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知らないふりが一番楽だから。

学生時代の同級生。あまり話したことはなかったけれど、大人になってから、「昔、本当は好きだったんだ」と言われた。

私は好きではなかったし、そもそも学生時代たいして会話もしていない。学校も違ったし、友達がたくさん居るところで会えばワイワイとしたムードの中ひとこと、ふたこと話すくらいだった。

近づくことはなかった一番の理由は、仲良しの友達の好きな人だったから。その子が大好きだし、当時は話をたくさん聞いていた。彼への思い、届かない思い。告白をしたけれどずっと思いを馳せている好きな女の子がいると言われたと。
いつも彼女の話をうんうん、って聞いていたし応援していた。その相手の思い人がまさか自分だとは思うわけがない。

数年後、大人になった彼は私にいわゆる壁ドンをして好きだったと言ってきたのだ。

その後なんとなく仲良くなり、よく二人で出掛けるようになっていった。朝から晩まで一緒にいる日も少なくなかった。

彼は何もして来なかった。

壁ドンをしてくるくらいだし、っていうかほぼ毎週二人で逢瀬を重ねているのだし好意はあるだろう。ていうか、好きだったんだと思う。

でも私はその気持ちを気付かないふりをし続けた。

過去に好きだったと言われたのは確かだけど、今は?
確か今の話はしていなかった。今「も」好きだと彼は言っていなかったよね。うん、別に好きでもないのでは?わざわざ聞くのもなんだか変だし、聞いたところで付き合う気もないもん。

当時、普通に別にお付き合いをしている彼氏がいた。彼とは友達として会っていた。つもりだ。彼氏がいることを隠していたわけでもない。

会っていれば正直「この人私のこと好きなんだろうな」と感じることも多々あった。ていうか、大いにあった。いやさすがに好きだろ。

でもね。それでも知らないふり。

彼のことは好きだった。友達として。一緒にいて楽しくて、ずっと遊んでいたいと思った。昔からの友人でもあるから気心知れているし、共通の話題も多い。

私にとっては「最高の男友達」だった。

でも男女の友情は、片方が恋愛感情が芽生えていると崩壊してしまう。
私は親友になりたかった。でも彼は違った。

手を繋いだ。何も言わずに、ぎゅっと握りしめられた。それ以上何かをすることはなかった。
いや、あの時私が受け入れていたらもう一歩先に進んだかもしれない。

いつもの二人だけの空間になんとも言えない気まずさが流れた。

それでも、残酷な私はまた知らないふりを続ける。だって知らないふりはとっても楽だから。

相手の気持ちを考えることもせず、追及することもせず。彼も何も言わなかった。何も言わないのをいいことに、自分の都合よく解釈をして納得しておしまい。そんな日々がずっと続いた。

彼とはその後なんとなく会わなくなり、今に至る。

「口にしなくてもわかるだろ。」

そんなものは時として利用される。本当に好きならちゃんと、言葉にして伝える方がいい。

知らんぷり出来ないくらい、夢中にさせて欲しい。

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