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歯石取りはしないとダメ?血が出るのはどうしてなのか、【現役歯科衛生士】が答えます!

歯医者さんで歯石取りをしてもらったら、「痛い」「血まみれ」「しみる」といった経験はありませんか?特に口をゆすいだらまっ赤な水が出たなんて、びっくりしますよね。
歯ぐきから血が出るのは、歯石取りで傷ついたからではなく、歯ぐきが炎症を起こしているからなのです!
歯石を取らないとどんどん汚れがたまり、慢性的な炎症につながります。そして待っているのは、大切な歯を失う未来…。
この記事では、歯石を取らないと歯を失うリスクについて分かりやすく説明します!

Q1、歯石取りって何?

歯の表面についた歯垢(プラーク)が固くなったものを歯石と呼びます。歯石は表面がざらざらしているので、新たなプラークがくっつきやすくなります。プラークは歯ブラシで落とせますが、歯石は固くて落とせません。

出会ったが最後、逃れられない

そこで登場するのが、歯医者さんの超音波スケーラーやキュレットと呼ばれるお掃除道具です。
超音波スケーラーとは分かりやすくいうと、振動で歯石を砕く機械です。キーンって音がして嫌だとおっしゃる方も多いですが、効率よく歯石を落とせるのがメリット。
壁のように蓄積された歯石をお持ちの患者さんに出会うと、とっても楽しいです笑
次がキュレットスケーラー。こちらは手でガリガリやる器具です。歯ぐきの中に入れることがほとんどなので、より高度な技術が求められます。

戦う準備はできている

「歯が削れたりしないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、それはありえません。歯の硬さは人間の体の中で1番硬いのです。
虫歯で歯を削る時に使うチューンっていう機械の先端は、実はダイアモンドの粒子でコーティングされている武装。それを高速回転させないと歯に対抗できないのです。
歯石取りに使う器具にはそんな武装はありませんので、安心してください!

Q2、どうして歯石取りで回数がまちまちなの?

これは簡単。歯石の付着具合と歯周病の進行具合、それから保険の事情です。
歯石取りを保険でやるには、【歯周病治療】という前提で行わないといけないからです。
①歯周病検査→②歯石取り→③歯周病検査
これが1連の流れです。①と②はセットで行うことができますが、③は期間を空けないと国から怒られます。
ちなみに②の歯石取りに関しては、量が多くて1回じゃ無理!というケースと、病院の方針の②パターンがあります。
そして、③で歯周病の進行が悪かった場合、今度はさらに歯ぐきの中のお掃除をします。ここで登場するのがキュレットです。
あまりに歯周病が進行していると、麻酔をしてから行うケースが多いです。なぜなら痛いから。歯石取り=クリーニングと思われがちですが、れっきとした医療行為です。

国民保険は世界に誇れる制度

綺麗にしたいだけなら、自由診療でツルピカにしてもらいましょう。お値段ピンキリですが、満足いく結果が即日得られます。

話は戻りますが、③歯周病検査→④SRP(キュレットで歯ぐきの中までお掃除)の④がくせ者です。こちらに関しては1回でできる本数に限りがあります。こちらも保険の事情。頑張って通院してください。

Q3、どうして血が出るの?

それはひと言でいえば「歯ぐきが炎症しているから」です。常に歯石というプラークホイホイがあるせいで、歯ぐきにプラークが触れていることになります。
ちなみにプラークは食べカスなんかではなく細菌のかたまり!そんなものが歯ぐきに24時間365日くっついていれば、転んで怪我をした部分がジュクジュクしている状態が続いているようなものです。
口の中で常に炎症状態が続いているのに、その毒素が出る入り口を歯石が塞いでいたら、どうしようもありませんよね。その歯石のふたを取り除けば出血(with毒素)するのは当然です。

出血は軽視しちゃダメ

歯周病の怖いところ

歯周病という言葉が認知されて以降、企業が手を変え品を変え、さまざまな歯ブラシやケア用品を世に出してくれたおかげで、意識レベルも急上昇。でも実際、「歯周病って何?そんなに怖いもの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
日本臨床歯周病学会では、歯周病についてもう少し細く説明されていますが、正直難しいので、ここでは噛み砕いて解像度を落として分かりやすく説明していきます。

プラークは細菌の塊だと述べましたが、口の中で炎症を起こしているということは、その中の毒素が血管を伝って全身にまわるリスクに常にさらされているということです。
全身に回るということは、糖尿病や早産のリスク、脳梗塞に心筋梗塞etc.と、それはもうリスクが爆上がりするのです。
特に高齢者の方に声を大にして言いたいのが、誤嚥性肺炎
食べ物や唾液が気道に入ることがきっかけになって、主に口の中の細菌が肺に入り込んで起こる肺炎を言います。
厚生労働省の令和4年の統計によると高齢者の死因6位です。3.6%と数値としては低いですが、令和6年の国立大学法人浜松医科大学の研究結果だでは、誤嚥性肺炎で入院した高齢者の退院後の生存期間中央値は、なんと約 1年だそうです。
これは軽視できない数値です。

4、まとめ

結論として、歯石は取らないとダメです!「また歯ぐきから血が出てる〜痛くないし大丈夫」なんて楽観視してはいけません。基礎疾患がなくても若くても、炎症を放置していいことなんて1%もないのです。
まずは歯医者さんに電話をして予約を取って、歯周病検査をしてもらいましょう。むし歯も怖いですが、歯を失うリスクは圧倒的に歯周病が原因です。車の車検のように、しっかりメンテナンスをして1本でも多く自分の歯を残しましょう!

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