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実家の能登で被災し過ごした数日間

2023年12月30日に実家のある石川県七尾市に帰省していた。今回は知人の夫婦を実家に招待していたので翌31日に輪島市(千枚田や朝市)珠洲市(青の洞窟や見附島)などを一緒に案内旅行した。
その後、知人夫婦は金沢の知り合いの寺で除夜の鐘を鳴らすため金沢に向かった。僕は家族と年越しそばを食べ新年を迎えた。

1月1日15時30過ぎに母と兄と僕の3人で実家の周辺を散歩するために家を出た。ちょうど地区を回り家に着く3分まえあたりに、地面が大きく揺れるのと同時にゴーォーという地面が割れるような音と携帯の地震警報、田んぼの水が飛び散る現象が起き、母親が立って入れなくなり地面に倒れこんでいた。その時父親が家の中にいることが頭をよぎり、僕ら3人は大声で父親に
逃げてくれと叫んだ。

実家の家が信じられないくらい左右に揺れていて、実家の裏が山なので
その山の気がバキバキ言いながら木が何本か倒れてきていた。
そして父が家の中から飛び出してきたのが見えたので少し安心したものの
地震の揺れの大きさからとてつもない恐怖が襲っていた。
揺れが一時収まっても山のほうから大きな来たことがない音が鳴っていた。
今思えばあれは山の中を通っている高速道路が割れている音なんだとわかった。

それから一時的に揺れがない間に、急いで家に入り、最低限の必要品をとってまた外に出た。その時の家の中は物が倒れ、ガラスが割れ、天井が一部剥がれ、ぐちゃぐちゃだった。

それから家族で町の集会所に向かった。
そこは町の人がすでにいて、続々と人が集まってきていた。
なんとなく知っている人ばかりなのでなぜかほっとする面々だが、やはり同級生がいたことがわかった瞬間はこんなに安堵するものかと感じた。

そこから、男性陣は集会所のTVで情報をとりながら各家の状況や、地域の被害情報などを集約していた。
女性陣は、みんなで持ち寄りのもので集まった人たちへの夕飯をつくっていた。
この時点で大きな揺れはかなりの頻度で来るので来るたびに大声が飛び交っていた。ただ電気と通信だけはつながっていたのでこれは大きかった。
集会所には備蓄として、毛布や少しばかりの食料、救急道具、小さなポータル電源はあった。
まず僕は集会所に何があるか、何が足りないかをすぐ把握するようにした。
僕が気になったのは、消火器がないこと、加湿器がないことが気になった。
しかしこれはすぐに手に入らないだろうとも気づいた。

この時点での問題は、断水していること、ゆえにトイレが流れないこと。
簡易トイレ(ビニール袋で済ませ凝固剤で固めて捨てる)の使い方が集会所にいる人に説明されたとき、みんな急に水や食料を取ることを控え始めた。。そうトイレにみんな行きたくないので食事しなくなるのだ。。
断水時のトイレ問題はかなり問題になる※特に女性 そして田舎は隠れてする場所があるが、都会だとそれは難しい問題だ。
そしてみんなよく寝れない一日を過ごした。
皮肉にもとても星空は美しかった。

2日目、水がなくなり始めている 
そこで田舎の強さ、良さが発揮される。
集会所にいる一つ上の先輩が少し先にいつも飲んでる湧水がある。そこから水を汲んこようとなった。
田舎の情報を共有するコミュニケーション、共同体の良さと
のめる湧水があること、そしてそれを大量に運べる軽トラックがすぐ用意できること
これらが瞬間に叶う環境なんだ。
これで水がなんとか用意できた。そしてそれを集会所の前に置いておくことは火災に備えることにもなる。
また田舎の強さのもう一つは、田んぼと畑ばかりなのでコメに困らないし、野菜もたくさん用意できた。当然正月というのもあるし、被災地ということもあるので店は一切やってないから、水、食料がまわりにあることはとても助かった。
日中は、実家のガラス拾いを行った。かなりの数の揺れがあったので、逃げては拾い、拾っては逃げた。夕方また集会所にもどり寝れない二日目を過ごした。

3日目、支援物資などが届き始める。水や食料だ。
水は助かるが、食料はほとんどが糖質だらけ。カップラーメンや水をいれるとたべれるおにぎりやカロリーメイト、そしてお菓子だ。
もちろんありがたいし、熱をつくるために糖質も大事だ。
ただ、予防医療や栄養管理に詳しい、いやオタクな僕からするとこれはこれで体調を崩す食事だ。まさに全く栄養がなく、カロリーだけだ。
つまり免疫力が下がる。タンパク質とビタミンとミネラル、脂質がなさすぎるのだ。
良いもの、高いものでなくていい、少しでも日持ちするタンパク質とビタミン剤などを支給、支援する工夫が必要だと強く感じる。
僕はこの数日間、実家においてあるビタミンDとビタミンB群を毎日欠かさずのみ、同時に家族にも飲ませていた。そしてこの日もひたすらガラスの破片を拾った。
また、現在神奈川に住む同じ地元で育った同級生が、おれがいるところまで、ガソリンと水を使わないシャンプーと体ふきなどを買って車でわざわざ持ってきてくれた。本当にありがたかった。

4日目
朝5時に出発して(とにかく渋滞していたのでそれを避けるため)、僕と兄と母で兄の住む金沢の家でお風呂に入りに行き、ついでに買い出しをしてきた。なにせ3日間風呂に入らなかったことは人生ではじめてなので、風呂がこんなに気持ちいいと実感したことはなかった。
洗濯もさせてもらって、その後買い出しに。
加湿器(ウィルスが活発にならないよう感染症対策としてマスト)これは集会所用に自腹で提供した。
下着や衣類
チキンなどのタンパク質
汗ふきシート
ガソリン20リットル
水40リットル

などを購入しまた実家に向かった。そして外れたり割れた窓やドアにべニア板をあてたり、瓦のずれを直したりした。なにせ6日から雨、7日から雪が予想されていたからだ。揺れは引き続きあるが少し間隔が
空いてきた。

5日目
2階の割れたガラスを広い、倒れた棚や机などをおこし掃除をした。また壊れた墓に水が入らないように処置をした。

昼にまた集会所に戻ってみんなで話したり、食事をしたり、すこしPCで仕事をしたりしてまた家の片づけをした。しかし家の8割のスペースは被害(ひび割れなど)状況から住むのは怖い状態。
ただ残り2割のスペースで今日から父が家で寝ようと言い始めた。
さすがに集会所の雑魚寝では寝れないからもう家で寝たいと言い始めた。
どうすべきか家族で話し合ってたとき、母あてに電話が来て、
その電話の内容は集会所のある高齢者がコロナになったという連絡だった。
その高齢者の家は倒壊寸前なので家に戻れないため、集会所で過ごすしかなく、(病院に入れないようだった)おのずとこの日から我々は家で寝ることになった。
案の定、父と母は布団に入ったとたん寝始めた。。。
相当疲れていたんだろう。。70歳中盤になろうかという両親にさすがにこの状況はこたえたんだと思い。
しかし、そんな夜も何回かそれなりの揺れがきて、そのたびに起こして外に逃げたりしながらなんとか眠った。

6日目
僕と兄は雪が積もるかもしれないので、7日の午後に帰宅(兄は金沢、僕は東京)することをきめたので、明日7日までにできることはやろうと決め、
家の可能な限りの修復と湧水を組みに行ったり、飲み水を買いにいったりした。また避難道具のチェックや、備蓄のチェック、毎日確認することチェック表などをつくったりした。
たとえば、
ビタミンD,B群を毎日とること。
定期的に深呼吸すること、お茶を飲みながらほっとすること。
笛とヘルメットと履物を近くに備えておくこと
飲み物、食べ物、避難道具などを分散させておくこと(車にも)
避難経路を常に確保しておくこと(通路にものを置いたりつまずかないように常に意識しておくこと)

7日目
兄に金沢までおくってもらい金沢で1泊
ホテルに泊まったがホテルでも揺れた。能登の震度は4だったが、
4でも金沢はかなり揺れることを感じた。しかし金沢は日常と変わらなく見えた。
ホテルの温泉に入り、ひさしぶりに寝れたと感じた。

8日目 
新幹線で東京に戻った。
とても日常だった。東京駅についてまず感じたのは
人の多さの恐ろしさだ。地下にいる怖さだ。
ここに災害が起きたらどうなることやらパニックどころではないだろう。

僕はこのとてつもなく恐ろしかった経験で
幸せとは気づくことなんだと強く感じた。
水があること、電気があること、あたたかいってこと、食べれること、
体が洗えること、自分の足で移動できること 
これらあたりまえだとおもっていることが一瞬であたりまえでなくなるんだと。
あたりまえとおもっていたこれらはどれもありがたいことなんだと。
それらがあること自体幸せであるってことなんだと。
何より大切なひとと会えたり、過ごせたり、話せたりすることがいかに幸せなことなのかを。

そしてこの数日間で、僕は家族の絆をとても強く感じた。
久しぶりに父、母、兄とこんなに過ごした いつぶりだろうか。30年ぶりとかだろうか。つらい経験だったけど、それでも過ごした日々は宝物だと感じれた。

人の強さや田舎の強さを感じた、田舎より東京が強いのは経済だけなのではないか。そしてその経済も今後はどうなのか。
とはいえ輪島や珠洲の被害は僕の実家の七尾市より甚大だ。
復興するには資金がいる、経済活動も必要なのだろう。
しかしその前に災害関連死を未然に防がなくてはいけない。


災害関連死のフォローチャート

必ず来ると言われている関東直下型地震、南海トラフ地震、富士山噴火
これらに少しでも対策していくべきで、東京に来て話す人たちにまだその緊張感を感じない。僕もそうであったように被災してみないと当事者意識がでないのはわかるが、これではもうだめなんだよね。


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