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着物事件簿1 怪奇!着物警察!

颯爽! 着物探偵登場!

 とある夏祭りの夜
 洋装の女性が、浴衣姿の男性に近づいていこうとしていた。

女性「早く注意しないと……」
 
 呟きながら男性に近づこうとした女性の前に立ちはだかるものがいた。
 

男「おっと、その先は行かせないよ」

女性:「誰よ、あなた!」

男「君達、【着物警察】を止めるものだよ」

着物警察:「私が着物警察?」

男:「そうだよ、あの浴衣姿の男性は君の知り合いではないだろ、それなのに、一方的に浴衣にダメ出ししようとしただろ?」

着物警察:「い、いえ、そんな事はしないわ」

男:「では、この右側の写真の男をみてどう思うかな?」

着物警察「襟の合わせが逆……、帯の位置が高い……、着物が透けている……」(凝視しつつ)

男「そうだ、彼のようなものを見ると、ダメ出ししたくてたまらなくなる。それが【着物警察】だ」

着物警察「そういうあなたは何者よ」

男「僕は着物好きな普通のおじさんだよ」
男「ただし、道を踏み外し【着物マル暴】になりかけている【着物警察】をほっとけない道楽者でもある」
男「そうだね、名乗るなら……【着物探偵】といったところかな?」

着物警察とは?

着物探偵「では、くわしく着物警察について定義しようかな」
着物探偵「多くの人々は、着物に対して自分の主張をするだけで【着物警察】と呼称するけど、これはネットスラングで広まってしまった悪影響だね」
着物探偵「着物に関して持論を語るものは、
      
  【着物警察】
  【着物自警団】
  【着物天使】

  【着物警察狩り】

に別れると考えている」
着物探偵「他の区分けは、おいおい話すとして、君達、【着物警察】について定義するとともに対処方法を示しておこう」
 
 そして着物警察は語り出した。


⓪着物警察の定義

 着物警察とは、【日常生活】において【交流のない普段着物の人】に対し、【敬意なく一方的】に、【自分の主張に基づいてダメ出し・実力行使】をする【自称着物愛好家】のことを言う。
 僕は着物警察の中でも、その行いでいくつか分離されると思う。
 便宜上、彼らが取り締まる対象を【犯人】とここでは定義しよう。

①着物お巡りさん

 彼らは、
 ●知り合いに対して愚痴る
 ●ネットで一般論としてダメだしする 

など、害のないレベルの人たちだ。
 僕は彼らのことを着物警察とは思っていないが。このレベルの人たちを「着物警察だ!」と糾弾する人もいるから、いちおうカテゴリーにいれている。
対処方法:無し
 対処する手段はない、というか対処する必要はないね。
 主義主張はそれぞれ持っているものだし、お互いに傷つけなければ問題ない。多様性とはそういうものだろ?
 自分と異なる意見は新たな気づきがあるかもしれないし、不快にならないのなら耳を傾けばいいし、無視すればいい。
 逆に相手に文句を言いに行った場合、それはまぎれもなく君が【着物警察】になってしまう可能性があるから気をつけたほうがいい
 そもそも、自分の主義主張を肩立っているだけで【犯人】がいるわけでもないしね
 僕的には、彼らのことを【着物警察】と糾弾する人間のほうこそ、着物警察だと思うけど、どうなんだろうね?

②着物白バイ

 彼らは、 
 ●リアルでわざと聞こえるよう独り言ダメ出しする
など、文句を言いたい相手【犯人】の着物に関する主義・主張を追跡し、間接的に文句を言う人立ちだ。
 多くの場合、耳や目に入ってくるため不快な気分になることが多く厄介だけど、それ以上の害はない。
対処方法:無視する
 無視しよう。もともと、間接的に文句を言っているだけだ。
 姑息なやりかたをするだけあって、わかりあえない。
 話すだけ時間の無駄だし、論破したところで楽しくならないからね

③着物刑事

 彼らは、ネットで着物に関する主義主張をしている【犯人】に対して
 ●ネットで犯人にダメ出しする(コメント、引用RT、画像無断転載)
する人たちだ。
 こうすると、犯人も自分が取り締まりをうけていることに気づいてしまう事が多い。
 リアルに危害がないのであれば、話し合ってみる事は別に止めないけど、知らない相手から敵意をもって糾弾されるのだから、なかなか和解は難しいかもね。
 ただ、相手の意見にも一理ある場合がある、その場合は自分の意見を修正してもいいんじゃないかな?
対処方法:無視(ブロック)する
 相手と話し合う気がない、話し合ってもわかりあえないと判断したら無視すればいい。
 言われたままなのは、悔しいかもしれないけど、エスパー魔美のお父さんのように、話を長引かせないほうがいいと僕は思うよ。

④着物マル暴

 彼らは
 ●リアルで直接ダメ出しをはじめる。
 ●許可なく着物・身体に触れようとする。

など実際に騒動を起こすレベルの人たちだ。
 【犯人】に対して絡んでくるから非常にやっかいだ。
対処法:逃げる
 敬意のない相手に対話は無理だ。
「ありがとうございます。では、急ぐので」
といって立ち去るべきだね。
 本当の警察の職務質問だって任意なんだ、着物警察の職務質問を受けなければならない道理はないし、話しても喧嘩になるだけだからね。

⑤着物ヤクザ

 彼らは
  【犯人】に対して「つきまとう」「怒鳴る」「着直そうとする
など違法行為を行う、もはや110番通報レベルの存在だ。
 たとえ、スラングであっても【着物警察】と呼ぶことすらできない違法集団だ。、
対処方法:逃走し110番通報する。
 彼らはただの犯罪者だ。
 被害にあわないように、ためらうことなく通報することをお薦めするよ


着物探偵「さて……」

 着物探偵は,着物警察を見る。

着物探偵「どうやら君は、【着物マル暴】、いや【着物ヤクザ】になろうとしているようだね」
着物探偵「やめたほうがいい」

着物警察「かりに私が【着物警察】だっとして、なぜ止めるの。私は悪い事はしていないわ、日本の伝統文化である着物の着付けをしないものを取り締まって、正しい文化を伝えようとしているだけなのに!」

着物探偵「着物警察。君は彼を取り締まるつもりだろうが、君がどれだけ警察を名乗ろうと、本当の警察ではない」

着物警察「それがどうした!」

着物探偵「法的な権限もなく、拘束し着物をはぎ取り着付け直す。それはたたの暴力だ。あなたは警察ではない……、犯罪者だよ」

着物警察「私は悪くない」

【着物警察】より悪なるもの

着物探偵「そう、ある意味、君は悪くない。君の行動の根底には、【正義】があるのだから。だけど、それはフォーマルな場所でのマナーにすぎない。
フォーマルな場所であれば、君の行為は正当性が認められるかもしれない」

着物警察「だったら……」

着物探偵「だが、ここは日常、カジュアルなシーンだ。どのような格好をして、その結果、周りからどう見られようとも、仮に馬鹿にされようとも彼らの自由だ。あなたが正義を振りかざし、糾弾し強制する者じゃないんだ」

着物警察「くっ」

着物探偵「だが、君達、着物警察は情状酌量の点もあるが、そうでない存在もある。着物自警団と、着物警察狩りだ」


着物自警団

 着物自警団は、君達と違って、【着物の知識もない】のに【誤った知識】に基づいて、【悪意を持つ相手】に、【ダメ出し・実力行使】する人たちさ。
 知識もないのに、なぜ糾弾できるかって?
 そんな事言われても、彼らには、着物に対してリスペクトがそもそもないんだ。
 自分が悪意をもっている人間が着物を着ている。だから、相手を貶すために、薄い知識をもって糾弾し、悦にはいっているんだ。
 たとえ、犯人は正しい着こなし、マナーをしていて、まったくの無実だったとしてもね。
 その事を指摘しても彼らは無視する。ただただ糾弾するネタにしているだけだからね。
 間違った知識で糾弾する姿は滑稽だし、軽蔑に値するね。 
 それに比べれば君ははるかにマシだよ

着物警察狩り

 滑稽と言えば、君達の天敵 着物警察狩りもそうだね。
 【着物警察】を発見すれば、【着物警察は悪とみなし】、【ネットの意見を鵜呑みにし、浅い知識】で【糾弾するだけ】のものたち。
 その顔は君も経験あるね。
 有名な『深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだ』のように、僕から見れば、彼らも立派な【着物警察】なのにね。
 しかも、その多くは着物にリスペクトがあるわけでもなく、罪人に石をなげるかのように、【着物警察】は糾弾してもいいと思い込み、錦の御旗のもと糾弾するんだ。
 いやいや、せめて着物に興味をもってほしいものだね


着物探偵「僕の場合、彼らを見かけてしまったら、そっとブロックすることにしている。読む価値もないからね」
着物探偵「それに比べれば、君はまだマシだよ」

幸せを呼ぶ着物天使たち

着物警察「偉そうにいっているけど、あの人は指摘しないの?」

 彼女の視線の先には、彼女が犯人と定めた、着物の襟の合わせが逆になっている犯人に声をかけている老婆の姿があった。
 笑顔を浮かべ優しく犯人に語りかけており、犯人も楽しそうに話していた。
 老婆の話を聞いていた犯人の顔に、驚きの表情が浮かびあがり、自分の胸元をみたあと、きょろきょろとあたりを見渡す。
 老婆は其れを見守り、犯人が老婆のほうを見ると、近くの呉服屋のほうを指差し、何かを説明する。
 犯人は頷き、老婆ともに呉服屋の中に入っていき……
 10分後、着物の襟合わせを直した犯人が、老婆に頭を下げながら、店をでていった。

着物警察「あの人だって、着物警察でしょ」

着物探偵「いや、彼女は着物警察ではない、彼女は【着物天使】の中でも最上級の【着物守護神】だ」」

着物警察「なにそれ?」

 着物探偵は【着物天使】の説明をはじめた。


着物天使とは

 まず着物天使の定義について語ると、次のようになる。
 【敬意をはらい】【相手の着物姿、着物に対する考え方】に対し【自分の意見】を告げる【着物が好きな人】の事だね。
 基本的に相手に対して好意的な発言をするため、もめる事はあまりない。
 まあ、受け取り方次第では【着物警察】と同じことになってしまうのは哀しい事だがね。

着物大天使

 これは、着物天使とほぼ同じだけど、異なるのは【よく着物を着ている人】であるということだ。
 着物天使より実践派の人だということだね。
 着物愛好家だけあって、面構えが違うね

着物守護神 

 これは着物天使の究極系、【相手が嫌悪するコミュニケーション】をとりつつ【着崩れた着物】を【着付け直し】してくれる人だ。
 いきなり見知らぬ他人に着付け直しをされるのでは、そのほうがいいと思ってもやはり精神的な拒否感が生まれるからね
 その拒否感をやんわりと打ち消して、着付けなおすなんて、神の所業だね。


着物警察「なによ! 私だって着物は好きよ! 一緒だわ」

着物探偵「君が着物をリスペクトしていないとはいわないよ。でもね、まちがいなく【着物を着ている人】に対してはリスペクトしていない」
着物探偵「だから言動が暴力的になるんだよ。なぜなら、着物を君のおもうとおりフォーマルに着こなせていない人は【着物を着こなせえていない下品な人】なんだからね」

着物警察「……」

着物探偵「着物天使たちは違う。着物を着ている、それだけで嬉しくなってしまう人たちだ」
着物探偵「誰にだって間違いはあるし、主義主張は異なる。その意見の是非はともかく、同じように着物が好きで、しかも自ら着ている人をみて【同志】とおもっても敵とはみなさない。だから思わず声をかけて褒めてくれるんだ」
着物探偵「【着物守護神】は迷惑かも?と思いつつ、相手の気分をそこねないように説明し、着付け直す人だ」
着物探偵「もちろん、断る人もいるが、その場合は素直にあきらめる。自分の行いを相手が喜ばない事を知っているからだ……、君にそれができるかな?」

着物警察「それは……」

着物探偵「だから、君は着物警察なんだ」

着物警察は悪ではない……が

着物警察「何よ、私たちがすべて悪い!というの!」

着物探偵「いや、僕は君たちの存在自体を悪だとは思っていない」

着物警察「え?」

着物探偵「君たちは、フォーマルな着物を至上として、そのマナーや着こなしをきちんと学んでいる。その多くはお金を払って学んでいる。着物も安いものではないだろう。貧乏な僕からすれば羨ましい限りだよ」
着物探偵「冠婚葬祭や茶の席、ちょっとしたパーティ等、これまでに築きあげられていたマナーや作法がある場所なら、君達が正しい
着物探偵「そもそも、君達、着物警察の多くはなぜ着物を着ないんだ? 着物を着るべきじゃないかな?」

着物警察「それは……」

着物探偵「わかっているよ、君達にとって着物は特別な時に着るものだ。だけど彼らにとって着物は日常に着るものなんだよ、そもそもスタンスが違いすぎるんだよ」
着物探偵「彼らはファッションの一つとして着ているだけだ。ファッションは自由、ルールも最低限でいいはずだよ

着物警察「だけど……」

着物探偵「『だけど、今の人は自由の名のもとに着物の事をまったくわかっていない、それが許せない』といいたいのだろう?」

着物警察「なぜ、それを」

着物探偵「僕は、着物警察狩りじゃない。君達、フォーマルな着こなしにも敬意を払っている」
着物探偵「君を戒めつつも、何も知らないのに「着物警察(笑)」という着物警察狩りや「こんな着こなしありえない!」という着物自警団には怒りを覚えるし、カジュアル着物派も知識があって困ることはない
着物探偵「だから、君と一緒に、この着物界隈の事件を解決していきたいと思うんだ。どうかな?」

着物警察「いいわ。でも、私のほうが正しいと認めさせてやるわ」

着物探偵「よろしい、では、ともに事件解決と行こうか? 君の名は」

着物警察「小林姫香よ」

着物探偵「ちょうどいい、僕の名前は明智凍夜、明智と小林、まさに探偵らしい、じゃあよろしくね。小林さん

小林さん「え、着物警察ではないんですか?」

着物探偵「君はまだ着物警察ではない、それに……、ぶっちゃけ、この書き方で書くと、着物警察と着物探偵が紛らわしすぎる

小林さん「あ、はい」

着物探偵「あと、事件はすべて男着物に関するものだ。作者が男だから、女性着物はあまりくわしくないからね」

小林さん「メタな発言を」

着物探偵「さあ、事件を解決しにいこうじゃないか?」



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