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目覚ましの音で目が覚めた。最大音量に設定しているから耳が痛い。やりたいことがあったから早い時間に目覚ましをかけたはずだが、何がやりたかったのか忘れてしまった。また目を閉じる。

2度目の目覚め。嫌な汗をかいた。寒くなってきたとはいえ、厚い布団を被って寝るのはまだ早いらしい。ゆっくりベッドから抜け出し、顔を洗う。タオルをかけるスタンドを倒してしまって、がたん、と音が響いた。朝ごはん、と言える時間でもなかったが、小さなパンをひとつとヨーグルトを食べた。

読みたい本も読む気になれない。お菓子の箱やコップが散乱した部屋を見てため息をつく。片付けはどうも苦手だった。脱ぎ捨てた服をまとめ、放置していたバンドスコアは本棚にしまった。掃除機の赤いランプが点滅していた。特に詳しくもないゲームのキャラクターが窓際で笑っている。

コメディ映画を見た。ここ最近ずっとホラー物ばかりだったから、気分転換だ。氷を入れすぎたカフェラテとキャラメルポップコーンを横に置いて、イヤホンをつける。家でも映画館でも、映画を見る時はいつもキャラメルポップコーンを食べる。ただ、家では咀嚼音を気にしなくていいので30分ほどで全部食べ終えてしまうから、残りの1時間半は「もう少しゆっくり食べたら良かった」と後悔するのだ。カフェラテが入ったコップが汗を滴らせる。

布団に潜って携帯を眺める。ここ数ヶ月、あまりYouTubeを見なくなった。あの賑やかな効果音や本心でない自虐が受け入れられなくなった。LINEは返すのが億劫で開けないし、インスタは同級生のキラキラしたストーリーが目障りで開けない。友人に誘われた位置情報共有アプリも、他人と位置を共有する意味が理解できなくて断ってしまった。Twitterでは今日も人が死んでいく。悲しくなってスクリーンタイムを開いたら、もっと悲しくなって考えるのをやめた。

もうこんな時間か、と時計を見て驚いた。こんなはずじゃなかったのに、また今日も特に何もせずに過ごしてしまった。平日は五日間ずっと土曜と日曜だけを待ち望んで這っているのに、いざ迎えると瞬きよりも一瞬で終わってしまう。私は何かがしたくて休日を求めているのではなく、何もしたくなくて、何もしなくても許される日を求めているのだろうか。つまらない人生ならやめてしまった方が賢いのだろうが、そんな勇気もなかった。死にたい死にたいと言うだけ言っておいて、本当に死んだ人間を見て一丁前に泣くのだ。くだらない、自分が一番死ぬべきだ、と思う。

かわいい服は箪笥の中、綺麗なアクセサリーは引き出しの中、集めたCDは部屋の隅、埃を被った漫画は棚の上、開きたくもない教科書は机の上、見たくもない成績表は頭にこびりついている。こんなはずじゃなかった。

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