劇団どくんご2014年福岡公演“終演後の打ち上げ”実況(その1)
〈全体の構成は「もくじ」参照〉
『全共闘以後』でも詳述した、私のイチオシ「劇団どくんご」の、2014年の「OUF!(ウフ)」福岡公演2日目(11月9日)の“終演後の打ち上げ”の場での、いろんな人(劇団員や他の観客)との歓談のテープ起こしである。紙版『人民の敵』第3号に掲載された。
どくんごは今年もツアーを敢行しており、これを書いている2019年11月15日現在、福岡公演が終わって、あとは熊本県荒尾市と、鹿児島市での公演を残すのみである。そのダメ押し的な情宣を兼ねての公開である。
「OUF!」どころかまだ1度もどくんごを体験していない意識低すぎる系もしくは意識不明系の諸君は、これを読んで「こんなに面白そうなものがあるのか!」とようやく意識を回復して、今からでも遅くはない、熊本か鹿児島に観にきなさい。
第1部は原稿用紙換算25枚分、うち冒頭11枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)はその11枚分も含む。
※ ※ ※
舞台の上でソデで外でいろんなことが同時進行
2B(劇団員) この子、お父さんが状況劇場にいたんだって。
外山 おお、アングラ界の……。
2B 伝説の。
女性A だから小さい頃からそういう話をよく聞かされてたんです。
2B でもまあ、ウチは同じテント芝居といっても状況劇場とはだいぶ違うと思うけどね(笑)。
女性A ただ観たことはなかったんで、テント芝居が現実に存在するんだぁ、って。
外山 お2人とも「どくんご」は初めてですか?
女性B 私は初めてです。
女性A 私は昨日初めて観て、この子を連れてきました。
外山 これは観せなきゃいかん、と。
女性A メチャクチャ面白くて。今回の作品がいいのか、もともとこの劇団自体がいいのか、初めてだからよく分からないんだけど、いつも考えたりこの子と話したりしてる方向にストレートにハマりすぎてたんです。
2B 合ってたんだ。
女性A ドンピシャですよ。
外山 もともと何かされてる方々なんですか?
2B ダンスだって。
外山 2人とも?
女性A 私はずっとダンスを。
女性B 私は彼女がやってるバーで働いてます。
2B 東京公演の幕間に出てくれた“ジョンイク”(ジョンとイク。ダンス・ユニット?)のイクさんと(Aさんが)知り合いなんだって。
女性A いろんなことが散りばめられてて、ワクワクしました。
2B それは嬉しい。
外山 いろんなことが舞台の上でも外でもソデでも同時に起きるから、どこを観てればいいのか分からないでしょ?
2B だから2回観るといいんだよ(笑)。
女性A 2回目になると少し余裕を持って観られるけど、それでもセリフを聴き逃したりする。セリフに聴き入りたいと思ってるシーンでも、視覚でいろいろ目に入って、いつのまにかそっちに気をとられてたり。同時に全部を把握する能力はないから。テキストで欲しいと思った場面もいくつもあった。
台本のない芝居
女性B 私、メモってましたよ(笑)。
2B マジっすか。
女性A 観ながら手が動いてるから、オカしかった。
2B 何をメモったんですか(笑)。
女性A 響く言葉がいっぱいあって……ホン(台本)は売ってないんですか?
2B 台本ないもん(笑)。
女性A やっぱりそうでしょ。
2B そのシーンで喋ってる人が自分で考えてる。稽古でそれぞれが作ってきたものを発表し合ったりして作る。
女性A そういう作り方ですよね。そうだと思いました。
2B だからもちろん自分のシーンの台本は持ってるんだけど……。
外山 他の人のシーンのは持ってない、と。全体の台本は誰も持ってないんだ。
女性A いくつかのシーンの分だけでもいいから、ホンが欲しいな。一応は頭の中にやんわり残ってるけど、ちゃんとは思い出せないし。まあそれでいいのかもしれないけど。
2B 実際、台本はないからねえ。渡そうにも渡せない。
女性A 録音してもいいものなら録音したいぐらい。
2B 個人で楽しむぶんには構わないけどね。
女性A 自分の中に落としたいだけで、誰かに聴かせようってことではなくて。なんというか、“確認”したい。
女性B 私はもう落としたよ、メモして(笑)。
外山 すごい(笑)。
女性B 違う役者が似たようなフレーズを云うことがあって、そのフレーズに共感してた。普遍的なことでもあるんだろうけど、詩的なフレーズ。
2B どのへん?
女性B 2つの星が関わり合ってて……。遠く離れた星どうしがつながり合ってるという言葉と、後半の虎の(衣装を着た)オネエチャンの、“関わり合わないことで支え合ってることがある”みたいなセリフと。
女性A そうそう、私もそのセリフが良かった。
2B スゴいじゃん。
外山 気が合ってる(笑)。
女性B 片方の星がもう消滅していたとしても……。
女性A そう、それ!(笑)
2B 1回観ただけなのに、すごい読み込んでるねえ。
女性B この子も絶対そこに共鳴してるんだろうって思ってた(笑)。
2B すごい。よくぞ連れてきた(笑)。
女性A 国東(大分県。“国東半島芸術祭”のことか?)に行ってる場合じゃないだろって。昨日の今日だけど、「どっちに行きたい?」って確認して前売チケットを買わせたの。
どくんごは長いこと福岡を避けていた
2B イクさんとはフェイスブックでつながってる?
女性A もちろん。私、本名は××××。
2B ぼくは本名は遠藤歩だから。
女性A すぐ忘れるから、探して今もう申請を送っときます。……嬉しいな、役者と話せて。
外山 他の役者もそろそろメイクを落として戻ってくると思いますよ。
女性A 赤い人がハマりすぎてて。
外山 赤い人?
女性A 赤い衣装の男の人。
外山 “なんちゃってヒップホップ”みたいなセリフの人?
女性A そうそう。“田中”も。
2B ちゃあくんだ。
津田三朗(福岡アングラ演劇界の重鎮・外山の古くからの知人) (ふと寄ってきて)外山君、ぼくはそろそろ帰ります。
2B 知り合い?
外山 津田さん。25年ぐらい前に「どくんご」が初めてツアーをやる時に、福岡でもやろうとして制作を依頼しに来た劇団員をツメて泣かせた人(笑)。
津田 いやあ、今日は面白かったですよ。あの頃はあの頃です(笑)。
外山 津田さんのせいで「どくんご」は長いことずっと福岡を避けてたんですよ(笑)。
※ ※ ※
外山 A君はほぼ毎年来てるよね。
男性A(常連客) そうですね。でも今年は3回観るつもりが、今日1回きりになってしまいました。
外山 そういえば(最寄りの)久留米には来てなかったね。
男性A 久留米と、昨日も来るつもりだったんです。
外山 ムッ君は昨日、今日と続けて来てるけど、2回観てどうですか?
ムッツリーニ(西南学院大学アナキズム研究会・議長) やっぱり分からなかったです(笑)。理性で体系的に把握しようとしても、百パー不可能だと今日やっと気づきました(笑)。
外山 2回観ても分からないものは分からない。で、「どくんご」体験はアナキズム研究会の今後の活動に活かされるんでしょうか?(笑)
ムッツリーニ 活かされますよ。
高平(劇団の最古参スタッフ・熊本県水俣市在住) (突然背後から)これを総統に付けてもらわないと……(と、揃いの舞台衣装の“触覚”を外山の頭に乗せる)。うわっ、ドクター・スランプに出てきそうだ(笑)。
※ ※ ※
テレコとワープロ
外山 交流の模様を『人民の敵』に載せようと思って。
2B ネタ集めが大変だもんね。
女性C(常連客) カセットテープですか(笑)。
2B アナログ最高(笑)。
外山 テープ起こしする時ってやっぱり、チュルチュルチュル……って巻き戻せる方がいいんですよ。
2B そうかそうか。
外山 それにデジタルのレコーダーって、巻き戻しのボタンを押して機械がピッと反応するまでに一瞬かかる。あれがイライラする。
女性C そうそう。でも外山さんはアナログを結構まだ使ってますよね。「どくんご」のミーティングで外山さんちに行った時も、VHSがいっぱい並んでた。
2B このテープレコーダーはウォークマンってやつでしょ。ソニーだし。
女性C 今どきテレコなのがいい(笑)。これって今、録音してるんですか?
外山 まあ、実際にコンテンツに使えるかどうか分かんないけど。
2B 取材はいっぱいやっとかないとね。
女性C ノーマルのテープですね。
2B ハイ・ポジションではない。
外山 雑談を録るのにハイポジは使わないよ(笑)。
女性C 今でもカセット売ってますか?
外山 百円ショップでもフツーに売ってるよ。
2B 「どくんご」もまだ音響でところどころカセット使ってる。
女性C そうなんだ。
外山 それどころか、ぼくは2年ぐらい前までシャープの書院を使ってたよ。
女性C 何ですか、それ?
外山 “ワード・プロセッサー”というやつですよ(笑)。
女性C ああ、そういうものが昔ありましたね(笑)。
外山 今はもうパソコンがフリーズすることもまずなくなったけど、10年ぐらい前はまだしょっちゅうフリーズしてたでしょ。それでせっかく書きかけの文章が一瞬でダメになるって。そういう“悲劇”を何度も聞いたけど、ぼくは文章を書く時はずっとワープロを使い続けてたんで、一度もそんな目に遭ったことがない(笑)。
2B ワープロは文章を書く以外の機能がないからね(笑)。パソコンだといろいろあるからすぐ重くなってフリーズしてた。
外山 さすがにフロッピーがなかなか手に入らなくなって(笑)、ついにワープロはやめました。
2B フロッピーはもう売ってないねえ。パソコンにももう、入れるとこ付いてないし(笑)。
福岡音楽シーンの重鎮
外山 それにしても、ついに福岡公演も満員になりましたね。
2B 百人超え。
女性C 昨年の倍ぐらいになってるんじゃないですか?
2B 一気に倍ですよ。
外山 昨年までは、2日間で計百人に届いてないぐらいだったもん。両日とも40人台だったってことだね。
女性C 初めて「どくんご」で満員の客席を経験しました。
外山 ところでそちらの男性は?
女性C 私の“相方”です。
外山 毎年一緒に来てたっけ?
男性B 昨年からです。
女性C (客席に放り出されていたカツラに目を留めて)これ、誰のですか?
外山 あ、ぼくのです(笑)。通行人に見えました?(福岡公演・2日目のフィナーレでは外山を含め現地スタッフが数人、エキストラ出演した。外山はそのシーンの少し前から背景の中に目立つように“ふと通りかかって何かやってるのが気になって立ち止まった単なる通行人”を装ってスタンバっていた。スキンヘッドだとすぐバレるのでカツラを着用)
女性C 見えました(笑)。
外山 よかった。バレバレだったらどうしようと(笑)。……あ、ボギーさん、帰るの?
ボギー(福岡音楽シーンの重鎮・外山とは前年知り合う) どうもありがとうございました。
外山 面白がっていただけたようで、何よりです。
ボギー いやあ、面白い体験でした。
女性C 何度かボギーさんのライブに行きましたよ。
ボギー おぉ、そうですか。
女性C ヨコチン・レーベル(ボギー氏が主宰)のライブ。
ボギー お芝居をされてる方ですか?
女性C 私は観る側です。
外山 昨日は藤田君(藤田進也。外山が90年代前半に主宰していた「反共左翼革命結社・日本破壊党」の党員。現在は福岡の音楽シーンで活動し、ボギー氏とも親しい)も来てました。
ボギー そうですか。
外山 藤田君には昨年、出演もしてもらったんですよ。
ボギー えっ、そうなんですか?
外山 今日も幕間に地元の劇団がゲスト出演してたでしょ。昨年もああいうコーナーがあって、ぼくと藤田君が1曲ずつ弾き語りをやったんです。
ボギー なるほど。芝居だけじゃなくて、何でもありなんですね(笑)。
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