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ジョグジャカルタ思い出し日記|西田有里

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インドネシアの民族音楽ガムランの奏者であり伝統芸能ワヤンの活動を行う西田有里が2000年代終わりに過ごしたジョグジャカルタでの日常を綴る。路地裏にあった家とそこに住む人々との可笑…
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#日記

ジョグジャカルタ思い出し日記⑧|西田有里

屋台のインスタントラーメンと家の冷蔵庫  ジョグジャカルタの街中には軽食や飲み物を出してくれるアンクリンガンと呼ばれる屋台がたくさんあることは以前にも触れたけど、マタラム通りの道端にはアンクリンガンがいくつも営業していた。だいたいどこも似たようなサービスのお店ではあるけれど、営業時間が違ったりメニューが違ったりとそれぞれにちょっとした特徴があって、似たような店が目と鼻の先にいくつもあるにも関わらず競争が激化することもなく、それぞれにうまく棲み分けられているようだった。 ルジ

ジョグジャカルタ思い出し日記⑦|西田有里

ドリアン  1年を通して夏のように暑いジョグジャカルタでも季節の変化を感じられるものがあって、その一つが果物だ。それぞれの果物の旬をはっきり把握している訳ではないけど、マンゴーやランブータンやドゥクやサラック(サラカヤシ)など、旬の頃になればあちこちの通りの道端でいっせいに売られているのを見かけるようになって、あ、マンゴーの季節になった!、などと感じることができる。  中でもちょっと特別なのはドリアンである。強烈な匂いが有名で日本ではあまり評判のよくない果物だけど、ジョグジ

ジョグジャカルタ思い出し日記⑥|西田有里

来客 ルジャールじいさんの家は毎日とにかく来客がとても多かった。観光地としても有名なマリオボロ通りから歩いてすぐという便利な立地のせいもあるだろうし、ルジャールじいさんがワヤン人形作家としての仕事が絶好調な時期だったということもあるだろうが、何より誰に対しても気さくなルジャールじいさんの人柄もあるのだろう。  仕事関係でやってくる人は、ワヤンを注文するお客さん、ワヤンの材料を持ってきてくれる業者の人や作業を手伝ってくれている職人さん、メディアの取材の人、イベントの打ち合わせ

ジョグジャカルタ思い出し日記②|西田有里

お茶  ナナンのおじいさんであるルジャールじいさんは、影絵芝居ワヤンの人形を作る作家だ。影絵芝居ワヤンの人形は、水牛の皮でできていて、一つの人形が出来上がるまでには材料の皮の加工・透かし彫り・彩色など様々な工程があるが、ルジャールじいさんは影絵人形のデザイン画作成と、出来上がった人形への彩色の工程を家で行っている。地元ではなかなかの有名人で、外国からの注文も多く、オランダの歴史上の人物とか、オバマ大統領とか、動物とか部屋にはいろいろな作りかけの影絵人形がぶら下がっている。2

ジョグジャカルタ思い出し日記①|西田有里

はじめにはじめまして。西田有里と申します。現在、インドネシア人の夫とともに、大阪を拠点にインドネシアの伝統芸能である影絵芝居ワヤンに関わる活動を行っています。 私は2007年~2010年にインドネシアのジョグジャカルタという町の芸術大学に留学し、ジャワの伝統音楽ガムランを学びました。留学中は大学の授業の他にも伝統芸能の実践の場に参加する機会を頂き貴重な経験をたくさんしましたが、留学期間の後半は大学近くに借りていた下宿よりも今の夫が祖父母と暮らしていた家で長い時間を過ごすよう