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生理痛とピルについて

毎月の生理があなたの負担になっていませんか?

激痛ではないけれど、下腹部や腰が重だるくて、外出する気にならない…

もうすぐ大学受験なのに生理中は勉強がはかどらず、困っている…
試験の日と生理が重なったらどうしよう…

職場で頻繁にトイレに行けず、ナプキンから血が漏れていないか心配…

なんて、生理中女性の悩みは多岐にわたります。

しかし!

日本の女性はそんな悩みを「しょうがないよ」と耐えている方が多いです。

でも、それって毎月のことなのにつらくありませんか?

ピル(ここでは低用量ピル、超低用量ピルを指します。)を上手く使えれば、生理痛や日々の不安をコントロールすることができます。


私自身も超低用量ピルを使ってみて、みんなにピルのことをもっと知って欲しい!ピルを使えば生活が楽になる女性が増えるのでは、と思うようになりました。

ここでは、産婦人科医として生理痛が起こるメカニズムやピルの作用機序や副作用についてお話していきたいと思います。

目次
① 生理の原理:そもそも生理は何故起こるのか?
② ピルの原理:ピルとは何か?
③ ピルが使えない人はどういう人?
④ ピル服用中に気を付けたいこと


①生理の原理:そもそも生理は何故起こるのか?

生理(月経)は月に一回、子宮内膜が剥がれ落ちることでおきます。
これだけでは「??」ですよね。詳しく解説していきましょう。

女性はだいたい月に1回、排卵します。
排卵した卵子が精子と出会えば受精卵となるわけですが、
その受精卵がきちんと子宮に着床できるように、子宮の内膜は分厚くなって、言わば、ふかふかなベッドのような状態となります。

子宮シェーマ マツキヨさん

                    イラスト提供: マツキヨさん

しかし、排卵した卵子が精子と出会うことなく、受精卵にならなければ、ふかふかの分厚くなった子宮内膜は必要なくなります。次の排卵に向けて残して置いたらいいじゃないかと思われるかもしれませんが、それはできません。受精卵がくっつかなかった子宮内膜は剥がれ落ちることで出血します。それが月経/生理となります。

そして生理が終われば、次の排卵に備えて

【子宮内膜が分厚くなって】→【剥がれ落ちて生理がきて】

と繰り返していくのです。

つまり、妊娠を希望していない場合に月経は必要なわけではないんですね。

②ピルの原理:ピルとは何か?

そこでピルの出番です!
そもそも子宮内膜をフカフカに分厚くするのには女性ホルモンの2つが大きく関与しています。

・エストロゲン(卵胞ホルモン)
・プロゲステロン(黄体ホルモン)

です。この2種類のホルモンは本来、卵巣からでているのですが、お薬(ピル)として飲むことで、脳がこの2種類のホルモンが卵巣から出ていると勘違いし、この2種類のホルモンを卵巣から出すのをやめるよう命令します。

するとその影響で卵巣から排卵するのを抑えられますし、子宮の内膜も分厚くならなくなります。

つまり、ピルを服用することで、子宮内膜が分厚くならないので、生理の出血量が少なくなり、生理痛もなくなり、不快な症状から解放されるということになります。

実際に私の経験的には生理の量は10分の1くらいになりましたし、生理痛ももちろんありません。

③ピルが使えない人はどういう人?血栓症に注意しましょう。

さてさて、ピルを使った方が毎月の生理が楽になるらしいというのは分かってきた。でも、ピルってなんだか副作用があるって聞いたんだけど…。


ここではまず、ピルで一番怖い副作用についてお話します。

ピルの一番怖い副作用は【血栓症】です。
【血栓症】とは血管に血の塊が詰まってしまい、血流障害が起きる病態のことを言います。

頭の血管なら、脳梗塞だし、心臓の血管なら心筋梗塞だし、足の静脈なら下肢静脈血栓症(エコノミークラス症候群)といった具合にどの血管に血栓ができるかで症状は異なります。

少し怖くなっちゃいましたでしょうか。
ですが、あまり心配することはありません。
このような血栓症になりやすい人はどういう人かというのは分かっています。

血栓症になりやすい人は…
・40歳以上の方
・喫煙者
・高血圧の方
・糖尿病の方(耐糖能異常の方)
・片頭痛の既往のある方
・血栓症の既往がある方(抗リン脂質抗体症候群)
・血栓症の家族歴のある方
・肝障害のある方
                   等々です。

ピルのガイドラインではこのような方は服用禁忌や慎重投与するようにとなっています。

つまり、それ以外であればまずピルを安全に使えるのではないでしょうか。
しかも、血栓症のリスクが高いのはピルの服用を始めた2,3か月だと言われています。

また、ピル服用中に血栓症になる危険性より、妊娠中や出産後に血栓症が起きる危険性の方が高いと言われています。(妊娠はお産の時の出血に備えて血が固まりやすくなっているのです。)

これを聞くと少し安心して使ってみようかなと思っていただけるのではないでしょうか。

④ピル服用中に気を付けたいこと
~乳がん検診を受けましょう。太りやすいってのは嘘?~

さて、先ほどは血栓症にのみ焦点をあてましたが、ピル服用中に気を付けたいことは他にも少しだけあります。

ピルは少しだけ乳癌を増加させる可能性がある。とされています。
つまり、ピルを飲みだしたら、乳房の自己検診及び超音波やマンモグラフィーなどの検診をしっかりおこないましょう。つまり、乳がんになったことがある方はピルが使えませんし家族に乳癌の方がいらっしゃる場合も慎重投与になります。

しかし、言い方を変えれば、

【ピル服用を契機として乳癌の検診もしっかりできる】

ということになります。

話は変わりますが、「ピルを飲んだら太りやすいんですよね?」とよく聞かれます。
正直言って、ピルを飲んで太ったよっていう方は見たことがありません。
ガイドラインでも、因果関係はありません。とありますのでそこは心配いらないでしょう。

しっかりピルについて知ってもらった上で安全に使用して欲しいというのが私の願いです。しっかり目に怖い話をしましが、ピルには大腸癌や卵巣癌のリスクは低下させると言われています。ピルが使用できる人にはしっかり安全に使って、毎月の苦痛を取り除いて欲しいというのが私の願いです。


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