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『タフ外伝 おとん OTON』を読み直した話

最近、古本屋巡りをしているのですが、偶然『タフ外伝 おとん OTON』が帯付きで売っていたので思わず買ってしまいました。
昨今、電子書籍が主流になる中、たまにはコミックスで読むのもいいですね。他人に貸したりもできるので布教用にしようと思います。

以下、各エピソードの感想(初見風)。
※ネタバレ有です。
(サブタイトルが無かったので適当につけました)


◆おやじ狩り

おやじ狩り少年の話。こいつタフカテだと"偽キー坊"って呼ばれてるの草なんだよね(←我らの主人公を冒涜するのか?)。少年に襲撃されて半身不随になった山津さんの身体を活法で直して回復の兆しが見える流れ、地味に角丸先生の話に似てますね。

山津「正義なき力は暴力であり、力なき正義は無力やっ」←見事やな。まぁこのオッサンが静虎を助けたのは建前で、本当はむしゃくしゃして暴力を振るいたかっただけなんやけどな ブヘヘヘヘ。←しゃあけど、それでも貴方に助けられたわ(by 静虎)。

この時登場した幻魔拳もまさか龍継でフィーチャーされるとは思わなかったはず。

◆徹貫掌/親子の繋がり

静虎の友人、『八巻流体術』創始者"八巻実"…の息子との話。既に故人となった八巻と共に作り上げた徹貫掌を軸に、父親に認められる前に先立たれた息子"八巻樹馬"が静虎に亡き父親を重ねて挑み、自身のアイデンティティを確立する流れがいいですね。本編の"葵新吾"や"九条薔薇丸"もそうですが、男というのは得てして父親に認められたい、超えたいもの…なのかもしれないですね。こういう親子関係の話めちゃくちゃ好き。
そして、並行して家庭環境がボロボロのユキちゃんという女の子を救う話も展開されるのですが、酒に溺れて荒れ果てているユキちゃんの父親に打った酒を飲めなくする灘神影流『刺鉄拳』…

静虎さん 俺に『刺鉄拳』を打ってください。
俺も酒が飲めない身体になりたいのです(酒カス書き文字)。

◆天獄流剣術

JFK銀行の頭取が黒田金造というヤクザに脅迫されているので、それを仲裁する話。はうッ、もはや様式美のようにヤクザ登場(いつもの)。
ここで黒田の眷属として登場した『天獄流剣術』"左十五郎"が結構強い。過去に静虎と引き分けたのすごくない?この作品、普通に"アイアン木場"より強そうな奴でてくるね。ついでに"幻舟先生"クソ雑魚説も再浮上。

途中、頭取の秘書と静虎がいい感じっぽくなるけど実は頭取の愛人でした…はーっ メスブタよ 〇ね

◆タフ外伝 鬼龍

中東の某国にボランティアに行っていた米国大統領の娘が過激派組織に誘拐されたので、その救出に鬼龍が向かう話(実は大統領の娘と鬼龍は以前ボボパンした仲だった)。相変わらず過激派組織の描写とかが過激を超えた過激。まっ、強かった頃の鬼龍が見れるからバランスはとれてるんだけどね(アジトに潜入するためとはいえ、普通に捕らえられてボコられてる鬼龍はちょっと笑える)。
ただ…このエピソードは最後に例のテロ事件が起きるんですけど、元を辿れば全部このメスブタのせいなんだよね。大統領の娘でありながら危険地帯に足を運ぶ危機感の欠如、そして鬼龍が救出のために過激派組織をグチャグチャにしたおかげで報復のテロが慣行される。何の罪もない市民が犠牲になっているんスけど…いいんスかこれで?

メスブタは鬼龍の子供孕んどる場合ちゃうぞ

最初は鬼龍を愚弄しようと思ったけど、このエピソードに関してはメスブタが圧倒的に酷い。普通に後味の悪い話だと思われるが…。

◆変わらぬ虎、変わる見方

上京してきたシホちゃんという子を悪質なストーカーから救う話。有名な"後ろからボウガンの矢→ヒュン→カッ→「なにっ」"のシーンがあります。ここの反応…只者ではない、普通は「きゃっ」とかでしょう。
結局 ストーカーから強姦(レイプ)ッ!されかけたところを静虎が救って3年後。就職したシホちゃんは偶然にも街中でゴミ拾いをしている静虎を見かけ声をかけるが、静虎は自分のことを覚えていない。この人にとって人助けは当たり前のことなんだと察し、それでも目に涙を浮かべながら心からの感謝を伝える……ええ話やこれは。
初対面では冴えなくて情けない、ただ手がゴツいだけのオッサンにしか見えていなかったのに…もう彼女の目にはそうは映っていないんだ。

こんな父親の善行を「チマチマ」と愚弄した息子がいるらしいですね

あと、静虎…なんで再婚できんのや?いくらでも相手が見つかると考えられるが…鈍いから日常的にフラグを見逃している説が濃厚。

◆また10年後…

『傷だらけの仁清』の主人公"永井仁清"が登場するクロスオーバー回。10年周期で対決する2人の話。おぉ! 仁清の顔がまるで別人のように凶悪な面だ。この仁清は『傷だらけの仁清』本編とはパラレルらしいんですけど(時系列的に)、世界観がある程度繋がっているというのはワクワクしますね。そして静虎が強すぎ、仁清もバケモンを超えたバケモンなのに。最後はまた10年後の対決を約束するが、多分この2人は10年後も元気だと思いますね。実に爽やかな終わりだ。

じゃっ また10年後に

◆秘蹴・鎌鼬

はずみでチンピラを蹴り殺してしまい、殺人罪で服役中だった『草薙流体術』(KOFかな?)の当主"草薙龍一"が脱走したので、父を捕まえてほしいと娘から依頼を受けて代わりに秘伝である『秘蹴・鎌鼬』を授かる話。
実は龍一の娘は結婚を控えており、父に式に参加してもらうために静虎に依頼したんですけど、彼は静虎に敗北後、これ以上娘に迷惑はかけられないと自分から刑務所に戻ります。本当は娘の結婚には参加したいけど、最終的には罪を償うことを優先する……哀しい話だなぁ。

…でも、怒らないでくださいね。
どう考えても脱走犯(服役理由:殺人)が娘とバージン・ロードを一緒に歩けるわけないだろ!相手側もビビるわ!
(あと逃走する龍一にしれっと〇された警察犬に哀しき扱い…)

◆龍腿のハゲ

100万人に1人の龍腿(ドラゴン・フット)を持つ『龍空真拳』の高弟"霍書文"が自身を後継者として認めない"馮老師"を毒殺しようして、静虎が誤った道へ進もうとする彼を止める話。まぁ よくある才能はあるけど傲慢な弟子を師匠が諭そうとするが、思いが伝わらずに争いが起きてしまうというヤツです。このハゲが龍腿持ちだなんて…こ…こんなの納得できない。『虎腿>龍腿』の描写もされてもう鬼龍の株はボロボロ。

そして、戦いを経て改心し、自らの過ちを後悔する"霍書文"ですが、実は"馮老師"は静虎の活法で回復してました、そんなんアリ?
まぁ 死に追いやった十字架を背負わずにすんでハッピーハッピー…か?


偉大なる指導者"馮老師"と
異常性愛者である"馮文宝"
同じ姓でも偉い違いやな(しみじみ)。

◆達人の矜持

「…で 命を狙われているのが俺…!!」のコマで有名な"尾崎健太郎"が登場する話です。ラスト・エピソードがこれでいいのか?
尾崎が"山田一郎"という殺し屋に命を狙われているので、そのボディガードとして静虎が雇われる…という流れなのですが、実は山田の狙いは最初から静虎。かつて静虎に殺気を読まれたことを屈辱に感じ、自身が衰えたのか、静虎が凄まじい達人なのかをハッキリさせるために挑んた形です。
ライフル弾を『弾丸すべり』する静虎、マジでかっこええのう。この無茶苦茶な技に謎の説得力を持たせる猿渡先生の画力がすごいんだ。ちなみに"山田一郎"は『あばれブン屋』にも出てきます。彼が敗北を悟ってからの流れ、狙撃の達人としての矜持が…見事やな。

どうでもいいですけど今回の依頼、もうちょい報酬ふっかけて生活を楽にした方がよかったのでは?尾崎は1億2億は簡単に払ってくれそうな雰囲気だったけど…。

静虎は相場の報酬で構わないと言っていたけど相場ってどんなもんや?
1日100万くらい?

◆まとめ

短編人情物として非常に完成度が高いシリーズ
久しぶりに読んだけどめちゃくちゃ面白かった。個人的に鎌鼬の親子のエピソードがお気に入りです。圧倒的な画力・先生の人情ストーリー・個性豊かに格闘家たち…『傷だらけの仁清』『あばれブン屋』とのクロスオーバーもあって満足できる2冊ですね。パラタフもそうだけど、猿渡先生はもしかして短期・不定期連載の方が相性いいんじゃないっスか?

◆余談

この作品ではキー坊が台詞のみで姿は明確に描写しないことが徹底されています。猿渡先生の粋なこだわりを感じますね。

ふうん、これはあくまで外伝であり、静虎の物語であるということか


出典:猿渡哲也『タフ外伝 OTON -おとん-』集英社
猿渡哲也『タフ外伝 OTON2-おとん-』集英社