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作家紹介 vol.6

'TOYAMA ICONIC'
富山ガラス アーティスト・プロファイル

vol.6
下田 顕生 Kensei Shimoda

shimodaのコピー


―ガラス作家の道に進み、経験してきたこと―

進学した大学で専攻を決めるとき、陶芸、染色、ガラスという3つの選択科目があり、僕が唯一制作しているイメージが沸かなかったのがガラスでした。それがきっかけとなり、ガラスに興味を持ち、この道を進むことになりました。卒業後、福井のグラススタジオに研修生として1年、その後は、熊本の工房で吹きガラス・トンボ玉の体験スタッフとして3年勤務しました。黒木国昭さんに4年間師事し、先輩からの勧めもあり、2015年から活動の場所を富山に移しました。それぞれの工房のやり方に加えて、工房で出会った作家たち各々のやり方を間近に見てきた経験から、「あの作品にこの技法を取り入れてみよう」といった具合に、技法を組み合わて作品づくりに取り組んでいます。富山は、ガラス作家の中では知名度がとても高く、ガラスをつくる上で欠かせない設備が整っている場所です。北陸新幹線が開通してから、展示会など県外への移動も楽になりました。これからも富山の魅力を感じながら、ここを活動の拠点として、ガラス作品をつくり続けていきたいと思っています。

―個人の作家としてのこれまでの作品―

作品づくりでは、普段の生活の中で「こういうのあったらいいな」と思う感覚を大切にしています。昔から生き物の「かたち」が好きなので、黒木さんのもとで金魚のオーナメントづくりを手伝いながら、イメージしていたことがありました。その「こうしてみたい」という造形のイメージを富山に来てから「かたち」にしたところ、大きな反響をいただきました。それ以来、金魚をモチーフにした作品、生き物をテーマにした作品を、今もつくり続けています。生き物の中でも、とくに水辺の生き物は、透明感があるガラスの質感で表現するのにとても相性がいい気がしています。これまでの作品には、金魚の「琉金(りゅうきん)」、蛙の「蛙戯(あぎ)」があります。金魚シリーズは、「琉金」の他に、「出目金」、「蘭鋳」、「獅子頭」などが定番となっていますが、ヒレなど薄い部分が破損しやすく、改良を重ねて繊細さと安全性のバランスを探しながら今のかたちにたどり着きました。また蛙の「蛙戯」は、「金魚がつくれるならこれもできる?」とリクエストをもらって生まれた作品です。河鍋暁斎の浮世絵「美人観蛙戯図」に登場する蛙をモチーフにしていて、体の色づかいや、蛙の表情に注目していただきたいですね。今後は、これまでと違った生き物をモチーフにしたシリーズにも挑戦したいと思っています。

下田 顕生 作琉金

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下田 顕生 作「蛙戯」


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―〈富山アイコニック〉のチームに加わって―

僕は、今年から〈富山アイコニック〉制作チームの一員となりました。現在は、2021コレクションに向けて、器を中心に制作を進めています。背が低く口の広い「器」は、シンプルなように見えて、つくる側としては技術的に難しいアイテムです。フォルムや、色の付け方や入れ方はもちろん、どういう技法を組み合わせれば、求めるクオリティに到達できるのか、さまざまなアプローチを考えながら制作に臨んでいますが、安定して生産できる方法というのも大切な要素として意識しています。〈富山アイコニック〉の制作は、自由に表現できる作家個人の活動と比較すると「職人」的な仕事が求められるように感じています。技術的に可能な方法を模索しながら、同時に制作メンバーのみんながつくりやすいかたちも意識しています。出来上がったものの形状と品質のよさを実感していただき、さらにガラスづくりへのこだわりも伝えていけるアイテムに仕上げていきたいと思っています。

―〈富山アイコニック〉のこれから―

僕自身もそうですが、〈富山アイコニック〉の制作チームは、各々がガラス作家としての活動を続けながら、アイテムの生産に携っています。また、始めたからには、富山のガラス・ブランドとして、進化させながら継続していけるブランドにしなくてはいけないと考えています。そのために、クオリティの高い商品をつくり続けて、まず国内でガラス・ブランドとして認知される存在にならなければと思います。そういう意味では、展示される場所や扱っていただける店舗がどんどん増えてほしいです。できるだけ多くの方に実際に見て触れて欲しい、そして選んでもらえたらと思います。〈富山アイコニック〉は、東京の百貨店でデビューして、いまも継続して取り扱っていただいています。今後は、さらにいろいろなジャンルで目利きをしているバイヤーの眼鏡に叶う存在になっていきたいですね。器の専門店以外に、セレクトショップなどでも扱ってもらえたら、素敵なことだと思います。まだこのブランドを知らない多くの人に、大切な人に贈るギフトとして〈富山アイコニック〉を選んでいただけるように、魅力あるブランドを目指したいです。今後の活動や発表していくアイテムも、ぜひご期待ください。

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