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社保庁解体の裏側④【閲覧注意】最も危険な遊戯

こんにちは。
とよぞうです。

今回は社会保険庁(以下、社保庁)という組織がどれほどイカれた組織であったか良く分かる記事です。

世間知らずの隠蔽気質が招いた大やけど


お役所のミスや公務員の不祥事、政治家の不正や著名人のスキャンダルなどのゴシップネタはいつの時代もマスメディアの恰好の餌食となる。

どれだけ人々の好奇心や不安を煽って部数を伸ばすかが勝負のメディアにとって、社保庁という組織は赤子も同然だった。

年金保険料の無駄遣い、年金支払いのミスや職員の不祥事が次々と発覚し国民の信頼は落ちるところまで落ちた。
僅かなほころびから組織が解体されるまでの事態になった最大の不祥事。
行政機関として絶対にやってはならない行為を強行し、さらに隠蔽しようとする幹部たちをこの目で見てきた。

誠意の欠けらすら無い組織ゆえに見苦しく、じたばたすることで増々その綻びを広げて行った。

社保庁が行った組織ぐるみの最大の不祥事「国民年金不正免除問題」とは


2004年7月、損保ジャパンの元副社長という人物が社保庁長官に就任した。

民間のノウハウを採り入れて抜本的に組織を立て直すとして当時注目された民間から初めて迎い入れられた長官だった。

「行政サービスのトップランナーを目指す」と息巻いて就任当初から持ち前の行動力を活かし、他省庁に先駆けて能力・実績に基づいた人事評価制度を導入するなど「民」を随所に取り入れた改革は徐々に浸透し「組織が変わりつつあるようだ」という声も聞かれるようになっていった。
しかしこの日を境に組織が下っ端の職員を犠牲にして、幹部たちの保身を優先させるようにもなっていく。

全国の312か所のうち248か所の社会保険事務所を回り、職員一人一人に檄を飛ばす姿も精力的ではあった。
私が在席した事務所にもお越しになられたが、大勢の幹部を引き連れて一人一人の席を回るその姿は、さしずめ水戸黄門のようだった。

その時の年金不信はとどまる事なく、国民年金納付率(以下、収納率)はすでに70%を大きく下回っていた。
信頼を取り戻すためには収納率を上げることが必須だとして収納率を80%まで引き上げると目標設定した。

そしてある日、全国の所長が召集される大会議が開かれた。

その席上で長官が言った言葉とは…
「収納率80%への引き上げは至上命令である。収納率を上げる手段は…つまり…社会保険のプロである皆さんならお解りですよね」という言葉だった。
あくまで直接的な言葉は使わずに、仮に問題が起きたとしても責任を回避する言葉遣いにとどめた。
しかし会場にいる全員がよく解っている。
そう…収納率を上げるには分母を減らすこと。つまりは「免除を取りまくる事に業務を集中せよ!」という指示を暗に示した事を。
決して「不正に」とは言っていない。
長官はあくまでも「皆さんならお解かりですよね」と言っただけだ。
私は後日会議の内容を記録した録音テープを聞かされた。

次の日から全国の社会保険事務所所長が担当課長と課員に指示を出す。
「とにかく電話確認で構わないから免除を受理しろ」と。
国民年金の免除に限らず、公的な申請とは本人もしくは代理人の委任による書類申請が原則だ。例外は認められない。
電話連絡による申請受理は前代未聞の不正行為だ。

そもそも数字だけ操作しても実質的な保険料収納に繋がる対策をしていかない限り信用回復などできるはずがない。
そしてそれには時間が必要だ。
そんなことも分からなくなるほど組織は追い込まれていた

私の職場でも事務所長から指示された担当課長と同僚の課員たちは一様に不信感を口にするも、仕方なく免除対象者に電話をかけ始めた。

どうしても納得いかない私は所長に対して「責任とれるのか」と問いただした。
「責任は私がとる」という口先だけのでまかせを信用できなかった私は、電話をかけまくる同僚たちを横目に独りだけ指示を無視して帰宅した。
そして私は孤立していった。

それから半年ほど経ちこの問題は「国民年金不正免除」と取り上げられて大々的に紙面を飾った。
そしてさらなる国民の不信を招いていった。

「責任をとる」と言った所長は県外の事務所長へと異動した後、何事もなかったように定年を迎えた。
不正免除取得に加担した同僚たちも「厳重注意」に終わり日本年金機構へと横滑りしていった。

2009年12月、不正に加担しなかった私は社保庁解体後の進路をふさがれ自主退職を余儀なくされて組織を去ることにした。
上等だった。

組織を大改革した長官殿はいつの間にか入れ替わり居なくなった。
社保庁が民間から取り入れたというノウハウとは、不正に収納率を操作することと、幹部たちの保身を優先させるということでしかなかった。

これが私が目撃した国民年金不正免除事件の実態です。

社保庁という組織は例外かもしれませんが、行政組織の民営化はこれから進んでいくと思いますので色々と参考にして欲しいです。
どうしたら公務員を辞めずに済むのかを。

ではまた。

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