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群論入門part10 準同型定理・同型定理

※part11は投稿しません。群論入門シリーズはpart10で終わりです。
※前回の記事はこちら
※いつか追記します

※正規部分群や準同型・同型といった、過去の記事で扱った概念は既知であるとする。

10.1.準同型定理

定理1(準同型定理)
2つの群G, G'と準同型φ:G→G'に対し、G/Kerφ≅Imφが成り立つ。

定理1を証明するために次の補題を考える。

補題1
写像ψ:G/Kerφ→G'を次のように定める;
N=Kerφとし、gN∈G/Nに対してψ(gN)=φ(g)
このとき写像ψは準同型である。

証明
gN,hN∈G/Nに対し、
ψ(gN)ψ(hN)=φ(g)φ(h)=φ(gh)=ψ(ghN)=ψ((gN)(hN)) ▢

定理1の証明
補題1の写像の終域をImφに限定した写像をψ'とする。
(注意:ψ'はψの微分ではない)
補題1から写像ψ'も準同型になることは明らかである。
つぎに、ψ'が全単射であることを示す。
(全射性)
ψ'の終域がImψ'になればよいから、Imφ=Imψ'を示せばよい。
・Imφ⊂Imψ'について
任意のg∈Gに対し、ψ(gN)=φ(g)となるため、φ(g)∈Imψ'が成り立つ
・Imφ⊃Imψ'について
G/Nの任意の元は、あるGの元g'を用いてg'Nと表されるため、
ψ'(g'N)=φ(g')∈Imφが成り立つ
(単射性)
Kerψ'={N}となることを示せばよい
e'を群G'の単位元とし、gN∈G/Nでψ'(gN)=e'となる元について、ψ'(gN)=φ(g)となるからφ(g)=e'。よってg∈Kerφ=Nとなるから、gN=N。以上からKerψ'={N}。▢


10.2.同型定理

定理2(第一同型定理)
群G,G'と全射準同型φ:G→G'、G'の正規部分群H'について、H=φ⁻¹(H')とすればG/H≅G'/H'が成り立つ。

証明
自然な準同型π:G'→G'/H'は全射であるから、合成写像π◦φ:G→G'/H'は全射準同型だとわかる。これより、Ker(π◦φ)=φ⁻¹(Kerπ)=φ⁻¹(H')=Hが成り立つので、定理1からG/H=G/Ker(π◦φ)≅G'/H'▢

問1
上の証明において次の事実を用いた。これを示せ;
「Ker(π◦φ)=φ⁻¹(Kerπ)」


定理3(第二同型定理)
群GとGの部分群H、Gの正規部分群Nに対し、HN/N≅H/H∩Nが成り立つ。

定理2を証明するために、次の補題を考える。

補題2
自然な準同型π:G→G/Nに対し、π(H)≅HN/Nが成り立つ。

証明
Step1:π(H)=π(HN)が成り立つ。
∵H⊂HNよりπ(H)⊂π(HN)が成り立つ。
また、π(HN)の任意の元はある元h∈H、n∈Nを用いてπ(hn)と表される。ここで、π(n)=nN=N、すなわちKerπ=Nであることを踏まえると、
π(hn)=π(h)π(n)=π(h)∈π(H)が成り立つ。よってπ(H)⊃π(HN)

Step2:写像πの定義域をHNに狭めた写像をπ'とすると、Kerπ'=Nである。
∵Kerπ'=HN∩Kerπ=HN∩N=N(最後の等式ではHN⊃Nであることを用いた)

Step3:π(H)≅HN/Nが成り立つ。
∵定理1から、HN/Kerπ'≅Imπ'が成り立つ。ここでStep1からImπ'=π(HN)=π(H)。Step2からKerπ'=N。以上からHN/N≅π(H)を得る。▢

問2
上の証明では次の事実は成り立つとして議論した。気になる人は示せ;
「H⊂HN⇒π(H)⊂π(HN)」

定理3の証明
自然な写像π:G→G/Nの定義域をHに狭めた写像をπ''とする。定理1から、H/Kerπ''≅Imπ''が成り立ち、Kerπ''=H∩Kerπ=H∩N、Imπ''=π(H)≅HN/Nとなるので、H/H∩N≅HN/N。▢


定理4(第三同型定理)
群Gとその正規部分群N,N'で、N⊂N'が成り立っているとき、(G/N)/(N'/N)≅(G/N')が成り立つ。

定理3を証明するために、次の補題を考える。

補題3
対応φ:G/N→G/N':gN→gN'はwell-definedな写像である。すなわち、g'∈gNに対し、φ(gN)=φ(g'N)が成り立つ。

証明
g'∈gNならば、ある元n∈Nを用いてg'=gnと表される。このとき、n∈N∈N'であることを思い出すと、φ(g'N)=φ(gnN)=gnN'=gN'=φ(gN)が成り立つ。▢

定理4の証明
写像φ:G/N→G/N':gN↦gN'が全射準同型であることを示す。
(準同型であること)
φ(gN)φ(g'N)=(gN')(g'N')=gg'N'=φ(gg'N)=φ((gN)(g'N))よりφは準同型
(全射性)
自然な準同型π:G→G/Nとπ':G→G/N'に対し、π'=φ◦πが成り立つ。これより、φ(G/N)=φ(π(G))=(φ◦π)(G)=π'(G)=G/N'となるため、φは全射。

以上から、定理1を適用すると(G/N)/(Kerφ)≅G/N'を得る。

Kerφを求める。φ(gN)=N'となる元gN∈G/Nについて、φ(gN)=gN'となるからgN'=N'。これよりg∈N'であればよい。よって、
Kerφ={gN|φ(gN)=N'}={gN|g∈N'}=N'/N。
したがって、(G/N)/(N'/N)≅G/N'が導かれた。▢

問3
上の証明について次の事実は成り立つとして議論した。気になる人は示せ;
「gN'=N'⇔g∈N'」

以上

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