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昇り降りと跳び跳びの値:量子力学:角運動量

前回までで,量子力学の角運動量は回転の無限小生成子として導入したものの,その交換関係が0でないことから,状態として同時に決められるのが"J^2"と"J_z"の二つであることがわかった.

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古典的には矢印の形で決められた角運動量は,量子力学では長さと一成分しか決められないのだ.


今回は角運動量固有状態の固有値について見ていこう.

とりあえずおもむろに,次のような固有状態

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と,昇降演算子を考える.

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昇降演算子のその心は,"J_z"の固有値を一つ上げ下げするのだ.

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となると疑問に思うのは,これを何回も何回も作用させた時だ."J_z"の固有値"m"はどんな値でも取れるのだろうか.

そんなことはない.

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量子力学の状態ベクトルが長さが0以上の数にならなければならない条件から, "J_z"の固有値"m"には最大値"m_+"と最小値"m_-"がある.

その最大値,最小値が存在すること,最大/最小状態はそれ以上上げよう/下げようとすると0にならなければならない.

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そのことを使うと,最大値と最小値は絶対値が同じ符号が逆であることがわかる.また,昇降演算子は固有値が1しか変わらないこと,最大/最小値に作用させると消えることから,"λ"の値もわかって,

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なんと角運動量の大きさは半整数,0または整数/2になるのだ.


これは,調和振動子でもあった,量子力学特有の性質だ.固有状態の規格化可能性を課すと固有値が跳び跳びの値になるのだ.

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