Kerと単射性

次を示す。

命題
関数 f :ℝ→ℝは線型写像とする。このとき、次は同値;
(i)Ker(f) = {0}
(ii) fは単射

証明の前に線形写像の定義を復習する;
関数 f :ℝ→ℝが線形写像とは次の2つが成り立つことである
(i)∀x, y∈ℝ, f(x+y) = f(x)+f(y)
(ii)∀a, x∈ℝ, f(ax) = af(x)
また、線形写像の基本的な特徴として f(0) = 0 がある。
(∵f(0) = f(0+0) = f(0)+f(0) となり両辺から f(0) を引くと f(0) = 0 を得る)

(証明)
 Ker(f)={0}
⇔[x=0 ⇔ f(x)=0](x=0 ⇒ f(x)=0 は f が線形写像であることから)
⇔x, y∈ℝに対し、[x=y ⇔ f(x)=f(y)](※)
⇔fは単射

ここで(※)の部分
[x=0 ⇔ f(x)=0] ⇔ x, y∈ℝに対し、[x=y ⇔ f(x)=f(y)]
について、⇐は自明であるから⇒を示す。
[x=y ⇒ f(x)=f(y)] は x-y=0 となるから f(x)-f(y) = f(x-y) = f(0) =0
[x=y ⇐ f(x)=f(y)] は f(x-y) = f(x)-f(y) = 0より x-y =0 だとわかり x=y を得る▢

(補足)
線形写像のスカラー倍に関する性質は今回の証明には用いていないため、例えばfが群準同型であっても同様に議論できる

(補足)
Kerの定義は、Ker(f)={x∈ℝ|f(x)=0}、要はfの像が0になるようなx∈ℝ全体の集合。

(補足)
単射の定義は、「f(x)=f(y)⇒x=y」である。証明の中では「f(x)=f(y)⇔x=y」としたが、「f(x)=f(y)⇐x=y」は写像の定義であるから"⇔"を用いた。

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