ちょっとした感傷

夜の電車に乗っていると、高3のお正月を思い出す。
元日に祖父母宅に挨拶して、その夜一人で自宅に帰る電車。

第一志望の大学に受かったら、程近い祖父母宅に居候させてもらうことになっていた。

ああ、私は、受かったらこの電車に乗って行くのだな。結果次第で来られないかもしれないのだな。

と、暗い窓の向こうを眺めていた。
明かりが横に流れて綺麗だった。


まだ見ぬ未来の生活に思いを馳せたこと。
少しの不安を抱いたこと。
明日からの勉強、頑張ろう、と心の中で小さく自分を奮い立たせたこと。

感傷と共に思い出す。



大学の合格発表を、妹に手を握ってもらいながら見たこと。
自分の番号を見つけて泣いたこと。

うわぁ、懐かしい。


あの日と同じ電車に揺られていると、
まるであの冬からの出来事が全部夢だったみたいに感じる。
ひとつひとつ、出来事を思い返して、大丈夫、夢じゃない。と自分に言い聞かせて安心する。


目を開けて、あの夜と同じ真っ黒な窓の向こうを眺めている。

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