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連勤日記 66日目 パワハラ

1898年イタリアの内科医ミカッロ・ゴルジにより発見されたゴルジ体(細胞内の構造物)は長い間その実在が論争の的になっていた。オックスフォード大学動物学部のとある年長指導者も否定派の一人だった。

彼は常々これは作為的な幻想であるとまで教えていたが客員講師を呼んでの定例研究発表会においてアメリカ人細胞生物学者がゴルジ体が実存するという完璧で説得力のある証拠を提示すると事態は一変する。

講演が終わると彼はホールの前に進み出てアメリカ人の手を握りながら熱い口調で聴衆すべてに言った。「親愛なる皆さん、ありがとう。この15年間私は間違っていました」。聴衆は科学者のあるべき姿に拍手した。

自動車工場で驚いたのがトレーナーなどの指導的立場の人の腰が低いことだ。私が新人でまだ怒るような段階でないこと、そもそも私のほうが明らかに年上であることは確かだが、それと関係なく本質的に物腰が柔らかい。

その中でも特にさわやかで人当たりの良いひとがいて、年上なので失礼ながら率直な感想としてこの子すごいと思った。2日目にはこれはマネできないと思った。私はパワハラをしていたタイプの人間だ。

私はなぜ人の心をかき乱すこと(=パワハラ)をしてきたのか。外的要因として、会社としてナメられるなという圧や、あの人だけ楽してるのはずるいという不満に対するパフォーマンス。要は従業員も含めた企業風土。

内的要因として必要悪を買って出ている満足感。本人のためという一方的な正義感があった。悪いという自覚があるので自分をも蝕む。いま、全て必要ない事を目の当たりにした。「ありがとう。長い間私は間違っていました」


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