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作家紹介 vol.3

 'TOYAMA ICONIC'
富山ガラス アーティスト・プロファイル

vol.3
古賀 雄大 Yudai Koga

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―富山でガラスをつくるようになるまで―

小さい頃に観ていたTV番組で、ガラスづくりの仕事があることを知りました。もともと自分の手で何かをつくることを仕事にしたいと考え、大学までは管理栄養士を目指していました。しかし、将来を考えたとき、もう一度小さい頃憧れた道にチャレンジしたいと思い始めました。そして大学卒業後、ガラスの道に進むことに。当時、ほとんどのガラス工房は、経験がなければ雇ってもらえない現場でしたが、唯一未経験でも受け入れてくれる工房を沖縄で見つけ、働きながらガラスづくりを学ぶ生活をスタートしました。しばらく経って、結婚を機に生活と活動の拠点を富山に移すことに。富山には、全国からたくさんのガラス作家が集まっているので出会いも多く、土地ごとに異なる技法があることや、道具の使い方一つにも、違いがあることを知りました。作家同士の交流や、ほかの作家の作品に触れることで、技術向上にもつながるような刺激を受けています。

―ガラスづくりのおもしろさ―

僕にとってガラスは、日常生活の中で身近にあるもの、生活していく上で必要な素材の一つです。光の角度や入り方で、違った表情に見えるガラス特有の性質にも魅力を感じています。ガラスの魅力が、よりよく伝えられる作品をつくるために、光がきれいに入るテクスチャ―を意識して制作に臨んでいます。「sparkle」は、そんな思いがかたちになった作品です。直径6cmほどで、厚みがあり、同じかたちが2つとできない方法でつくったぐい呑みです。また「flow」というグラスも、一つひとつがかたちに個性を持つように個体差を表現できる方法で吹いています。溶けたガラスの流動性を生かし、水そのものを掴んでいるようなフォルムと光の屈折を生かせるようにデザインしています。

使いやすいシンプルな形状で料理を引き立てるお皿に、ひと手間かけて存在感を持たせた作品が、「プレート」です。アクセントに色を加え、リング状の空気が入る縁をつけることで個性を持たせました。どんなアイテムでも、光の入り方や反射する印象をやわらかく仕上がるように考えてつくっています。しかし、計算してつくっていても、すべてが思い通りにならないところが、ガラスづくりのおもしろいところでもあります。いまは考えるよりも手を動かすことを意識して、多くの作品をつくる経験を通して、体が感覚を習得することを大切にしています。

古賀 雄大 作「sparkle(藤色)」

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古賀 雄大 作「flow」

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古賀 雄大 作「プレート」

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―〈富山アイコニックの魅力〉―

すべてのアイテムが手づくり、ハンドメイドであることは魅力の一つです。ガラス作家は、個人の作品づくりにおいては、個性を最大限に出しながらガラスづくりに臨んでいますが、〈富山アイコニック〉のアイテムづくりでは、商品としてのクオリティや同じフォルムの美しさなど「作品」とは異なる価値観の中で完成度を求めます。当たり前のことですが、手仕事で高級感を持ったガラスに仕上げていくためには、実は多くの手間がかかります。いつもは独自の技法を駆使してガラスのものづくりをする作家たちが、みんなで決めたひとつの高いクオリティと美しいかたちを目指して、一つひとつのアイテムを丁寧に作り上げているところは、ぜひ手に取って見ていただきたいと思います。

―2021コレクションに向けて―

僕はファースト・コレクションで、プレートを担当したこともあり、2021コレクションに向けて、プレートをさらにブラッシュアップすることを考えつつ、新しい「器」の試作も行っています。〈富山アイコニック〉に欠かすことのできない「クオリティ」を伝える、光の映り込みや厚み、視覚的なシルエットなどを考えて、器が使われるシーンを想像しながら試作を続けています。ガラスに厚みを持たせることで重厚感が出ますが、持った印象や重さとのバランスが大切で使いやすさにもつながると思っています。高さを持たせるかたちにすることで、テーブルに映る影の表情も変わります。これも器の一部として捉えてフォルムを考えています。器を「使う」ということに、つくり手としての提案ができればと思います。

―〈富山アイコニックのこれから―

富山の多くのガラス作家が参加して、〈富山アイコニック〉という一つのブランドをつくってことが目標です。それぞれが独自のやり方で個性を大切にしながら作品をつくる作家たちが集まって、ブランドの担い手として、技術力を磨いて品質の高いガラス・アイテムをつくることに徹する、そんな場となれば、作家としてもガラスのつくり手としても確実に進化していけるだろうと感じています。

技術とセンスを磨く現場という「土壌」をつくり上げて継続していくことで、誰もが〈富山アイコニック〉と聞けば美しいフォルムと高品質のガラスを思い浮かべてもらえる。そんなブランドにしていきたい思います。


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