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生地の向き

どんな服も、一枚の布から出来ています。工場では、とても長い布をくるくると巻いて、大きな巻物のような状態になった「生地 (きじ) 」から、それぞれのパーツを切り出しています。この切り出す作業のことを「裁断 (さいだん)」といいます。

生地を裁断するときには、型紙を全て同じ方向に置きます。型紙というものは、それぞれ不均一な形をしているので、並べ方次第では生地を節約することもできます。例えば、2つの三角形のパーツの上下逆さにして組み合わせれば、隙間が出来ないので少しの面積からたくさんのパーツを作ることが出来ます。しかし、たとえ無地や上下のない柄の生地の場合でも、私たちはそんな型紙の置き方はしません。

生地は、糸を織り合わせたり編み上げたりして作られます。この製造過程から、生地の向きによって織の加減や繊維の方向などが異なることになります。ですので、生地は光が当たったときに向きによって反射の具合が変わり、微妙に色が違って見えてくるのです。型紙を上下隙間なく置いて作ってしまうと、微妙に色が違って見えるパーツが出来てしまいます。たとえ、気付く人がないくらいそっくりでも、プロはそんなパーツで服を作ったりはしません。

上質・洗練とは、捨てる勇気と譲らない気持ちが支えるものです。安くはないかもしれませんが、真っ当な服を作るためには必要なことなのです。


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