあまり呑み込めなかった・・・誰か感想求む。
17章はけものフレンズ。人間不在の世界について。これも現実的な世界で使えそうな具体的なフィードバックは薄かったかも。
18章から21章、最終章までは『君の名は』と、なんと『輪るピングドラム』。確かに物語の舞台装置は似てるが意外な組み合わせでした。
好きな作品が取り上げられまくってて楽しかったのもあるけれど、作品の何が好きかについてもっと自覚的になったほうがいいなぁ、と思った。特に『ガンダムユニコーン』と『ガッチャマンクラウズ』は何かとても大事なことが含まれている気がする・・・暇も見つけてもう一回見てみようかな。
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