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創作

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2020年9月の記事一覧

ForgetMeNot

夕立ち。静かな湖畔。サーーーーーー。 雨粒が水面を打つ。波紋が広がる。水面を行くアメンボを困らせる。 彼は水中を見たことがあるだろうか。足元のその先に広がる世界を。 雨と水面の響き合うハーモニーに、Jは聞き入っている。 ガラガラ声で、これに混じろうとしたあいつは、 さっき小枝で突っついておいた。そして一言助言を。 「ここは君の歌と詞を喜びとする者の世界ではない。 歓迎されたければ、よそへ。kita riverという川。 あそこはきっと君も気にいるだろう。」 そう話すと、あ

見えるもの

花火

ぽうっぽうっとあたたかい 花火に照らされた彼女を見ていた 鴨川の草の上にしゃがんでいた 赤やオレンジや白や、青や緑 生まれたばかりの光が咲いて散る 瞬間のうちに僕らの心にまぎれ入ってき まぎれた途端に死ぬ 豊かな水源のそばにいて、渇きと潤いを繰り返す さざなみのような波動が残される 花火が消えているとき 僕らは何を見ていても自由だった お互いの自由があった 君は、そのとき僕を見ていた 僕は、光があったところをずっと見ていた

カタログ(十字架)

アカムちゃん(墨)

治療中の人面X

努力家で筋肉質なカメさんと肥えたウサギ

カタログ(眼)

隠しきれなかった知恵

ゆらゆら

タバコをふかして レコード聴いて 私の知らない世界へ あなたは行くわ いつか一緒に連れて行ってくれるのかしら 相槌の正体が居眠りだとわかって 張り合いがないでしょう 水面に映る私なら 何度だって壊して あなたが目を離している隙に ほら元通りよ あなたと別れて残るのは 服についたタバコの匂い ゆらゆら ぜんぶ ぜんぶ ぜんぶ ゆらゆらしてるわ

ヴェネツィアの物語(を書く)

ヴェネツィアを舞台にした美しい物語が書きたいと思った なぜなら、僕はこの都市の美しさに心底惚れてしまい、何度も訪れるうちに こう思い至ったからだ ”自分の心の奥底に、小さくてもいいから、 ヴェネツィアのコピーがひっそりとあってくれたら、 いつだってたっぷりとその美しさに浸ることができるじゃないか” 地図を広げて、物語を書く 何でもいい 心に浮かぶままに 夜に、暗い路地で聞いたバイオリンの音色 これは外せない要素のひとつ 夜に、人気の無い路地をひとり、ぶらぶらしていた