年がら年中「苺のケーキ」がショーケースに並ぶ、不思議の国ニッポン
幾つの時だったかははっきりとは覚えていませんが、子供の頃初めて食べた生クリームと苺のケーキのびっくりするほど美味しかったことは、いまだに鮮烈な印象として残っています。
まあ、たまたまケーキ屋の息子に生まれたおかげで、食べられたのかと思いますが、とにかく美味しかった。
苺のショートケーキは日本独特のケーキで、その発案者は不二家の創業者とされています。この歴史まで語り出すと長くなっちゃうんで、興味のある方は「不二家・ショートケーキの歴史」くらいで検索してみてください。
その始まりは1958年と言われているので、ワタシが2歳の頃ということになります。たまたま先代の父親が不二家出身からの独立を果たしていたので、いち早くこれを食べられたのかもしれませんね。
*画像・不二家HPより
実はショートケーキがもたらしたもう一つの大きなものは、ケーキを販売するための「冷蔵ショーケース」。
「苺のショートケーキ」を売るために「冷蔵ショーケース」を導入!これが、ケーキ屋ブームに拍車をかけたといっても過言ではありません。
しかもこれが「クリスマス」ブームを呼び、様々な産業に大きな影響を与えてきました。苺のショートケーキ恐るべし!です。
苺、今はこのケーキ屋需要のため12月24日、つまりクリスマスに照準をピタリと合わせて、出荷を目指します。この時期(12月20日あたり)イチゴは高騰します。1パック2.000円とか軽くいっちゃいます。それでもケーキ屋は買います。そしてクリスマスケーキはどんどんお高くなっていきました。
この苺のショートケーキがケーキ屋の主力商品であり続けた結果、本来苺が実らない夏に「夏イチゴ」なる品種を作っちゃいました。
北海道や長野でいろいろ栽培されます。一般的なイチゴは秋からと春に身をつける二季なり、というものらしいんですが、夏イチゴは四季なりという品種みたいです。
どうしても年がら年中イチゴを欲しがるケーキ屋用に「アメリカ」から輸入したイチゴを使うのが一般的だったのですが、昨年あたりから「オランダ」からも輸入がはじまってます。
うちのお店でも、お誕生日のホールケーキには絶対イチゴじゃないとダメです!というご要望をいただきます。「うちの子、苺が大好きなので」だそうです。
生クリームの上に赤いものを飾ると、それはそれは美味しそうに見えるのはよくわかります。そこでいちど「夏はスイカだろう!」とスイカを赤みに使ったら、お客さんから偉く叱られました。スイカはケーキに飾るものではない〜と。個人的には、苺よりスイカの方が圧倒的に好きですが。ワタシは。
もういちど「夏イチゴ」に話を戻します。
6月くらいから11月いっぱいくらい収穫されるそうです。
その特徴としては「爽やかな酸味」。そう、酸っぱいものがお好きな方にはおすすめです。
1番おいしい苺が出回るのが1月中旬くらいかなあとワタシは思っています。
果物の甘みは「糖質」です。植物は寒い時期を乗り越えるために、精一杯糖質を蓄えます。その糖質を「命をつなぐ」種子を守る果実に集めます。
野菜でもほうれん草を寒気にさらしたり、大根を雪の下に放置したり。そうすると甘みは増します。「砂糖水は凍りにくい」んです。だから植物は、寒さ対策として糖質を蓄えます。そしてまたその糖質を利用して子孫の拡散を試みます。鳥とか、虫とか。。。もしかしたらヒトとか。
夏イチゴは結論から言うと、甘くはありません。そう、寒さを乗り越える必要もないので。(かなあとワタシは思いますが)
日本中のケーキ屋さんの大半が年がら年中「苺のショートケーキ」をショーケースに並べたがり、お客様は「子供は苺のショートケーキが大好き」と妙な確信をもたれて。。
個人的には、初めて食べたショートケーキよりおいしいショートケーキには、いまだかつて出会ったことがありません。
苺の活躍の場は、もはやケーキだけにとどまりません。その代表的なブランドが「あまおう」でしょうか。海外でも高い評価を受けている、日本を代表する果物の一つと言えます。
甘さの王様?ではなく「あかい」「まるい」「おおきい」だからあまおう〜
そしてそして
もはやなんでもありです!
もしかしたら、今の時代の子供たちは、かおり豊かな甘みと酸味をほんの一時期楽しませてくれる「露地物のイチゴ」ではなく「カントリーマアム」のイチゴが苺の味!と記憶していくのかもしれませんね。
雪の積もる冬の林で赤い実をつける木は、鳥たちに見つけてもらいやすいよう、精一杯赤く実をつけます。あんばいよく鳥や動物に食べて種を運んでもらうための遺伝子、そして食べ尽くされないよう、毒も見事に仕込んで。
取り止めなのない「苺」の話になっちゃいましたが、おいしいイチゴは、たまに食べるから、なお一層おいしい。これでいんじゃないかなあと、夏イチゴをみてふと思ったわけです。
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