ものかきさんにちょうせんじょう

ならざきむつろさんの企画がとてもおもしろそうだったので、参加させていただきます。
企画詳細はこちら「ものかきさんにちょうせんじょう」!

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「じいちゃん、あった!すごいのあったよ!」 
森の中とは言え、暑い。首に巻いたタオルで額の汗を拭った私に、びくびくとしながらついてきていた都会育ちの孫の隼人が、突然元気良く声をかけてきた。 
「お?どれどれ」
 隼人の手元を覗き込むと、夏に相応しくない茶褐色の木の実がちょこんと収まっていた。 
「――のどんぐりかもな」
「え?なあに?」
 不思議そうに私を見つめる颯に、私は笑う。 
「それを庭に埋めてみな。夜には、空を覆うほどの立派な木になるかもしれないぞ」
 「うそ?!やった!」
 私の答えに、隼人はどんぐりを握りしめながらバンザイした。勢いが良すぎてふらついている。
 「おいおい、転ぶなよ」
 「うん!僕、お父さんに見せてくる!」
 隼人がそう言って駆け去っていくのを見送った私は、遠い夏の日の冒険を思い出していた。
何度も森を訪れたが、再び会うことはなかった生きものとの。
かさりと音がして隼人だろうと顔を上げると、目の前に傘を手にした銀鼠色の巨大な生きものがいた。
そいつはニッと歯を見せて、笑った。
「さて、どうしたものか」
 私は一人呟くと、再び首に巻いたタオルで額の汗を拭った。 

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たぶん500文字です。
反則技かもしれませんが…こんな「夏休み」は最高だぜ!

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