第32回「小説でもどうぞ」応募作品:nullの臓器
第32回「小説でもどうぞ」の応募作品です。
テーマは「選択」です。
個人的にはお気に入りの出来なのですが、安定の落選です。
なかなか難しいですね。
nullの臓器
ドナーカードの項目すべてにチェックを入れる。死んだあと、僕にとっては自分の内蔵など無用のものだからだ。
「ずいぶんとためらいがないんだね」
僕の話を聞いて、妻が少しだけ悲しそうな顔をする。その妻に、僕は当然のように微笑んで返す。
「当然だよ。死んだら無用のものっていうのもあるし、僕は仮にも医者だ。僕の臓器で