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トランプの大勝利! 共和党のアイオワ州の党員集会でトランプが予想どおり圧勝!今後の展開は?

 本日翻訳して紹介するのは、1 月 16 日に the New YorkerWeb に投稿の Antonia Hitchens のコラムで、タイトルは"For Iowa Voters, the Endless Caucuses Ended Too Soon"(アイオワ州の共和党の党員集会は、あっけなく終了)です。

 コラムは、 1 月 14 に行われた共和党のアイオワ州の大統領指名候補選びのための党員集会の結果を受けてのものでした。結果は、既にご存知のとおりトランプの圧勝でした。激しい 2 位争いをしているデサンティスとヘイリーは、痛み分けといったところでしょうか。いずれも撤退するほど追い込まれておらず、今後も指名争いを続けると表明しています。

 トランプの圧勝を受けて、共和党指名候補はトランプでほぼ決まりという報道が多いようです。私もデサンティスとヘイリーが巻き返すことは不可能だと思います。デサンティスは去年の前半は勢いがあったのですが、いかんせんカリスマ性の無さと政治的判断力の欠如が致命的です。ヘイリーは、プレジデント・バービーのピンクのジャケット( President Barbie pink jacket )をトレードマークとして着用していますが、非常に似合っているのですが(外見のことを言うのは憚られますが、とてもお綺麗と言う人が多いようです)、岩盤のトランプ支持者を切り崩す術はないようです。

 ところで、共和党で指名候補争いの中で、トランプ以外の候補者はいずれもトランプ批判を封印していました。それをやっちゃうとトランプ支持者から猛烈なバッシングを喰らうことが分かっているからです。そのような状況であったわけですから、デサンティスやヘイリーの実力が無かったとか選挙戦略が間違っていたということでもないのです。誰がトランプに挑んでも勝てなかったでしょう。むしろ 2 人は頑張ったと言ってよいのかもしれません。所詮遠くの国のことですから、どうでもよいのですが、2 人には普通に選挙戦を繰り広げても勝てないのだから、思い切ってトランプ批判を繰り広げる手もあったような気がします。どうせ死ぬなら花々しく散るという考え方はアメリカ人には無いのかもしれませんが。

 では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧下さい。


Dispatch

For Iowa Voters, the Endless Caucuses Ended Too Soon
アイオワ州の共和党の党員集会は、あっけなく終わった。

After months of G.O.P. candidates being photographed holding babies, eating ice cream, and gazing into hog pens, Donald Trump won the state with little effort.
共和党指名候補選びの候補者たちは、そのための写真を撮られ続けた。何ヶ月もかかった。結局は、ドナルド・トランプが余裕で勝利した


By Antonia Hitchens January 16, 2024


 1 月 15 日(月)の午後 6 時頃、アイオワ州の最大の選挙区であるクライヴ( Clive )にあるホライゾン・イベント・センターの体育館に多くの者がぞろぞろと集まり始めた。アイオワ州で共和党の党員集会が開かれた 1,657 会場の 1 つだった。駐車場の雪の山には、いくつも杭が立てられていた。ドナルド・トランプのポスターを掲出するためのものであった。このイベント・センターの中の他のいくつもの施設では、子供のバスケットボールの大会が開かれていて、多くの試合が行われていた。この日の夜は、イベント・センター内にあるバーは閉店していた。

 この週末にアイオワ州で行われた世論調査では、回答者の 4 分の 1が誰に投票するか決めていないと答えていた。「誰に投票するかを決めていない者が多いことは、驚くべきことではない。」と、2016 年の大統領選でトランプ陣営の政策顧問を務めたサム・クロービス( Sam Clovis )は私に言った。「多くの党員が集会に参加して椅子に座ると、近くに座っている者たちと会話を始める。党員集会で、各候補者のためにいろんな人たちが演説をするわけですが、それで投票行動を決める者も少なくない」。

 党員集会では、各陣営を応援する者の内の 1 人が代表(キャプテンと呼ばれる)として演説をするようになっていて、準備してきた短いスピーチをしたりする。もし、会場に人気のある、あるいは著名な者が来て演説をしたら、投票行動をコロッと変える者も少なくない。「演説の練習を時間をかけて念入りに行うつもりだった」と、ブランドストーン( Blundstone:オーストラリアの靴のブランド )のブーツとニッキー・ヘイリーの名前がプリントされた T シャツを着たニッキー・ヘイリー陣営のキャプテンであるリック・クラウス( Rick Krause )は私に言った。「でも、午前 10 時ごろに電話がかかってきて、『ニッキー・ヘイリー本人が来る!あなたが演説する必要は無い。』って言われたんだ。せっかく演説の練習をしていたのに残念だと思った。でも、演説しなくても良いと言われて、少しホッとしたところもある。私は、彼女がいつも選挙活動で言っていることの一部を私なりに一捻りして発信するつもりだった。トランプがもたらした混乱について言及するつもりだった。少しだけ、ブーイングされるのではないかと恐れていた」。

 体育館では、出席者が投票用紙(小さな長方形の紙)を手に取ってから、折りたたみ椅子に座った。ニッキー・ヘイリーを応援するステッカーを貼った 1 人の男性が、トランプのステッカーを貼った 1 人の女性と会話していた。その間、彼の妻はその隣で編み物をしていた。彼らのやりとりを抜粋すると以下のようなものであった。

ヘイリー支持者:バイデン大統領が酷いという意見には同意する。私たちは変化を望んでいる。

トランプ支持者:全く同意する。しかし、変化を起こせるのはトランプしかいない。

ヘイリー支持者:1 月 6 日に彼が主導した連邦議会襲撃は決して受け入れられない。

トランプ支持者:私は彼が反乱を扇動したとは思わない。あれは仕組まれたものだった。現場にはたくさんの FBI 捜査員が潜んでいた。

ヘイリー支持者:仕組まれたものではないと思う。手に負えなくなっただけだと思う。

トランプ支持者:手に負えなくなるように誘導されたのだと思う。それが、まさしく仕組まれたことなのである。そこに何人の FBI 捜査員がいたのかという質問に誰も答えていない。

ヘイリー支持者:あなたは本質を見誤っていると思う。あなたが信じている話はまったく真実ではない。

トランプ支持者:私は本質を見誤っていない。それどころか、私の話したことが事実であると証明する証拠はたくさんある。それを示すために、私たちはこの党員集会に来た。

 党員集会の開始時間の約 20 分前に、ヴィヴェック・ラワスワミ( Vivek Ramaswamy )本人が体育館の通用口から入ってきた。彼は MAGA というロゴが印刷された帽子をかぶった 10 代の若者たちと握手を交わした。「私はあなたが開催したイベントで国歌を斉唱した。」と、その内の 1 人がラマスワミに声をかけた。「今夜、私はあなたを説得するためにここに来た。」とラマスワミは言った。ふと振り返ると、エイサ・ハッチンソン( Asa Hutchinson:党員集会翌日の1月16日に撤退を表明 )も来ていて、多くの者たちに握手を求めていた。

 共和党のスタッフが大勢の参加者の間を抜けながら、投票用紙をプラスチックの箱に集めた。(民主党の党員集会とは異なり、共和党の党員集会では参加者は無記名投票をする。どの候補者を支持しているかを示すために会場の特定の場所に立つ必要はない。)午後 7 時を数分過ぎたところで、体育館のドアが閉められた。「お互いに敵意を示さないように協力して下さい。」とステージの上から司会進行役がマイクで呼びかけた。サプライズ的に登場するのはヘイリーだけでないことが判明した。参加者の多くは、その多くが以前に討論会等で何度も聞かされたことのある演説を 5 分に端折ったスピーチを聞かされると思っていた。エイサ・ハッチンソンが最初に登壇した。「今夜、報道メディアを糾弾し、私が共和党指名候補に相応しいことを証明したい。」と彼は呼びかけた。

「ハッチンソン氏の演説が終わりました。続いて、次の演説者の方、準備をお願いします。」と地区の党支部長が言った。しばらく間があった。支部長が問うた、「えっ、ドナルド・トランプなの?」と。すると、 トランプ本人が舞台袖から登場した。今回は音楽なしでの登場だった。

 「アイオワ州の農業従事者には素晴らしい才能がある。」とトランプは言った。アイオワ州民にお世辞を言った後、彼が主に話したのはバイデンのことだった。「ひねくれジョー・バイデン」と揶揄し、バイデンがアフガニスタンからの撤退を決めたことによる混乱などを批判した。また、バイデンは 2020 年の大統領選で勝利を掠め取っただけであると主張した。「2020 年の敗北を決して認めてはいけない。」と彼が言うと、参加者は大盛りあがりだった。(入口調査では、トランプ支持者の 66% が 2020 年の大統領選のバイデンの勝利を認めていないと答えた。)

 次にラマスワミが演説した。トランプとほぼ同じくらい多くの拍手で温かく迎えられた。その後、ヘイリーがエスコートされて入場した。選挙戦で一貫して着用しているピンクのジャケットを着ていた。「私たちは世界中のどの場所よりも多くの BMW の車両を製造している。・・・(中略)・・・世界的なタイヤメーカー 5 社の工場を誘致することに成功した。」と彼女は参加者に語りかけた。しかし、それらは全て彼女がサウスカロライナ州知事であった時の実績であって、アイオワ州の党員集会の参加者の心には刺さらなかった。

 ヘイリーが壇上に上がった直後に、AP 通信はアイオワ州の共和党の党員集会でトランプ支持が鮮明になったと報じた。ちょうど、ヘイリーが参加者に「今日は投票日だ。大いに盛り上がろう。」と訴えていた頃だった。ロン・デサンティスは、間の悪いことに、5 人の候補者の内でクライブの党員集会に現れなかった唯一の人物であった。彼だけは、ダビューク( Dubuque )の党員集会にいた。支部長は、テキサス州選出下院議員のチップ・ロイ( Chip Roy ) がデサンティスの代理演説を行うと紹介した。「次の演説はチップ・ロイです。連邦議会下院共和党の指導者として名を馳せている人物が登壇します。」と支部長は述べた。 4 人の演説が終わり、投票はスムーズに行われていた。紙に手書きで集計した結果が読み上げられる頃には、ほとんどの人は体育館からいなくなっていた。

 共和党の各候補者は、事前にたくさん写真を撮られ続けていた。それは何カ月間も続いていた。赤ん坊を抱いた姿、アイスクリームを頬張る姿、養豚場を視察する姿などの写真を撮られた。対照的に、この日の投票は、実にあっけなく、すぐに終わった。「早すぎる。ちょっと残念なことである。」と、アイオワ州の共和党支部長は言った。支部長は、声明を発し、「各地区の党員集会で投票が始まってから 30 分も経たない内に AP 通信が結果を発表していた。」と述べた。「アイオワ州党員集会と通常の予備選挙の主な違いの 1 つは、アイオワ州民が大統領候補者やその代理人の演説を聞き、情報に基づいた決定を下すために熟慮する機会があることである。この国で最も透明性の高い草の根の民主的プロセスで、急ぐ必要は全く無い」。

 1846 年にアイオワ州はアメリカ合衆国 29 番目の州になった。その時、同州共和党は各郡の代議員を選出するために草の根集会を行うことを定めた。それが党員集会制度である。その後数十年、同州の選挙結果が注目されることはなかった。しかし、本番の選挙の前に、選挙結果を暗示するようなデータを得たいと考える者が増えるようになった。1972 年に同州の大統領指名候補を選ぶ党員集会の日程がアメリカ全州の中で一番早い時期に移動された。それ以降、各報道メディアが「確実なデータ( hard data )」を基にした報道をできるようにするために、民主党が大統領選に関する世論調査をするようになった。それから 40 年間で、アイオワ州の党員集会の注目度はますます高くなり、全国民が関心を寄せるイベントになった。そもそも党員集会の目的は州の指名候補を決めることだけにあるのだが、その結果が拡大解釈されるようになり、大統領選が行われる年の年初の一大イベントと化している。

 最終結果が集計され、トランプが 98 の郡で勝利したことが判明した。他は、ヘイリーが 1 つの郡で勝利したのみであった。デサンティスが勝利した郡は無かった。「ニッキー(ヘイリー)やロン(デサンティス)と楽しい時間を共に過ごせたことを祝福したい。」と、トランプは勝利宣言で言った。ヘイリーとデサンティスの差はほとんど無く接戦だったため、両者とも撤退宣言を出すほどには追い込まれていない。事前予想でデサンティスは同州では苦戦すると見られていたので、ヘイリーに僅差ではあるが勝利して 2 位を確保したことを勝利を勝ち取ったと言い張ることができた。一方、ヘイリーは 3 位フィニッシュとなってしまったが、2 位との差が僅差であったため、勢いを維持していると言い張ることができた。「神に感謝している。」と彼女は言った。クライブ郊外にあるホテルの一室では、彼女の選挙陣営が支持者が集って彼女の勝利を祝う祝賀会のようなものを準備していた。サウスカロライナから駆けつけたフリーダム・コーカス( the Freedom Caucus House:保守的あるいはリバタリアン的な共和党下院議員から成る連邦議会下院の議員連盟)のメンバーのラルフ・ノーマン下院議員が、妻や孫と一緒にワンタンを食べていた。「彼女がこの状況を乗り越えることを、誰もが信じている。」と彼は私に言った。「これはマラソンのような長い戦いである。短距離走ではない」。

 「私たちの仕事は、大統領に相応しい人物を探し出すことである。」とヘイリーを支持したクレイグ( Craig )なる人物が私に言った。クレイグは、ヘイリーとトランプのどちらを支持するか直前まで迷っていたが、党員集会ではヘイリーを支持した。トランプ人気が明確に示されたにもかかわらず、デサンティスとヘイリーは次の州以降でも闘い抜くと表明している。今後、少なくともアイオワ州では大統領選のことはあまり話題にならなくなるだろう。「来週以降も大統領に相応しい人物を探すための党員集会が各州で続く。それを楽しみにしている。」とクレイグは言った。♦

以上

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