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作家紹介 vol.2

 'TOYAMA ICONIC'
富山ガラス アーティスト・プロファイル

vol.2 岩坂 卓
Suguru Iwasaka

岩坂


―「ガラス作家」になろうと思ったきっかけ―

進学した造形大学で、自分の専攻を決める時に、油絵や日本画、陶器、染色など、さまざまな素材に触れる機会がありました。その中で、僕が一番興味が湧いたのが「ガラス」だったんです。特に、“ガラスのかたまり”に光が通る光景を見て、光と影のグラデーションに感動を覚え、それがガラスを学びはじめるきっかけになりました。大学卒業後に、実技の経験を積むため、富山ガラス造形研究所でガラスに触れながら研鑽を重ねました。僕が魅力を感じた、ガラスが光を通すところや透明感に加えて、“ガラスのかたまり”が持つ存在感にさらなる魅力を感じて、ガラスづくりの道を進むことになりました。

―富山でガラスをつくる理由―

富山には、ガラスを制作しやすい設備環境が整っています。自分で窯を持つというのは、経費の面でも結構大変なことだと思います。レンタルで窯を借りて、必要なときに吹きガラスをしたり、加工をしたり。そういった動きにもフレキシブルに対応できて、僕にとってライフスタイルに合わせられる場所が富山です。ガラス作家が多く活動しているので、まわりの作家たちがどのような活動しているか、ということが自然と伝わってくる環境でもあります。ものづくりの刺激になり、気づきにもなる、そういう点も、ガラスを制作する場所として、とても恵まれていると思っています。

―自身の作品に関して―

僕がつくるのは、器よりもオブジェの方が多いです。もともと、日本人が持っている“自然観”というものに興味があって、自然と人間の一体性を、ガラス作品として表現したいと思っていました。「Synbiosis」というシリーズは、そんな思いが根底にあって生まれた作品です。自然がつくり出した石と、人の手がつくったガラスが、一つのかたまりとしてかたちを成して共生することを表現しています。さまざまな場所で見つけた石を用いて、石を見つけた場所で得たインスピレーションを大切につくり上げています。作品を見る人には、先入観念を持たずに頭を真っ白にして、五感で感じ取っていただければと思っています。作品の中に、少しでも響くものを感じていただけたらうれしいです。

岩坂 卓 作Synbiosis」シリーズ

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―富山アイコニックと個人の活動の違い―

個人のガラス作家として活動するときは、自らの世界観を一人で深めながらものづくりをしていますが、〈富山アイコニック〉では、ラグジュアリー・ブランドとしての価値や使い心地、世界観、いま求められているニーズを総合的に解釈し、ブランドに参加する作家たちと共有しながら、作家それぞれの技法を活かしたアイテムをつくっています。現在も、多くのラグジュアリーなガラス・ブランドが存在していますが、認知度の高い既存のブランドとどう違いを出していくか、特徴やオリジナリティをどう構築するかも課題のひとつです。手にする人たちに、より価値を感じていただけるアイテムをつくっていきたいという思いがあります。

―2021コレクションについて―

今年2月から販売がスタートしたファースト・コレクションでは、ステムグラスなど、“高さ”の中でガラスを表現をする「グラス」を中心に手がけてきました。現在、2021コレクションに向けて、いわゆる平物(食卓の器)を中心に試作に取り組んでいます。ファースト・コレクションでは、感謝を伝える贈物として選ばれるようなフォルムを開発コンセプトとして意識しながらつくってきましたが、2021コレクションは、いまの時代とライフスタイルにあった新しい価値観も咀嚼しながら、家で過ごす時間をより豊かにするようなアイテムを考えています。日常に使う食器というよりは、家で過ごす特別な日に食卓を彩るようなかたちや、ふさわしいサイズを持ったアイテムをつくりたいと思っています。使う人たちが探していた新しいガラスのアイテムを提案できればと思いながら、試作を重ねています。

―〈富山アイコニックのこれから〉―

〈富山アイコニック〉は、大量生産が可能な工業製品とは違った、手仕事の技術を強みとするガラス・ブランドです。作り手の一人として、ハンドメイドのガラスには、特有の輝きや風合いが備わると感じています。また手仕事は、常に進化していきます。技術面では、求められているかたちをよりきれいに仕上げようという気概で臨めば、数をつくるほどにその仕事は洗練されていきます。こうした積み重ねが、マインド面の成長にもつながるのではないでしょうか。手だからこそできるかたちを一つひとつのアイテムに落とし込み、より魅力的なガラスを追求していきたいと思っています。将来的には、〈富山アイコニック〉が、まだ見ぬ新しいポジションのガラス・ブランドとなれたらいいですね。そのためにも、製品のクオリティにこだわりを持ち、さらにブランド力を確立していきたいと思っています。

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