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日常

日常、とその出来事に対して直感的にタイトルをまず書いて、ほんの些細な事どもが変わっていく(失われていく)ことなのかとギョッとした。

着るものに頓着しなくなってゆく

目が悪くなって、服に付いた汚れがわからないんだろうか?
メモ魔の姑の衣類はどれもボールペンのインクがたくさん付いていた。蓋をしない、或いはノック式のボールペンの芯が出たまま握ったペンを振り回すので、衣服にインクが付いてしまうのだ。
あまりに汚いので、今でもコッソリ我が家に持ち帰っては洗濯して返している。

姑は徐々に洗濯する頻度が減っている。
毎日着るシャツは前日脱いだものをその辺に掛けて、翌日また着る。曰く「汚れてないから」
あまり体臭のない姑の衣類は、確かに汗を吸ったような異臭はしない。それでも人が生きている限り体表から剥がれるヒトの残滓が少しずつでも衣類に移っていくだろう。それよりも前述のボールペンのようなはっきりとわかる汚れがあるのだ。何故、洗わないんだろう。

そういうわけで、姑は「毎日同じものを着ている」。
高齢者あるあるなんだそうだ。
服を選ぶのが億劫なのか、「そこに服があるから」状態なのかはわからないが、一旦、お気に入りの服が出来ると、汚れていようと毎日その服を着る。

それまでの服装を、私は実はあまり気にかけてあげていなかった。気になるほどではなかったので、それなりに着替えていたのだろう。しかし、昨年の夏からその状態が続くようになってきたのだ。

さすがに連日同じ服ばかり着るようになったため、次のお気に入りの服で興味を逸らせばいいのか?と別の服をプレゼントしてみたが、今度はその服を着続けるだけで事態は改善出来なかった💧
「お気に入りの服がたくさん出来たので、毎日日替わりでお着替え」作戦は失敗。

次に「同じ服を2枚用意して本人の気づかないうちに取り替え」作戦を思いついた。
これも、いつ新しい同じ服にすり替えるのかが悩ましい。基本的にチャンスは寝る前の脱いだ時だけ。同居ではないので、入浴時や就寝後に忍んでいかなくてはならない。
私の時間的な負担が大き過ぎて、なかなか決行に移せないでいた。

ケアマネさんに愚痴っぽく、いつも同じ服ばかり着ていることをこぼしたところ、デイサービスで入浴時に服を取り替えてもらうことを提案していただいた。
本来は着替えや使用するタオルはこちらで用意して回収するのだが、費用(一回¥100)を払ってタオルや衣類の洗濯・保管をお願いできるのだ。願ってもないことで、早速お願いする事にした。これで当面の問題は解決した、と安心したのも束の間…。

「最近、お母様の下着が汚れてます」

まさかパンツまで同じものを穿き続けていたとは。
最近、尿意を感じる前にトイレに行くことを促してたおかげかトイレの失敗は少なくなってきたようなのだが、トイレを失敗すれば穿き替えていたパンツも、失敗しなければ取り替えることもないのだ。

パンツは盲点だったが、肌着(というかシュミーズ)も同じものを着続けているのだ。非常に気に入ってるようなので、ズボンの時もいつも着ていて長い裾をウエストに捩じ込んで着る不自然さも、まあしょうがないと看過してたのだが…。肌着がそれならパンツも同様と何故気付かなかったか。
さすがにパンツが汚れていれば洗うだろう、と勝手に思い込んでいた。

お気に入りシャツを洗ってもらう時にパンツも洗ってもらうよう、デイサービスに着替えのパンツを届ける。
少しずつ変わっていく日常。
「決して良くなる事はありません」
最初にケアマネさんから言われた言葉を思い出す。
良くなる事はなくても、本人にとっての最善をしっかり支えていくのが介護(それを施設や行政に私達家族が支えられているのだが)。まあ深刻になっても仕方ない。本人がなるべく笑顔でいられることの方が大切だ。その方が私も安心できる。

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