見出し画像

日本での民間分譲マンションの第一号とされる「四谷コーポラス」

1956年(昭和31年)竣工、日本での民間分譲マンションの第一号とされる「四谷コーポラス」(東京都新宿区)について

四谷コーポラスは「日本で初めて民間企業が販売した分譲マンション」とされる建物。1962年の区分所有法施行以前の建物で、所有形態の位置づけや共用部の管理責任などが明確ではなかった時代に初めて民間企業による運営管理がなされ、また住宅ローンが現在のように一般的でない中で割賦販売が導入されるなど、高額なマンションが庶民に普及するきっかけとなったと考えられている。5階建て28戸のマンションは当時珍しかったメゾネットタイプの間取りを採用。1階から入って1・2階を使う住戸や、4階から入って3・4階を使う住戸などがある、結果的に2・3階に玄関がないのが特徴だ。
四谷コーポラスでは、建て替え・大規模修繕等の検討会が2006年にスタート。その後東日本大震災をきっかけに耐震性能への不安が顕在化。建物の高経年化に伴う老朽化などの理由から建て替えを中心に検討されることとなり、決議が成立したという。

管理会社が管理する、規約的に管理するという2点においても歴史的な意義を持つマンション

「分譲マンションでは1953年(昭和28年)に分譲された宮益坂アパートメントがありますが、このアパートメントの売主は東京都。今の一般的な形態である民間の分譲会社が分譲するマンションでは四谷コーポラスが最初と言われています。2DKのアパートでの生活が夢だった時代に大きいもので80m2ほどの住まいがあったことはいわゆる高級マンションの第一号と言えると思いますし、日本の集合住宅の先駆けとなっていることは間違いないでしょう」と大木さん。
ソフト面も充実していたようだ。
「分譲会社が管理会社を子会社でつくったことも特徴で、管理会社で管理するという方法を採った最初のマンションかもしれません。またいわゆる管理規約もあったマンションで、内容も非常によく考えられたものでした。管理会社が管理する、規約的に管理するという2点においても歴史的な意義を持つマンションだと思います。管理規約でその時に出てきた文言、例えば『専有部分』という言葉が使われたのも四谷コーポラスが初めてかもしれません。このマンションが持つ歴史的意義を我々も検証しているところです」
設備面でも一歩進んだものが使用されていた。
「住戸の鍵がホテルの部屋のオートロックのように家を出たら勝手に締まる仕組みになっているんです。もちろん解除も可能です。ホテルでもそのようなことをやっていない時代に採用し、今でも使われていることが面白いと思います」(和田さん)

そのマンションの建て替え

建て替えをする場合、区分所有者それぞれに賛成か反対の意見を聞く必要がある。建て替えを希望する人としない人、再取得を希望する人と転出を希望する人。一言で建て替えといっても数多くの権利者の考えをまとめあげることの大変さは容易に想像がつく。
建て替えが決まった場合、同社ではまず権利者に再取得または転出の意思を確認し、1回目の個別面談で再取得希望者にはおおよそどのような間取りを希望するか確認を行う。2回目以降は何人で暮らすのか、どれぐらいの広さを希望するかなど、具体的な話を詰めていく。
「40m2台、50m2台、60m2台を希望する方が何人いるかなど、それぞれの方のご希望をお聞きし、調整を行いながらご希望より多い数の間取りを用意します。しかし、建て替えには大きな労力が必要ですから、どうしても目の前にある課題しか見えなくなってしまう方もいらっしゃいます。例えば当初40m2台を希望されていた方が後に『子どもたちと一緒に住むことになったので80m2欲しい』などということはしばしば起こりうる話です。お断りすることもひとつの選択肢ですが、全体のスケジュールの中で調整できるのであれば極力対応するように心がけています」(大木さん)
今回の四谷コーポラスの建て替えでは、51戸に対して41タイプの部屋を用意したという。
「共同住宅には色々なしがらみがありますが、その中でも可能な限り権利者様のご要望を採り入れることで、ものすごくエネルギーが必要な建て替えを、プランづくりや家具選びなどを通して少しでも楽しんでいただきたいと考えています。今回数多くのプランをご用意しましたが、これだけの数のプランをつくったのは記憶にないですね。その分手間がかかりますが、ご満足いただけると思いますし、仕事の喜びにもつながっています」(和田さん)

出典:ライフルホームズプレス

四谷

写真:案内標識

民間分譲で最古の物件ですが、2019年建て替えされたようです。分譲会社が管理会社を子会社でつくったのも初めてで歴史的な物件のようです。事業を請け負った旭化成不動産レジデンス株式会社は最古の分譲マンション宮益坂アパートメントも建て替え工事をしているところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?