何者

朝が怖い。目覚めたら一日が始まってしまう。私は清々しい朝もおはようの挨拶も求めていなくて、ただ永遠に続く夜が欲しいだけだ。光なんて月で十分で、太陽なんていらない。夜のあのなめらかな濃紺に溶け込んで、そのまま消えてしまいたかった。毎日楽しい夢を見る。街中に立つガラス張りの広い部屋で踊ったり、秘密基地を作ったり、おいしいご飯をたくさん食べたり、とても楽しい夢。醒めたら現実。こんな憂鬱な世界で夢など見たくない。現実がこんなものなら、最初から楽しいなんて気持ち知らなければいいのに。知ってしまったから、私はかなしくなってしまう。私は何者か?私の身体が本体か、今思考をしているこの脳が本体か、頭の中で喋り続けるこの声が本体か、分からない、分かりたくない、考えたくない。きっと何者にもなれない私は、おとなになってもブロイラーの中で泣いている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?