絓秀実氏との対談(2016年6月17日)・その3

絓秀実氏との対談(2016年6月17日)・その3

外山恒一

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 〈「その2」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 標題にもあるとおり、2016年6月の対話である。場所は絓氏の地元に近い埼玉県の居酒屋。
 同席していて稀に発言する東野大地は外山の主宰する「九州ファシスト党〈我々団〉」の党員。
 第3部は原稿用紙換算20枚分、うち冒頭5枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその5枚分も含む。

     ※     ※     ※

 人民の“すべてをゼロにしたい”欲望

 “人民”ってのは、今回の舛添の件でもそうだけど、とにかくいっぺんチャラにする、ゼロにして自分たちの意思を立ち上げたい、という欲望を常にどこかに持ってるんだ。それを制度化したのが“選挙”であり“民主政”なわけだよ。
 そりゃ選挙をやればそこらの地主は自民党に投票するだろうし労働組合員は民進党に投票するだろうけど、形式的にはいっぺんゼロに戻してそこから自分たちの意思を示す、というのが民主主義であり、それを“叛乱”と云ってもいい。舛添のやったことなんて大して“悪”くもないんだけど(笑)、いっぺんゼロにしてみたいという人民の欲望を発動させた。

外山 “発動”のきっかけは何でもいいわけですよね。

 いつどんなふうに発動されるのか予想もできないけど、たまに発動される。今回のアメリカ大統領選もそうでしょ(後註.対談時、まだトランプは当選していないが、“ブーム”はとうに巻き起こっている段階)。独裁制が長続きしないのは、こういう“チャラにする”契機を持ってないからなんです。長く続く場合は単に強権的にやってるにすぎない。

外山 ファシスト党の独裁政権を樹立したとして、何らかの擬似的なイベントは必要になるんだろうな。

 首班の首をすげ替えるようなことが必要になる。フランス革命で王様の首をちょん切って以来、近代という時代の人民には常にそういう欲望があるんだから。

外山 しかしイタリアもドイツも、さっき云ったように世代交代をやる前に戦争で潰されちゃったけど、とりあえず潰されるまでの相当に長い期間、人民の熱狂は維持できてましたよ。

 戦争をしてたしね。

外山 たしかにファシズム国家が好戦的なのは、そういう理由だと思います。べつに“領土的野心”から好戦的なのではなく、人民の熱狂を維持するためには戦争をやるのが手っとり早かったんでしょう。

 “ゼロにしたい”欲望を擬似的に充足するためのイベント。アメリカの大統領選だって、実は“内戦”みたいなもんじゃないですか。

外山 しかしアメリカの大統領選は、もともとは擬似的な“内戦”の側面があったんだろうけど、どんどん本当の内戦というか、アメリカ社会が本当に深刻に分裂してる感じがします。

 制度がうまく機能しなくなってるんだね。それはやっぱり経済がうまくいってないからですよ。そもそも経済はもはや誰が大統領になってもうまくいかないんであって、そのこともみんなもう分かってしまってる。

外山 その意味でも“トランプ大統領”が誕生することに期待してるんですけどね。少なくともこれまでとは違うことをやろうとはしてるみたいだし。

 でもトランプになっても経済はうまくいきません。もちろんサンダーズが大統領になったってうまくいかない。誰にもどうしようもないんだ。


 絓氏は稀代の親不孝者!?

外山 ……ところで絓さんは最近、どこか雑誌とかに書いてますか?

 何にも書いてないです。

外山 じゃあ“柳田國男論”の単行本の執筆だけ?

 そうだね。『エンタクシー』の連載の単行本化(後註.この2016年のうちに『タイム・スリップの断崖で』として書肆子午線から刊行された)というのもあるけれど、いまだ編集者の手にあるし、父親が死んじゃってちょっとバタバタしてたのもあるけど。

外山 それは最近ですか?

 5月末ぐらい。いやー、メンドくさいですよ、親が死ぬっていうのは。

外山 おいくつだったんですか?

 95歳(笑)。“眠るように”ってのはああいうのを云うんだな。もともとほとんど意識もなくずっと寝てるような状態だったんです。息だけしてた。それがちょっと外にタバコを吸いに出て、戻ってきたら息をしてないんですよ。「ちょっとちょっと、これ死んでるんじゃないですか?」って看護師さんに云ったら、「あ、死んでます」って(笑)。
 最低経費のお葬式をやりましたけどね。葬儀屋に頼まない方法もあるんだろうけど、一応葬儀屋に頼んで、その中で一番安いコース。遺体を霊柩車で運んでもらって、安置室に置いて、2、3日後に火葬場に連れてってもらうという、それだけ。いろいろオプションがあるんだけど、お花も何にも要りません、と(笑)。向こうは「これはいかがですか?」「これはどうですか?」って云ってくるんだけど、全部「要りません」って云い続けて……。

外山 なんという親不孝者だ、と思われながら(笑)。

 火葬場で焼くだけで5、6万かかる。「お坊さんはどうしましょう。ご宗派は?」「ありません」「戒名は?」「要りません」「ご位牌は?」「要りません」……それでも16万ちょっとですよ。

外山 いっそ自宅の庭に土葬したい、と。

 灰にして撒いちゃえばいいと思うんだけど、親父は自分でお墓も買ってたし、妹にも「お墓ぐらい入れてやろうよ」って云われたもんだから……。

この続きをみるには

この続き: 6,125文字

絓秀実氏との対談(2016年6月17日)・その3

外山恒一

200円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
外山恒一
革命家。マルクス主義、アナキズムを経て03年よりファシスト。福岡市在住。九州ファシスト党〈我々団〉総統。サイト「外山恒一と我々団」(link: http://bit.ly/1wp0Ggi)