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「変動金利」で住宅ローンを組んだ人
変動金利型ローン利用者が80%を超えたという、これから金利は上がるのに大丈夫?
マイホームの取得に当たっては、できるだけリスクの少ない形での購入を考えたい。資金繰りも無理せずに、ゆとりある返済計画で取得するのが大原則だが、住宅ローンの金利タイプについても注意が必要だ。
住宅ローンには、利用できる金利水準は低いものの、借入後に市中の金利が上がると、適用金利が上がって返済額が増える「変動金利型」と、金利はやや高いものの、一定期間、あるいは完済まで金利が変わらず、返済額も増えない「固定金利期間選択型」、全期間固定金利型などの「固定金利型」がある。
いうまでもなく、コロナ禍のような先行き不透明の時代には、できるだけリスクを小さくしておきたいので固定金利型の利用が望ましいのだが、現実にはそうではない。
19年度には変動金利型は66.4%だったのが、20年度には73.8%に増え、21年度にはついに82.1%と80%台の大台に乗せた。
なぜ、こんなに急速に変動金利型の利用者が増えたのか。
その最大の理由が金利の低さにあるのは、間違いない。なかなか収入が増えないだけに、支出について敏感になっており、少しでも金利が低く、返済額が少なくてすむローンを希望する人が多いのだろう。
しかも、景気低迷が長引いているため、当分の間低金利政策を継続せざるを得ず、変動金利型ローンの金利が上がるリスクは極めて小さいと考える人が多いのではないかとみられる。
実際、変動金利型を利用した人では、「現在の金利が低いから」という理由が67.0%のトップで、次いで、「今後も金利はそれほど上昇しないと思ったから」(57.7%)、「金利が上昇しても全体の支払額は固定金利より有利だと思ったから」(46.3%)が続いている。
年間で20万円近い差が生じることも…
実際のところ、変動金利型はどれほど金利が低く、負担が軽減されるのか、メガバンクの例でみるとこのようになっている。
借入額3000万円の場合、変動金利型の金利0.375%だと毎月返済額は7万6229円で、年間約91万円だが、全期間固定金利型の1.08%だと毎月8万5808円と1万円近く増加し、年間返済額は約103万円と100万円を超えてしまう。
当たり前だが、借入額が大きくなるとその差は拡大する。借入額5000万円のケースだが、年間負担額でみると、変動金利型は約152万円に対して、全期間固定金利型は約171万円だから20万円近い差になってしまう。これだけの差があれば、変動金利型を利用したくなるのが人情というものだろう。
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金利タイプ別の返済負担の違い(1)
設定条件:借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
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金利タイプ
金利
毎月返済額
年間返済額
変動金利型
0.375%
7万6229円
91万4748円
固定金利期間選択型
0.65%
7万9880円
95万8560円
全期間固定金利型
1.08%
8万5808円
102万9696円
※金利はみずほ銀行の2021年12月の最優遇金利
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金利タイプ別の返済負担の違い(2)
設定条件:借入額5000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
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金利タイプ
金利
毎月返済額
年間返済額
変動金利型
0.375%
12万7049円
152万4588円
固定金利期間選択型
0.65%
13万3134円
159万7608円
全期間固定金利型
1.08%
14万2310円
170万7720円
※金利はみずほ銀行の2021年12月の最優遇金利
金利上昇で、返済の負担が重くなる
しかし、この差がいつまでも続くとは限らない。
借入後の金融情勢によっては、関係が逆転することもあり得る。
これは、変動金利型を利用して、5年後に金利が上がった場合に、返済額がどうなるのかを試算したものだ。
借入額3000万円の場合、5年後に金利が1%上がると毎月返済額は8万8015円。全期間固定金利型は8万5808円のままで変わらないので、変動金利型の返済額の方が大きくなってしまう。年間返済額も当初より約14万円の増加。さらに、1.5%のアップだと約22万円の増加になる。5000万円だとそれぞれ約24万円、約36万円の増加だ。
コロナ禍で年収がなかなか増えない状況であり、かつさまざまな物価の上昇が続くなか、この負担増に耐えられるのかといえば、決して簡単ではないだろう。
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変動金利型の金利上昇による返済額の変化(1)
設定条件:借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
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5年後の金利
毎月返済額
年間返済額
年間返済額の差
0.375%
7万6229円
91万4748円
――
0.875%
8万1988円
98万3856円
+6万9108円
1.375%
8万8015円
105万6180円
+14万1432円
1.875%
9万4307円
113万1684円
+21万6936円
2.375%
9万5286円
10万861円
114万3432円
121万332円
+22万8684円
+29万5584円
※2.375%の下段は25%ルールがなかった場合の試算値
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変動金利型の金利上昇による返済額の変化(2)
設定条件:借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
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5年後の金利
毎月返済額
年間返済額
年間返済額の差
0.375%
12万7049円
152万4588円
――
0.875%
13万6647円
163万9764円
+11万5176円
1.375%
14万6692円
176万304円
+23万5716円
1.875%
15万7179円
188万6148円
+36万1560円
2.375%
15万8811円
16万8102円
190万5732円
201万7224円
+38万1144円
+49万2636円
※2.375%の下段は25%ルールがなかった場合の試算値
返済しても元金が減らず、むしろ増える「悪夢」
それだけではない。金利が3%近く上がると、“未払い利息”が発生してしまう。
未払い利息というのは、金利上昇によって毎月の利息負担が返済額を上回り、未払いの利息が残ってしまう状態を意味する。約定通りに返済しても、元金は減らずに、未払い利息が積もって、むしろ残高が増えてしまうという恐ろしい事態だ。
図表8にあるように、借入額5000万円、金利0.375%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は12万7049円。このローンで3年後、36回目の返済後のローン残高は約4597万円だ。
この段階で金利が3.0%上がって3.375%になっていると、利息は、
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4596万6701円×0.03375(3.375%)÷12か月
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で12万9281円になる。
変動金利型ローンの当初5年間の毎月返済額は変わらないので12万7049円のままだから、毎月返済額では利息分に2232円足りず、元金はまったく減らないことになる。ここの2232円が未払い利息であり、これが毎月溜まっていって、元金が減るどころか、逆に増えてしまうわけだ。
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3年目に金利が3.375%に上がった場合の未払い利息
設定条件:借入額5000万円、当初金利0.375%、35年元利均等・ボーナス返済なし
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返済回数
毎月返済額
利息分
元金分
返済後残高
1
12万7049円
1万5590円
11万1459円
4977万7116円
2
12万7049円
1万5555円
11万1494円
4966万5621円
3
12万7049円
1万5520円
11万1529円
4955万4092円
…
36
12万7049円
1万4399円
11万2650円
4596万6701円
…
37
12万7049円
12万9281円
▲2232円
4596万6701円
38
12万7049円
12万9281円
▲2232円
4596万6701円
…
12万7049円
12万9281円
▲2232円
4596万6701円
「未払い利息」が発生する基準
この未払い利息が発生する金利水準の計算は、
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毎月返済額÷ローン残高×12か月
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になる。この場合には、
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12万7049円÷4596万6701円×12か月≒0.03316
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だから、3.316%がボーダーラインということ。これを超えると未払い利息が発生することになる。
現在のような経済環境では、ここまで急激な金利上昇は考えにくいとはいえ、一旦上昇が始まると大きく動くのが金利だ。少なくとも変動金利型住宅ローンには、こんな恐ろしい事態もありえることは理解した上で、心して利用したいものだ。
出典:現代ビジネス
来年はテーパリングが本格化し、金利は上がる年になりそうです。変動金利は当然上がることが予想されています。変動金利のリスクを十分考えて住宅ローンは組みましょう。
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