5/2 競争力CA-小学校における動物飼育の是非

今回の競争力CAでは、「小学校における動物飼育の是非」をテーマに立論者は賛成側、ゼミ生は反対側に立って議論した。

【背景】

日本の学校教育における動物飼育は100年以上の歴史があり、それは子供たちが動物たちと触れ合うことでこそ育つ重要な教育効果を持っている。中川は①飼い続けることによって学ぶもの②協力しあってともに世話をする中で学ぶもの③動物の固有の性質や習性の中から学ぶもの④感動を表現し、活動を振り返ることによって学ぶもの、などがあると指摘する。これらを小学生のうちから学ぶことで、自分以外の相手を思いやる心を育み、豊かな人間形成の基礎を培うことができるのである。
しかし、さまざまな事情により近年動物を育てる学校は減少傾向にあり、2016年の時点で飼育している学校は全体の57.8%にとどまっている。「何を」「どのように」飼育するか、またその他の課題について、議論が行われている。

【前提確認】

Q.殺して食べるもの(鳥など)を含む?
A.飼育のみなのでなし

【意見・論点】

1.「ヒューマン・アニマル・ボンド」の考え方
→1970年代に米国を中心として始められたヒューマン・アニマル・ボンド(人間と動物の絆)をめぐる研究で、子供たちが10歳ごろまでに動物とふれあい、五感で実際に体感、体得し、感情を磨く教育を与えることが、子供たちの社会化に必要な脳の発達に欠かせないことが明らかになった。先進国を中心に自然が失われつつある中、ペットを飼わない限り子供が動物と直接関わる機会が減ってきている。さらに経済的事情や住宅事情により子育て世代でペットを飼っているのは2割にも満たない。このように、小学校での動物飼育には大きな意義がある。

Q.植物でも養える。アレルギーや飼育の大変さの観点から、植物の方がリスクは低い。
A.植物では、命の大切さや教育の効果を感じにくい。

2.「命の教育」
→14歳の少年による神戸連続児童殺傷事件(97年)、11歳の少女による女子児童殺害事件(04年)という二つの事件をきっかけに、子供たちに命の大切さや他者への共感をどうにかして教えていかなければいけないと多くの人が認識した。そのための情操教育として「動物介在教育」が導入されたと言われている。実際に犯罪率が低下したという数字的データは見つからなかったが、子供時代に動物に虐待をした経験のある人がかなりの率で将来犯罪やDVをするという統計が出ており、動物に対する慈しみの心を養うことが犯罪率の低下につながると言える。

Q.殺害する人は動物を先に虐待していた。子供は自分より弱いものに攻撃しがち。動物の虐待は現行犯じゃないと犯罪にならないから、公にはならない。むしろ命が軽視されるのではないか。
A.先生が正しい教育を行うことで、教員の教育を改善することで、虐待を減らせる。
→Q.正しい教育ではなく、怒りなどの衝動によって虐待が行われる。先生が見てないところで行われる。
A.当事者以外は虐待に反対。その反対によって当事者も気づく。
Q.飼育以外にももっと他に教育すべきことがあるのでは。社会的な背景が影響しているのではないか。
A.社会的な背景は簡単には解決できないので、動物飼育によって犯罪の低下を。

3.「主体的・協働的な学び」のツール
→動物飼育は「道徳」教材として用いられることが多かったが、その長期的なプロジェクトによって問題解決能力・責任感・使命感、マザリング効果(育児能力の発達)などを学び、さらに動物が家畜だった場合、その生き物から人間が恩恵を受けているという事実について学べるなど教育の質を高めることに貢献している。

Q.A.なし

【予想される反論・再反論】

1.福島原発の被災地で長期休校になった小学校にて、置き去りにされた動物が死亡したケースが多数存在する。自然災害の多い日本において学校飼育は向いていないのではないか。
→被災地のペットも同じである。ペットの受け入れは自治体によって異なるなど、災害時の動物問題は学校飼育の場に限らない。また、被災地のペットを一時的に預かる里親募集サイトやボランティアなどの存在をもっと多くの人に認知してもらうことで、置き去りの動物を減少させることができると考える。

Q.A.なし

2.猛暑により動物が死亡するケースがある。空調管理が整っていない場所での飼育は、動物愛護の観点だけでなく児童に間違った認識を与える。
→全国の公立小学校のエアコン普及率は95.7%なので、動物飼育の環境として利用するべきである。うさぎなど気温に敏感な動物は室内で飼えば問題ない。

Q.長期休暇中は、室内での管理が難しい。24時間エアコンつけるのは、お金の面からも批判が出そう。また、教職員の負担が増えるのでは。
A.教職員の負担は、子供達の担当制にすることで負担を減らせる。扇風機。


3.土日や長期休暇に世話をするのは教職員である。働き方改革が進んでいることに加え、公立小学校職員は定期的に異動がある。日常的に世話をすることは教職員の負担を増大させる。→教職員だけに任せることがそもそも間違っている。教育目的ならば子供に積極的に世話をさせるべきであり、それと動物飼育を禁止することはまた別問題である。ロシアでは土日分の餌をあらかじめあげている。長期休みの世話は組織的に行い、児童、保護者、地域の専門家などによる連携した取り組みをすることで教員の負担を減らすことができる。

Q.A.なし

4.感染症
→しっかり対策すれば問題ない。厚生労働省による対策方法→活動の前後には必ず石鹸で手洗い、消毒を行う。動物は正しい方法で入手し、衛生管理を徹底する。

Q.アレルギーのある子供は?(うさぎアレルギーの人は日本人に多い)
A.子供によって症状の酷さは異なるので、保護者と話し合って、個々人で対策を取る(動物の隔離など)
→アレルギー検査してない子など、その場で発症した場合は?
Q.カリキュラムに参加できない子が出てくる。給食などとは異なり、代替が難しいことに問題がある。阻害性が生まれる。
A.直接触れられなくても、観察も重要な教育である。マスクやメガネで観察することで対応できる。

5.その他(1~4に含まれない反論)

Q.学校飼育ではなく、業者からのレンタルにすれば良いのでは。
A.それでは、短期的なプロジェクトになり、使命感や責任感が薄れる。

Q.動物飼育は動物が死ぬ前提であるのが、動物愛護の観点から倫理的に良くない。
A.多少しょうがない。生き続けるものはない、生物は死んでしまう。
Q.死を教員だけで対処している。
A.動物がいなくなった=死として捉えられる。

Q.デメリットが多い。うさぎを買ってる人は、どれぐらい心に残ってるのか。
A.

Q.飼育に主体的じゃない人には教育できるのか。
A.動物と触れることで、心を養える可能性がある。

【上久保先生からのコメント】

昔は「動物を大事にしよう」っていう、もっと簡単なものだった。
実際は先生が世話をしているのに、子供が世話をしているつもりになっているという、訳が分からない問題。
少子化が発展しているので、動物の面倒を見る人が少ない。→経済成長がなくて発展しないと、動物の管理を維持できない。
問題の根本が明るくなく、寂しいものになっている。

【参考文献】

学校の動物飼育に関する課題と改善策
https://www.schoolanimals.jp/file/555
学校における望ましい動物飼育のあり方
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06121213/001.pdf
学校現場における動物飼育の現状と課題について
https://www.yafo.or.jp/2016/07/29/5727/ - :~:text=一方、動物を飼育し,28.9%)となった。
学校での動物飼育における問題点
https://sippo.asahi.com/article/10560313
学校飼育動物、公園飼育動物などの適正飼養の規定 環境省
https://www.env.go.jp/council/content/i_10/900435413.pdf
学校で動物を飼うには…
http://www.kvma.serio.jp/dl/08shiiiku.pdf
学校における動物飼育について
https://www.mext.go.jp/content/20210701-mext_kyoiku01-100002611_01.pdf
学校で飼うのは何のため?
https://zookan.lin.gr.jp/kototen/gakko/02.html
理科や生活科における学校飼育動物の法と倫理の境界に関する一考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tfumhk/8/0/8_61/_pdf
主体的な学習教材としての学校飼育動物
http://www.eec.miyakyo-u.ac.jp/blog/data/kiyou18/02.pdf
動物とのふれあい必要?学校ではhttps://www.asahi.com/articles/DA3S15373889.html
「命を大切にする心」を培う理科教育と学校飼育動物との関わり
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10407672&contentNo=1






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