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通り過ぎる

姑は元々方向音痴だと度々主張してるので、必ずしも今の状態の問題ではないかもしれない。

と、思ってた。

三浦海岸からの帰路、電車は三浦からどんどん遠ざかっていく。姑は「今、電車は家に向かっているんでしょう?駅の名前(※駅名標)見たらわかる。でも頭の中の感覚では反対側に向かってるような気がしてしまうの」と言う。

動いてる電車の中で、さっき出発した駅に向かって行くような感覚がするということらしい。

久里浜に到着し、また発車した。

「あ、今わかった。感覚が変わって(三浦から久里浜に)向かってるのがわかった。でもまだ(三浦に)向かってる気がする」

同じことを、次の停車駅以降でも繰り返し言った。

「駅名を見るとわかるんだけど、頭が悪くなったからね、どうしてもそう感じてしまう。私は若いころから酷い方向音痴で反対の方に行ってしまって」

本人は笑い話のつもりでそう話すのだが、私は苦笑して「大丈夫ですよ!」となんのフォローになるのかわからない受け答えをしてしまう。…若いころからなら、今の状態とは関係ないんじゃないかな、とは言えない。

駅名を見ると一時的に感覚がリセットされるらしい。駅名という文字情報が示されると、三浦からそこに来た、とわかるのか?しかし、通り過ぎてしまうとわからなくなる。

ちょっと考えてみる。

数十秒どころか、一瞬で直前の事を忘れてしまうのは短期記憶に障害があるからで、今しがた納得したことも無かったことになってしまうようなのだ。「今、横浜を通り過ぎて家の方に向かってる」と説明しても、何の脈絡もなくいきなりそう力説されてるように感じてしまうんだろう。

「おじいちゃん今ごはん食べたでしょう?」のようなことは言うまいと思ってたのに、これだ…。

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