最終回「機能不全国家に生まれて」
子どもの頃、いつもここはどこなんだろうと思っていた。家族が連れてきたこの場所を私はどこなのか知らない。説明してくれたことがない。誘われたことも、許可を取られたこともない。この飛行機や電車がどこにむかうのかもわからない。
「ほら、新宿のホテルでこんなことがあったでしょう」とあとから言われて、初めてそこが東京だとかどこだとか場所が分かる。親と私がひとつの脳みそを共有しているようなふるまいで、そこに知識や感性の非対称があると仮定されたことがない。
人生を終わりのないジェットコー