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【二月二十六日】吉川英治記念館にて
もう咲き頃かと思った吉野の梅は
まだ一分咲きといったところ
虫たちが冬眠から醒めないから
梅も春の暖かさを感じていないのか
諦めて街道を引き返そうとした時
英治先生に呼び止められた
「お茶でも飲んでいきなさい」
書斎の前には大きな椎の木があって
夫人が木の下でお茶を点てていた
筆を絶たれてからの生活は
村民たちとお気楽なご様子
自分が良かれと思うことも
他人は悪しとするかも知れない
自分で自分を下すことは
一生かかっても難しいこと
だから誰かに支えられている
時に褒められ、時に叱られ、
時に笑われ、時に泣かされる
「我以外皆我師」と熱く語る先生に
お茶が冷めたことを言えなかった
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