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シンデレラ・ハロウィン

今日はハロウィン。
街は仮装パーティーをする人々で浮かれている。

いつもだったら、そんな人々を冷ややかな目でいる私。
でも、今日は違う。
シンデレラの格好をして、街を歩いている。
魔が差した。それだけだ。
試しにやってみただけだ。



大きく膨らんだドレスの裾を持ちながら、人ごみの中を歩く。
靴もキチンとガラスの靴に見立てたもので、高いヒールで足はかなり痛かった。
やっぱり来なければよかった。
来て早々、私は根を上げてしまった。

狭い路地に逃げるように入って、座り込む。
靴を脱ぐと、案の定靴ズレだ。
私が年甲斐もなく泣きそうになっていると、すっと頭の上に影が落ちた。

「痛そうだね」
そこには、王子様の仮装をした男性が立っている。
私の脚を指差して、彼は一言そう言った。


「痛いです」
やけくそで復唱するように答えると、王子様は何が可笑しかったのかひとしきり笑って、靴を脱いだ。
「よければこっちを履いて帰って。僕は足が小さいほうだし、ガラスの靴よりはましでしょう」
でもあなたは、と私が言いかけるのも聞かず、靴をおいて彼は去ってしまった。



横にいたジャックオランタンのかぼちゃ男が言う。

「シンデレラじゃなくて、王子様が靴を置いていってしまったね」



#記念日にショートショートを
#ハロウィン


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