知識や情報だけではうまくいかないのがコンサルティング[20240527]
弊社は「経営コンサルティング」事業を営んでいる。
付帯事業として企業向けの研修(トレーニング)サービスも提供している。
また私個人では、副業として大学や大学院で教員も務めている。
ところで「教える」仕事で大事なこととは何だろうか?
教えるコトが上手だということは当然のことながら、他に何が思いつくだろうか?
「正しいことを教える」という姿勢が大事だと言われたこともあるが、実は「正しい」と言うのは難しい。
私が良く皆さんにお伝えする事例をご紹介しよう。
【問】胃潰瘍・胃がんの原因は何ですか?
殆どの方が「精神的なストレス」とか「暴飲暴食」と回答する。
もちろん、関係が無い訳ではないのだが、直接的な原因では無い。
1988年より前ならば、「精神的なストレス」とか「暴飲暴食」などで正解だったかもしれない。
【答】ヘリコバクター・ピロリ菌が胃の中に棲みついているから
と言うのが現代医学の常識である。
医学に限らず、経営学の世界でも常識はコロコロ変わる。
1880年移行は、フレデリック・テイラーが後に科学的管理法と称する方法にて「労働者の管理」をする方法が常識だった。
1930年頃にエルトン・メイヨー、フレッツ・レスリスバーガーらによって実施されたホーソン実験(研究)により、テイラーのように機械的に人々(の労働力)を管理しても必ずしも良い結果を生み出す訳ではないことが証明された。(この研究は人間関係論の始まりと考えられている)
現代では、更に認知心理学や生物学など様々な学問が影響を与えて進化してきてきる。
決定版というノウハウは存在しないが、リーダーシップ論などの様々な説を融合しながら組織としての最善な結果を生み出す努力を惜しみなく続けている。
更に近年では「財務結果の極大化」のみにフォーカスする組織は長続きせず、むしろ社会的な貢献に価値を置かなければ社員のモチベーションが下がるというような研究も報告されてりしている。
時代によって様々な考え方が「生まれ新たな常識」が生まれては消える。
これらの「新たな常識」は、大学の商学部や経営学部などでは殆ど教わることはない。
特に日本の大学では、最先端の研究を教わることは殆ど無い。
概ね20年以上くらい前からの常識のみを教わることになる。
これは、アカデミックな世界が実業の世界とリンクしないことが問題なのだと感じている。
簡単に言うと、
「産業界は学術界(アカデミック)を頼らないし、むしろ無視している」
「学術界は産業界から研究費などが流れてこないので産業界に役立つこととは何かを探究しなくなっている」
理工学を始め理系科目では産民一体にての取組みも多く見られるが、経営学を始めとしたいわゆる文系科目にて、この傾向が顕著なように感じる。
「正しい」というのは、時代・状況で変化するため難しいということだ。
「毎日の投稿を楽しみに拝見していますが、あんなに洗いざらい公開したらコンサルティングは必要なくなるのでは?」
経営者の友人からこのように言われたことが何回もある。
私の経験では、これだけ洗いざらいオープンにしても「上手くいかないこと」の方が多いから問題はないのだ。
情報が嘘だからではない。
ここでお伝えしている情報は汎用的に正しいし、アカデミック過ぎず実務家向けだという自負もある。
では、何故上手くいかないと言えるのか?
自社に適用する際に関係者の思惑や、意欲のマネジメントなどが上手くいかないことが多いからだ。
実体というのは想像を超えて複雑系である。
その複雑な状況を踏まえての打ち手が必要なのだが、それは各社・各組織によって全く違う。
難しい「正しい」ことを教えるだけでなく、必要な情報をピックアップするテクニックが必要なのだ。
それから、課題解決のためには忖度はしないという覚悟も実はとても大事である。
だから、私どもの仕事は無くならない、筈。
合同会社タッチコア 小西一有
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