Stay Home!ビール暗号で乾杯しよう

ビール暗号とは、1822年の真偽不明の暗号文3枚から構成される宝の在処を示された暗号であり、全て数字で構成されいている。1885年に発行された暗号小冊子であるビール文書が発行され、世界的に認知されるようになった暗号である。

小冊子の内容は暗号誕生の経緯やモリスの手紙、それにまつわる証拠の紙切れなど人間構成から暗号の受け取りまでわかるものから始まり、最後に数字の暗号全3ページが載っている。

登場人物
ロバート・モリス:ワシントンホテルのオーナーでビール暗号の受取管理人
トーマス・J・ビール:ビール暗号の暗号考案者

小冊子の発行に先立つこと65年前の1820年1月、ヴァージニア州リンチバーグのワシントン・ホテルに、トーマス・J・ビールと名乗る男が現れて宿泊の手続きを取った。ホテルのオーナーであったロバート・モリスは、当時のビールの様子を「黒く日焼けした肌を持つ、極めて優れた容貌の美男子」「誰からも好かれたが、特に女性に人気があった」と評している。ビールは冬が終わるまでの間をホテルで過ごし、3月末にホテルを立ち去った。

その2年後の1822年1月、ビールは再びワシントン・ホテルに姿を見せた。前回同様に冬が終わるまでの間をリンチバーグで過ごし、春になると去っていったが、この時ビールは「重要な文書が収められている」という鉄の箱をモリスに託した。モリスはこれを金庫に保管したが、後日ビールから箱について説明する手紙が届いた。手紙には以下のように述べられていた。

箱にはビールとその仲間の財産に関する重要書類が収められている
仲間が一人も戻らない場合、この手紙の日付から10年間は箱を保管してもらいたい。その10年の間にビールないしビールに委任された人物が箱の返却を求めない場合、錠前を破壊して箱を開けてもらいたい
箱の中にはモリス宛の手紙と暗号化された文書が入っているが、文書は手がかりになるものがなければ解読できない。その手がかりはビールが友人に預けてあり、1832年6月以降に送られてくるはずである。

ということであったのでモリスはビールの指示通りに金庫で箱の保管をしたが、受取人が現れず、手がかりの文書もおくられて来ることもなかったので1845年にモリスは箱を開けた。そこには暗号文書全3枚とモリス宛の手紙があった。

モリス宛の手紙について
モリス宛の手紙の内容は、「1818年3月、サンタフェ(当時はメキシコ領)の街から北に向かってバッファロー狩りを行っていたビール一行は、サンタフェの北250ないし300マイルほどにある渓谷に野営をした際、地面に埋もれていた金を発見した。ビール達は直ちに採掘を行い、18ヵ月の間掘り続けて、大量の金と周囲からさらに発見した銀を得た。そしてビール達はリンチバーグにやってきて財宝を隠した。最初にモリスとビールが知り合ったのはこの時である。その後ビールは仲間と合流して再び採掘を続け、不測の事態に備えて、信用できる人物に財宝の分け前を定めた文書を預かってもらうこととした。」
その人物としてビールに選ばれたのがモリスであった。3枚の暗号文書には、それぞれ財宝の隠し場所、財宝の内容、財宝の分け前を受け取るべき人物のリストが書かれているとのことであった。

1862年、84歳になったモリスは、暗号解読の望みを将来に繋げるため、一人の友人に事情を打ち明けた。この友人が1885年に小冊子を発行することになる人物となった。この人物は小冊子発行時、社会に与える影響が大きいことや問い合わせに忙殺されることを嫌って名前を伏せたため氏名不詳である。友人は暗号解読に熱心な人だったためある重要な解読ができたかもしれないと考え、サイモン・シン著『暗号解読』を出版し、全世界が注目する暗号となった。

友人は、暗号文に示されたそれぞれの数字が、アルファベットのいずれかの文字を表しているのではないかと考え、何らかの文書や書籍を鍵とした書籍暗号が使われているのではないかと考えた。そこで手当たり次第に書籍を使って解読を試みた結果、アメリカ独立宣言が2枚目の暗号文の鍵になっていることを突き止め、内容の解読に成功した。

2枚目暗号日本語訳
ビュフォードの店から4マイルほど離れたベットフォード郡の採掘抗で、地面より6フィートほどの深さに以下のものを埋めた。所有すべき者の名を同封の文書3に示す。最初の埋蔵物は、1014ポンドの金と3812ポンドの銀で、埋蔵の日付は1819年11月である。 第2の埋蔵物は、1821年の12月に埋蔵したもので1907ポンドの金、1288ポンドの銀、そして輸送の安全の為にセントルイスで銀と交換した宝石類1万3000ドル相当である。
上記の金銀宝石類を、いくつかの鉄の容器に入れ、やはり鉄の蓋をした。採掘抗は粗い石垣のようになっているが、容器はしっかりとした石の上に置き、さらに石を積んで覆い隠すようにした。第1の書類には採掘抗の正確な位置を書いておいたので、容易に発見できるだろう。

2枚目の暗号文に記された莫大な財宝の価値に勇気づけられた友人は、残る1枚目と3枚目の暗号文の解読、特に財宝の隠し場所を示した1枚目の暗号文の解読に力を注いだが、解読には成功しなかった。しかも暗号解読に没頭した結果、友人は仕事が手に付かず経済的に困窮し、家族を苦しめる結果となった。このような状況を招いたことを悔やんだ友人は、モリスに対する責任を降ろすことを選び、最善の方法は全てを世間に公表することだと考え、小冊子を発行した。上記の理由により発行にあたって自分の名前が出ないようにするため、地元リンチバーグの名士であるジェイムズ・B・ウォードに代理人兼発行人となってもらうこととした。

友人は小冊子の中で、暗号解読を試みようとする者に対して、自らの経験をもとに「主業の余暇として解読に挑戦すべきで、余暇がないなら手を出すべきではない」「夢かもしれないことのために、自分と家族を犠牲にしてはならない」と警告している。

それから1960年までにコンピュータ科学の発展と共にビール暗号の2枚目の解読性が正当であることが数々と証明されていったが、多くの人々の長年の努力にも関わらず、1枚目と3枚目の暗号文は解読されておらず、財宝もまだ見つかっていない。

新型コロナウイルスでステイホームしている時間を使いあなたも暗号解読の新たな1ページを刻むのはいかがでしょうか?

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