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フィールドレコーディングについて 最終回

前回はバイノーラル録音時の失敗談でした。

僕がバイノーラルに挑戦したのは、2014年頃。挑戦して、あっという間に挫折したわけです。挫折というより、他の方法を模索したのですね。

今日は録音後の編集についてお話しします。でも全く参考にはならないと思います。ごめんなさい。

音の定位

いわゆるバンドミュージックだったりすると、ボーカル・バスドラ・ベース・スネア等が中央で、なんてセオリーがあるわけですが、野外録音はこれが無い。

そもそも音楽は個別にモノラルで収録して、最終的にステレオに仕上げるわけです(例外あり)。野外録音をモノラルでやるとすべての音がセンターに来るので、甚だおかしな作品になってしまう。例えばマイクの前に、カエルやら鳥やら虫やらが縦一列に並んで歌うようなもの。

なので僕はステレオで録音して、あとは何もしません。そのほうが自然。(追記 全方位録音しています)

音のレベル

入力MAXで録音しても、確認時にボリュームをかなり上げないと細かいニュアンスまで聴き取れないことが多い。だからそのままでは商品になんかならないわけです。

CDにしようなんて言ったら、もう大変。購入したお客様が、音楽CDを聴いた時のままのボリュームで聞くことができるようにしなければいけない。つまり、さっきのバンドミュージックと同じレベルまで音量を上げなければいけないのです。

もうね、無理。はっきり言って、無理。完全に同じにはならない。ここで妥協して下さい!ぐらいまでならなんとか。もともと自然の声は小さいので、音楽のように聴くのは無理です、と、はっきり言うしかない。

音を大きくするだけなら技術的にはできるんですよ、勿論。でもそうすることによって、遠くのカッコウも、足元の虫の音も、遠雷も、全てが同じレベルできこえたりする。もう、それは自然の音ではない。

編集で僕がやらないこと

音楽編集の世界では、目標とする音楽CDをひとつ見つけて、自分が録った音をそれに近づくよう試行錯誤したりします。それをやることで、この音はこう、これらはこう処理する、なんて細かい技術が自分の中に蓄積されていきます。

でも、自然の音の前では、それは通用しません。

そもそも音楽CDというものは、プレイヤーに「CD」という目標がある。レコーディングエンジニアにもある。だから、結果を出そうと、インプットするわけですよね。したがって合理的に仕事しやすい。

自然界の音も鳥たちもそんなこと考えていません。僕らが勝手に録音しているだけです。なので、毎回編集方法が異なるんです。

だから、編集方法について具体的に説明できないんです。ただ、やらないことといえば、前述のように増幅系のエフェクトは使わないかな。マスタリングもしません。

もっと言うなら、編集のキモは、「自分が現場で聴いていた音を再現するよう適切に処理する」ということくらいで。それから、大きい音は大きく、小さいものは小さく。あくまでも自然に。でも音量はクラシックCDくらいにもっていけるよう努力する。愛を持って。

最終奥義的なものもないことはないんですが・・・無理。説明。

最後に

ということで、これからフィールドレコーディングを始めようという方。沼だと思ってください。底なし沼。けれども、自分が現場で聴いた音そのものを再現できた時は、涙が出るくらい嬉しいものです。

ところで最近の僕は、すっかりフィールドレコーディングをやらなくなってしまいました。自分の耳に自信が無くなったからです。そうです。再現する自信がないのです。

歳を重ねてくると、高音が聴こえなくなってくる。これです。つまり、僕が「やった!再現できた!」と喜んでCDを出したとしましょう。ところがそれを聴いた若い方が、「高音、うるせー!」とおっしゃる可能性が高いな、と思いましてね。耳に頼らず波形を見ながら編集する方法もあるんですが、そこはやはり自分の耳を最終的には信じたかったので。

この世界は奥が深いので、フィールドレコーディングシリーズはここまでとします。

最後に一言。

底なし沼を体験してみて!楽しいから!

ありがとうございました。

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