理想の暮らしができる場所
移住前は東京で暮らしていた後藤さんご夫妻。山遊びの達人のご夫妻が選んだ移住先は四季折々の景色が感じられる自然が豊かな山あいの町でした。穏やかに過ごす富山での暮らしについてお話を伺いました。
移住を考えたきっかけ
「都会で生活していたときは、お金の心配ばかりで、収入を増やすことに必死。だから、がむしゃらに働きました。だけど、年齢を重ねて、管理職ともなると、その分、人間関係も複雑になります。気が付けば、人の顔色ばかりに気を取られる毎日。疲れ果てました。」と、夫の正悦さんは話してくださいました。
自分のお店を持つことが将来の夢だった正悦さん。ある日、そのことがふと脳裏を過ったのです。その思いを妻の陽子さんに正直に打ち明けると、「やりたいことがあるのなら、仕事を辞めちゃいなよ。」とあっさり賛同してくれました。
その言葉が一歩踏み出すきっかけとなり、正悦さんは長く勤めた会社を退職する決意をします。しかし、飲食店を開くための物件を探していましたが、新型コロナウイルスの影響により、市街地でお店を開くのは今は難しいと感じたそうです。
それなら、地方へ移住して夢を実現することも可能にならないだろうかと、二人で思案します。
そして、たまたまインターネットで見つけた、富山県主催の「移住支援セミナー」に参加してみることに。セミナーゲストの富山県南砺市在住の方から南砺市の魅力と「林業」という仕事のことを聞き、興味を持ったお二人は、翌週に現地(南砺市)を訪れてみることにしました。
移住の決め手となったもの
移住を検討した当時は富山県だけではなく、他県でも移住相談をしていました。現地(他県)を訪れ、地元の方に住まいと仕事の相談をしましたが、なかなかコレという決め手がなく、答えが出ませんでした。
南砺市を訪れてみると、セミナーゲストの方が出迎えてくれ、後藤さん夫妻だけのオリジナル現地案内ツアーを計画してくれていました。それは、現地の住民宅を各戸訪問し、実際の暮らしぶりを見たり、お話を聞いたり、交流ができるという内容。
「滞在中はすべて分刻みのスケジュールで忙しかった。だけど、お金を払ってでもいいからもう一度、同じツアーに参加したい。それぐらい楽しかったし、心に残っています。」と当時を振り返り、楽しそうに話してくださった陽子さん。
ツアーの案内人も移住経験者だったため、移住に関しての理解があり、積極的に仕事や家のことなどいろんなことを教えてもらえて、とても助けられたとのこと。
現地住民との交流で、その土地のこと、どんな人が住んでいるのかを知ることができて、少しずつ移住に対する恐怖やさまざまな壁を取り払えたと言います。自分たちが生活をしている姿を具体的に想像することができ、ここなら暮らしていけるかもと思えたことが、移住を決断する大きなポイントになったのだと話してくださいました。
住まいについて
空き家を数件見学した中で、お二人とも「これだ!」と意見が一致したのが現在の家。
築推定150年の古民家は、窓から見える景色が良く、天井の梁も立派。そして、何よりも古びたそのままの形が気に入りました。
「ただ、リフォームがとても大変なんです。」と、ご夫妻は顔を見合わせます。
床をめくればシロアリの浸食で木材が腐っており、基礎から組み直し。また、壁から隙間風が入ってくるため、断熱材を入れ、外壁の板も張り直すなど、大掛かりな作業。
「早く作業を進めなければ、という思いで切羽詰まっていて焦ります。」
そんなご夫妻の状況を知って、全国から山や釣りの仲間たちが毎週のように入れ代わり立ち代わり手伝いに来てくれるのだそうです。
「こちらからお願いはしていないけれど、友達がそのまた友達を連れてきて、どんどん人が集まってきてくれるんです。皆さんに気にかけていただいて、それが本当にありがたい。こうやっていろんな人が手伝ってくれるから、何とかなってます。二人だけだったら、完全に行き詰まってましたね。どんどん形が整ってくる家を見て、完成が楽しみだと思えるようになりました。」
富山でのくらし
仕事は、正悦さんは未経験から林業の仕事に就き、陽子さんはフリーランスでデザイン関係のお仕事をされています。
「収入は、正直に言うと激減しました。だけど、東京で仕事していた時と比べると、精神的なストレスがほぼなくなりましたよ。」
生活については、スーパーに行くのに片道一時間かかるため、週一回で全ての買い出しを済ませます。食材は冷凍保存をするなど工夫し、一週間分をやりくりしているそう。「買い物に行く頻度が少なくなった分、余計なものを買わなくなりましたね。だから、収入が減っても暮らしていけます。」と話してくださいました。
「山・川・海が近くて、遊びに行ける場所があちらこちらにあります。自然が大好きな自分たちには理想の暮らしです。」
今後の目標
移住前から、休日は山の中を歩き、釣った魚や山菜などを使って、正悦さんが料理をし、「源流居酒屋」と題して、山奥でのキャンプを楽しんでいます。
将来は飲食店を開くことが夢の正悦さん。源流居酒屋を実店舗で開店させたいと、思いが募ります。しかし、山奥にお客さんを呼ぶのはなかなか難しい話。
地域の方や山仲間が気軽に訪れることができる「源流居酒屋」の実店舗を古民家の一部を利用して開店させることが今後の目標。
「人が出入りする場所を作れば、人と人とがつながり、地域活性化にもなるのではないかな。それが、自分たちを温かく迎え入れてくれたこの地域への恩返しになればと思っています。」
移住を考えている方へ
「あまり無責任なことは言えないですが、何から手を付けたらいいかわからなくても、時間をかけてでも、何でもいいからまずは行動してみることが大切ですかね。
今はインターネットもあるし、検索する方法はいくらでもあります。あとは気になる場所があればまず足を運んでみる。現地の人に会う機会があったら、ぜひ会ってみてほしいですね。
そして、移住に対してホントのところの話を聞ける機会があったら、絶対に聞いたほうがいい。同じ経験をしてきているから、僕たちで良かったらお話しますよ。そのときはぜひ、源流居酒屋に遊びに来てください。」
大切にしているモノ
山で活動するときに必ず持っていく炊飯道具の数々。黒い鍋はビリー缶といい、たき火で直火にかけることができます。ふたの部分は食器代わりにもなるので、便利なアイテム。まな板、ナイフを使って釣った魚を刺身にしたり、山菜を刻んだり、毎回たき火をしながら正悦さんが自慢の腕を振るっています。
陽子さんが愛用している釣り竿とタモ
毛ばりを使ってテンカラ釣り(※)を楽しんでいます。
主にご夫妻がお好きな場所は川の最も奥の源流。その場所にしかいないイワナを釣ります。
※テンカラ釣り 竿と毛ばりと釣り糸のみの仕掛けが特徴。手軽な釣り方の一種
源流釣りや、正悦さんのアウトドア料理など、山奥で楽しそうにキャンプをしている様子が評判のYouTubeチャンネル「源流居酒屋よーこ」が配信されています。
その他、古民家リフォームの様子もSNSで発信しています。
▷YouTube 源流居酒屋よーこ【釣りとキャンプ飯】
▷ブログ 源流居酒屋
▷Twitter 源流居酒屋たいしょー
▷Twitter 山暮らしのよーこ
▷Instagram みんなの古民家 (@minnanokominka_in_toyama)
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