アマゾンのお勧めで読み始めた   『薬屋のひとりごと』 作 日向 夏

西域に砂漠が広がる帝のいる国。今の時代なら常識と言えるものが、「ミステリー」になる時代。ちょっと複雑な生い立ちの薬師の猫猫(まおまお)と とても複雑な出自の皇弟壬氏の物語。なかなか進展しない関係性は、ラブコメのようだ。アマゾンアンリミテッドのレビューには、「痛快ミステリー」とあった。猫猫の周りで起こる様々な事件を「薬師」の知識で解決していく、ちょっと理系の謎ときには違いない。

そう言えば東洋経済の『東大生が全力でオススメ「勉強になる漫画」3選のおすすめ漫画」』でも取り上げていた。私は小説で読んだのだが、ずいぶん人気のある作品だということを最新刊まで読んでから知った。かなり有名な作品だったのだと今更気づく。

登場人物の造詣が魅力的だ。絵にかいたような空々しい善人がいない。どこかみんな癖がある。弱さがある。当たり前のモラルがある。そして、まったくの悪人もいない。自分たちにとって不都合なことの反対側には、反対側のまっとうな理屈がある。

相手を糾弾し、叩きのめして追い込む最近の風潮の中で、この本がたくさんの人に読まれていることがなんだかうれしいと思う。当たり前のモラルをもった人が多数の社会であると信じたい。私は、能天気な性格だから。

この作者はいったい何歳なのだろう。物事を見るバランスがとても良いなと感じる。

たとえば、こんな場面。

猫猫は優秀な薬師。紆余曲折の後、宮中で医官手伝いをしている。女は医官にはなれない社会。猫猫たち医官手伝い官女3人に、医官になるための研修を受ける、その覚悟を問われる場面。

その中で作者は猫猫の義兄「羅半」にこう言わせている。

「男女が同じ仕事を、というのは基本無理。足枷をつけたまま同じ道を歩むには、それを上回る知力・体力、または、支えて補ってくれる何かが必要。」また、こうも言う。「仕事に出ることこそ正しく、家庭を守ることが無意味」なような考えはそれこそ「女性蔑視ではないか」と。

どうして、みんなもっとこういうことを言わないのかな?「〇」か「×」だけで、論議を進めないでよ。物事には、裏と表がある。

女性が子育てをしながら職をもって働くことは、私が働き始めた昭和50年代でさえ、ハードルの高いことだった。最近の詳しい事情はよく分からないし、40年もたっているのだから、だいぶ解消されているのだとは思うが、それでも、息をするように男性が子どもができても働き続けることと、女性の場合ではまだまだ差があるだろう。子どもの保育園が見つからなくて、困って声を上げているのは、たいていは女性だから。(もしかしたら、マスコミが女性の声だけを取り上げているだけなのか、本当はよくわかっていないけれども。)

結婚や出産によって女性の選択肢が狭められることには賛成ではない。「女性なら~すべきだ。」という論調には拒否反応がある。

でも、「保育園料が高い」と愚痴った時に、仲人の方から言われた言葉を思い出す。

『子育て』という重要な仕事をお願いするのだから仕方がない、と。

だから、子育てに専念してもいい。子育てをしながら働いてもいい。その立場が母親でも父親でも。選択が可能であればいいのだと思う。社会の仕組みとして。理想としては・・・。

ライトノベルを読んでいて、こんなところに引っかかるとは思いもよらなかった。というか、「ライトノベル」の括りって何かなあ。読みやすいことは確かだけれど・・・。



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