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x³+y³+z³-3xyzの因数分解part2【高校数学】

昨日もこの式の因数分解に関する投稿をしたが、この記事では昨日の手法よりもやや原始的で地道で、なおかつ汎用性の高い(つまりこの式でなくても同じような手順で因数分解できる)方法で計算する。

今回は「対称式は基本対称式で表される」の証明をなぞる手法で因数分解する。これは対称式の基本定理と呼ばれる(らしい)。

ちなみに昨日の記事はこちら↓。ぶっちゃけ読まなくてもいい。


本題の前に

対称式
対称式というのは、簡単に言えば「文字を入れ替えても値が変わらない多項式」。例えば、今回の式x³+y³+z³-3xyzは、xをyを入れ替えても

y³+x³+z³-3yxz = x³+y³+z³-3xyz

となり、式自体の値は変わらない。yとz、zとxを入れ替えても、当然、式自体の値は変わらないから、今回の式は対称式である。

基本対称式
基本対称式を厳密な定義を用いて説明するのは、僕もあなたもアンハッピーなので、ここでは2変数x,yと3変数x,y,zの基本対称式を明示するだけにしておく。
2変数x,yの基本対称式:x+y, xy
3変数x,y,zの基本対称式:x+y+z, xy+yz+zx, xyz

対称式の基本定理
この定理の主張は先でも述べたように

(n変数の)対称式は(n変数の)基本対称式で表せる

である。例えば、(x-y)²はよく考えなくても対称式だとわかるが、

(x-y)²=(x+y)²-4xy

と基本対称式x+y, xyであらわすことができる。

注意:この定理を利用すればどんな対称式も因数分解できるというわけではない。というか対称式によっては因数分解できないものもある。この定理は、因数分解できるとすでに分かっている対称式に対して、この定理の証明をなぞるように計算すれば因数分解しやすいような式に変形できるかもしれない、程度の利便性。

本題、因数分解する

対称式の基本定理の証明はwikiでは何通りかあるらしいが、今回は最もスタンダードな、辞書式順序による次数をつかう証明方法になぞって計算していく。

Step1 : F(x,y,z)=x³+y³+z³-3xyzとおく
それだけ。

Step2 : 基本対称式を使ってF(x,y,z)のx³の項を消去
具体的な手順は以下の通り;
G(x,y,z)=F(x,y,z)-(x+y+z)³とすると
G(x,y,z)=(x³+y³+z³-3xyz)-(x³+y³+z³+3x²y+3xy²+3y²z+3yz²+3z²x+3zx²+6xyz)
           =-3x²y-3xy²-3y²z-3yz²-3z²x-3zx²-9xyz
このようにして、目的の「x³の項を消去」することができた。ただその代わり-3xy²とか-3yz²とか、余計な項がいろいろ残ってしまったので次のStepではこの項の1つを消去することを考える。

Step3 : 基本対称式を使ってG(x,y,z)の-3x²yの項を消去
Step2と同様にして
H(x,y,z)=G(x,y,z)+3(xy+yz+zx)(x+y+z)とすると
H(x,y,z)=(計算式書くのだるいので略)
           =0
なんとG(x,y,z)の-3x²yの項を消そうと思って適当な基本対称式の積を加えたら、0になった。ラッキー。

Step4 : x³+y³+z³-3xyzを基本対称式であらわす
 x³+y³+z³-3xyz
=F(x,y,z)
=(x+y+z)³+G(x,y,z)
=(x+y+z)³-3(xy+yz+zx)(x+y+z)+H(x,y,z)
=(x+y+z)³-3(xy+yz+zx)(x+y+z)
=(x+y+z){(x+y+z)²-3(xy+yz+zx)}
=(x+y+z)(x²+y²+z²-xy-yz-zx)

まとめ的なもの

ぶっちゃけx³+y³+z³-3xyz程度の式にこの方法を適用するのはオーバースペックというか、蟻をミサイルで討つ感じな気もするが、もっと複雑な対称式の因数分解には有用かも。ちなみに、対称式の基本定理の、辞書式順序による次数を使った証明方法を記事にする気力はない。

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