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写真と絵画のあいだ 2

時間が経つのがとても早い。自分の中の時間とこの世の基準とされている時間を比べると、自分時間がとても遅いんだと感じる。月に一度出演させていただいているpodcastで、自分の喋りを聴いていてもワンテンポ遅く、それ由来なんだろうなと感じる。
いつも写真を撮るのも精一杯だ。早くて1日があっという間に過ぎ去ってしまう。

引き続き何か描きたい欲が続いているので、キャンバスに描く。前回は遊び感覚で軽い気持ちでモチーフを選んだので、改めて何が描きたいのか考える。今回も描いた絵は自分が撮った写真をもとにしている。

450mm x 450mm,アクリルガッシュ

何の奇抜さも無いごく平凡な風景だが、私にとっては心が満ちていくような風景だ。家族の風景として、母親(自分)を入れることもできたがしなかった。写真を撮った時の風景というか、私が見ている風景、ということにこだわりたかったのかもしれない。描いている時は、細部をひたすら追いかけていく作業と、全体を見る作業の繰り返しで、本当にこの色でいいのか、写真ぽくしたいのか絵画のようにしたいのか、この程度の描き込みでいいのだろうかと自分に問い正す作業の繰り返しだ。

今回は1つのアイデアが浮かんで、それを試してみることにした。描き終わった後に写真を撮って、それをLightroomでさまざまなプリセットにあててみた。実際の絵(モノ)としての重量感と、デジタル化した時の妙な軽さのギャップがあり、見え方が変わって個人的には面白い体験だった。壁を枠として捉えたとき、それが絵の枠なのか写真のフレームなのかよく分からず不思議な気分になる。

壁を枠として捉え、写真でデジタル化した

表現とは作者そのものであり、作者の心を表すことだと感じている。写真であれ絵画であれ、表現したいことは同じな気がするので写真で撮っているのにわざわざそれを描くことにあまり意味は無いのかもしれない。

それでも描きたいのは、この世の時間と切り離して自分の中で流れている時間を過ごすために、今は必要なのだと感じている。アナログだとデジタルに比べて不便で時間がかかることが多いので、私にとっては絵の具で描くくらいのスピード感が今はちょうどよく感じる。

そうやって制作にかける時間を選ぶことができるのは、本当に豊かな時代なんだと思う。私にとって写真は一瞬の発見の喜びで、絵を描くことは描いている間続く喜びなのだと。

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