往転@本多劇場

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久しぶりの下北沢、久しぶりの下北沢で、頭に入っていたはずの駅から本多劇場への道も Google Map がないと辿り着かない始末。
本多劇場はいつ以来なのかと調べてみたら、2011年の「アイドル、かくの如し」以来であった。もう9年も前じゃないですか。

コロナの影響もあってか、客の入りは7割くらい?私の隣の席も空席であった。
この芝居がかかることは小島聖のインスタで知っていて、「へー」と眺めていただけでチケットを取るまでには至らなかったのだけれど、2/27の朝日新聞に好意的な舞台評が出て、急に見たくなり慌ててチケットを取った。2/27時点で2/29の席は昼夜まだあって、それ以外の回はすべて販売終了だった。ラッキー。
コロナのことなんてころりと忘れてチケットを取った自分はどこまで呑気なんだろうと思うけど、それはそれこれはこれ。

さて「往転」だけど、2/29 18時の回を見てきた。大絶賛とまではいかないけれど、心の琴線に触れる良いお芝居だったと思う。
なんといっても主役の峯村リエ、入江雅人の中年カップルが良いのである。入江雅人演じる吾郎はどこか頼りないけど、峯村リエ演じる宣子に対して常に優しい。その優しさの裏にある狡さに気付いていながら、宣子も吾郎を責めない。ふたりに未来はないけれど、ひとりでは立っていられないからふたりでいる。足腰も弱くなり、ふたりで抱き合うことだってかなわないけれど、人生でもしかしたら一番つらい時期にふたりでいれたことは、ひとつの救いだったかもしれない。
事故の後、吾郎は家に帰らない。彼女の遺骨を散骨したということは宣子を見送ったのだろうから、彼女の最後に彼は寄り添ったのだ。
吾郎の最後の誠実さに私は泣いた。涙がこぼれたお芝居は初めてで、もしかしたら年を取ったせいかもしれないけれど、吾郎の優しさが私の胸にしみた。

小島聖にも触れたい。私はこの人の舞台を見続けた時期があったのだけれど、2007年の「欲望という名の電車」を最後にこの人の舞台を見ていなかった。理由は特にない。そもそも観劇から少し離れていた、という方が正確。相変わらず瑞々しい芝居をしていた。

音楽もよかったなぁ。2011年版は誰が演じていたのだろうと調べてみたら、峯村リエが何と遠藤照美役で出ていた。そのほかの演者も今回とだいぶ雰囲気が違うから、また全然違ったお芝居だったんだろうなー。

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