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最初で最後。社長が辞めた社員にお願いしたこと。

私が父の町工場に通い始めたのは2001年8月から。その当時、ITバブル崩壊の影響などもあってか景気が低迷していた時でした。会社の状況など梅雨知らず、子供を連れてほぼ毎日町工場で過ごしていました。

【プログラムで動く機械を使う】
金型工場にはたくさんの機械があります。その中でもプログラムで動く機械は1台=一軒家一軒くらいの価格です。その当時、その機械が4台ほどありました。マシニングセンターという削ったり穴開けたりする機械、ワイヤー放電加工機と0.25ミリの真鍮の線に高電圧をかけて金属をカットする機械、それぞれ2台です。
ある日、父から「機械使ってみるか?」と聞かれてCADやってたこともあって即答で「やってみる!」と答えました。そしてCAMというソフトを使ってプログラムを作り、機械を使うようになります。CADで描いた絵のものがそのままの寸法で出来上がってくるのを体感して「これってすごい機械や!!」と思った瞬間を今でも覚えています。

【社長が頼んだ最初で最後】
当時、景気の問題もありお休みをしてもらったりしていたこともあり、マシニングとワイヤーを担当していた人が退社することになりました。
1ヶ月後に退社とかそんな余裕もなく話が進んでいました。
社長から「機械使ってみるか?」と聞かれて二つ返事で「やる」と私の答えを聞いた社長は即日、退社することになった社員さんに連絡していました。
バリバリの職人さんである社長は基本、去るもの追わずの精神だったので異例中の異例の出来事です。
そして、「1日だけ指導に来てやってくれ」と依頼していたそうです。
退社する人に連絡するなんてこと、あり得ない話だったので相当な期待と覚悟だったのだと思います。
「機械を持っていたとしても動かせる人間がいないと何もならない。
身内が覚えていてくれれば今回のように社員さんが辞めてしまっても続けることはできる。」そう考えていたと、後で聞きました。

【ほんまに1日だけ!?】
ちょっとCAD/CAMやってるくらいのレベルの私でしたが、指導してくれたのはほんまに1日だけでした。
プログラムの作り方、データの移し方、マシニングの使い方、ワイヤーの使い方、条件違いの時はどうするか・・・・・
朝から晩までみっちり教えてもらいました。
今日しかいないと思ったらノートも自分用マニュアルに仕上げておかないとえらいことになるし、誰にも聞けないとなるとこれはえらいことや!と思って根掘り葉掘りわからないなりに聞いて覚えたというよりノートに仕上げたというレベルでしたね。
とはいえです。「ちょっとくらい聞けるよね。」とか甘い考えを持っていたわけですが、ほんまに1日だけでそこからは音信不通状態です。
翌日からすぐ使わないと忘れるし、復習しなければ!と現場にある在庫の材料をセットしては加工し、トラブったら考えて、しばらくはそれの繰り返しでした。
業界の方だとお分かりだと思いますがマシニングセンターはツールチェンジというのがありまして、大きなアームが回転して刃物を交換するんですね。
一人で使い始めた時はその交換する動きと音だけで「うわぁ!!!」と変な声出しながら使っていました。機械がこんなやつだったので正直ビビりながら動かしてましたね。

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【現場で女子がいるのが珍しいって言われるのかっこいいやん】
当時、設計と一応マシニングセンターを使うことになっていた社員さんから言われたのが「女の子がそんなんせんでいいよ」という一言。
いやいや、あなたに決められることではないので!
なぜかその一言にスイッチが入って黙々と練習加工してました。社長のお嬢さんがどこまでできるのか?みたいなところだったんだと思います。
一般的に考えたらそりゃそうですよね。その当時は金型屋の現場に女子がいるなんて考えられない世界だったでしょうし、ましてや言葉で言うと社長令嬢でしたからね、一応www

母から言われていたことがありました。「現場の人に理解してもらおうと思うなら現場で人の倍以上やらないと信頼は得られない」
その通りでしたね。意地になってやっていたら最初は「まぁまぁどこまでできるのかねぇ」みたいな雰囲気だった現場の人たちが「ここ、こうしたらいいで」「手伝おか?」そう言って歩み寄ってくれるようになりました。
そして会社に来る人来る人に「え!?マシニングセンターとワイヤー使ってんの!?」と驚かれてなぜかそれが嬉しくなってきたこともあり、どんどんやるようになりました。珍しがられるのが嬉しかったのとなんかすごいことしてんねや、私。とか思ってましたねwww

【機械加工のお仕事に集中!】
金型屋さんの仕事は売り上げに波があります。新製品が出れば金型が必要となり忙しくなりますが、出なければほんまに暇になります。メーカーさんの時期に左右されるんですね。
その話を経理やってた母から聞き、私がここで何ができるのか?と聞いたところ、「マシニングやワイヤーは何でも加工できるすごい機械なんやで。プログラム入れてれば夜中でも仕事しててくれる。機械止めなかったら仕事になるんやで。」そう言われて両極端な私は「機械加工」「マシニング加工」「ワイヤー加工」というキーワードにあたる仕事を探し始めます。

まだ技術的なことは理解していなかった私・・・
「マシニングやワイヤーは何でも加工できるすごい機械」ここだけ理解していたので材質も難易度もわからず受注し始めます。
ここから毎日勉強、毎日機械と格闘、そんな日が続きます。


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