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作家紹介 vol.1

 'TOYAMA ICONIC'
富山ガラス アーティスト・プロファイル

vol.1
北村 三彩 Miya Kitamura

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―「ガラス作家」になろうと思ったきっかけ―

私は、京都の窯元の家に生まれ、幼い頃から陶芸が身近にある環境で育ちました。高校でも陶芸を学び、その後、陶芸の釉薬(ゆうやく)を学ぶため、京都市工業試験場にも行きました。釉薬の組成は、ガラスの組成にも似ていて、陶芸の釉薬を学ぶうちに、ガラスの透明感にも惹かれていきました。熱を帯びたガラスは、まるで液体のような自由な動きを見せたかと思えば、冷えるとすぐに固まってしまいます。そんなガラス特有の性質や、手で直接触れずにかたちづくる制作工程には、歯がゆさを感じながらも、ガラスにしかない面白さだと感じました。

―富山でガラスをつくる理由―

富山ガラス造形研究所・造形科に通い、卒業後は助手として、5年間を富山で過ごしました。その後、一度富山を離れ、再び戻ることになって、あらためて富山という場所の居心地のよさや住みやすさを感じています。山や海、水がきれいで、食べ物もおいしい。ガラス工房など、ガラスを作るための環境が整っていることもあって、県内外を問わず、多くのガラス作家が集まっています。さまざまな作家たちの作品を見て刺激を受けることで、前に進む活力を貰っている気がします。また、陶芸はほとんど一人でこなせるのに対して、ガラスは手が込んだものや大きなものは恊働での作業も必要になります。こうした現場を通して、人とのつながりやコミュニケーションが大切だと再認識することがあります。

―自身の作品に関して―

ガラス作品の中でも、器や用途のあるものに興味があります。作品には、自分が何かを見て「いいな」と感じたことを、作品の中に生かしていきたいと思っているので、その部分に共感してもらえると、とてもうれしいです。私の作品には、「輪花角皿 -波-」「蓮子(はす)」「Finestra」などがあります。

まず、「輪花角皿 -波-」は、水の景色に和の要素を加え、日常使いのお皿に仕立てた作品です。盛り付ける面に照明があたったときに、きらきらと光るようなテクスチャーに仕上げるとともに、和の雰囲気も感じられる風合いにしました。

「蓮子」は、蓮が名産の街で展示をする機会に作った作品です。蓮の実の一部分に穴が空いていて、一輪挿しとしても使えます。実の部分から芽が出てくるように、お花を生けられるので、花器としても楽しんでいただきたいと思います。

「Finestra」は、海外の彩が美しい街並みに、インスピレーションを受けて生まれた作品です。建ち並ぶ家々の窓に置かれた花の鉢やプランターが風景をカラフルに彩る光景を表現してみたいと思いました。花器を家に見立て、たくさんの窓(生け口)を作りました。

作品を見たり、手にとった方が、「リビングに置いて、こんな花を入れてみたい」とか、「手に持った感じが心地いい」とか、感性の琴線に触れるものであってくれたらうれしいです。ガラスは美しさと合わせて割れ物という宿命も待っています。大切にしてもらっていてもいつか割れて、かたちを失うことがあるかもしれません。たとえ割れてしまっても、また「ほしい」と思っていただけるような作品をつくり続けていきたいです。

北村 三彩 作「輪花角皿 -波-」

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北村 三彩 作「蓮子」

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北村 三彩 作「Finestra」

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―〈富山アイコニック〉の魅力―

工業製品としてのガラス製品は、型を用いたものがほとんどです。それに対して、〈富山アイコニック〉は、すべて「手づくり」で制作しています。手づくりのガラス作品には、型で製造されたものとはまた違う、ガラスの温かみが感じられると思います。一方で、工業製品に比べれば量産できない、かたちを忠実に再現していくことに作り手の高い技術力を要するといった面はありますが、富山の作り手たちの腕の見せどころだと思います。やればやるほど技術が研ぎ澄まされ、それをモノが語ってくれます。今後の作品展開もそうですが、作り手としても進化していけるような体制ができればと思っています。

―2021コレクションのアイテムについて―

現在、〈富山アイコニック〉に参加する作家たちと一緒に、食卓で使用する景色を思い浮かべながら、2021コレクションに向けたアイテムの制作に取りかかっています。実際に手にする方たちの食卓での使い心地はもちろん、実用性も備えた、思わず集めたくなるフォルムを持ったアイテムにしていけたらと思っています。

―〈富山アイコニック〉のこれから―

富山がガラスでも有名なことは、まだまだご存知でない方が多いと思いますが、“富山といえば、ハンドメイドのガラス”、“ガラス作家が集う、富山”、という認識が、もっともっと拡がってほしいと思っています。〈富山アイコニック〉が、“富山のガラスの入り口”として認知されるブランドとなり、今後も継続し続けて、愛されるブランドになれたらと思っています。また、このブランドが手づくりのガラスに触れていただく機会になればいいですし、ガラスの魅力を感じていただけるきっかけになれたらうれしいです。〈富山アイコニック〉を、いままでにない、これからの新たなガラス・ブランドにしていけたらと思っています。


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