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宇宙兄弟


小学生の頃の話。当時上映していた映画「20世紀少年」を友達と観に行った。主題曲になっていたのは、T.REXの「20th Century Boy」だった。
マークボランの弾く、怪獣の声のようなギターフレーズから始まるその曲を初めて聴いた時の衝撃はその日から数ヶ月の間、T.REXのベストアルバムをラジカセから流しそれに合わせてオリジナルのダンスをするという、ゲーム好きのせいで生活に支障が出てしまうほどの俺が天下の任天堂が発売したDS(何の略なんだろ)を尻目に、そんなアナログな遊びをするほど大きなものだった。
時は過ぎ、十数年後。宇宙兄弟を読んで、その時の感覚を思い出した。静かな爆発のような。



きっかけはXで流れてきた、宣伝の意味も込めらている漫画数ページ分の画像付きポストだった。たった数ページ、それも読んで分かったが物語序盤の一幕。そのポストを見て、「読まなきゃ」と思った。
コミックDAYSというアプリをインストールし、第一話を読んでみる。そこからどこまで一気に読んだだろう、マジでヤバいくらい面白かった。止まんねーのなんの。無料で読める範囲を飛び出し、Kindleで最新巻まで購入した。
読んでない間もこうして宇宙兄弟のことを思ったり、友達に勧めたり、どっぷりとまだ無重力の空間に包まれたままだ。
宇宙飛行士を夢見る主人公の南波六太と、同じ夢を持つ弟南波日々人がお互いの距離を感じながら夢を目指す(超ざっくり)、といった内容の作品だった。
「宇宙」とは人類にとって、HUNTER×HUNTERでいうところの暗黒大陸のような、あまりに厳しい環境と恐怖が満ち満ちた世界だと思った。ただ、そんな世界に行くきっかけはたった三文字。
「好奇心」
俺が宇宙兄弟を読んで止まらなくなるのと同じように、スペースシャトルは上がっていく。これが本当に気持ちがいい。好奇心が好奇心と結婚したみたいな感じ。
いつも映画や漫画などの作品を見ると、終わってからしばらくぼーっとする程感情移入し、その世界にどっぷりと浸かってしまう。上映が終わり映画館に明かりが復活すると、戻ってきた感覚と、そこから数分間現実を思い出す時間がある。自分は没入するのが得意だと思っている。
宇宙兄弟を読んでいる間、俺は宇宙空間にいた。興奮と恐怖を同時に感じていた。読んでいない間は、「はやく宇宙空間に戻りたい」と思うほどに。マジで。過言じゃなくて。
大人になって、勉強というものを考えたことがある。
今のところ思うのは、情報を正しく理解したようでも自分の体験や感覚と紐付けられた勉強じゃないと身につかないんじゃないかなという仮説。
つまり、深く没入し宇宙空間に飛ばされている間が、俺にとって楽しくて怖いお勉強時間だったんじゃないかと思う。実際に無重力を体験した訳でもなければ、死と隣り合わせになっていた訳でもないがその何分の一か、月の重力ほどの軽さではあるが勉強として脳に刻まれたと思っている。

暇な時読んでくれや。最高だぞ。


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