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情報という資源:情報はタダではない[20240805]


弊社は経営コンサルティングを生業にしているので「業務改善」のご相談も承っている。

ただ、トヨタ生産方式に見られるような「徹底した無駄の排除」とか「業務品質の極限を目指す」などのご相談に当社は適していない。

「カイゼン」がお得意なコンサルを、もしご所望の場合はご紹介も可能なのでお声掛けいただければと思う。

弊社が得意とする分野は「情報経営」である。

情報とか言ってITを売りつけるつもりではない。

そういうはしたないコンサルが有象無象に存在することは知っている。

IT開発については、クライアントから特に要望が無ければ「当社からご紹介することは無い」。

多くのコンサル企業では、コンサルは「廉価」にて提供してIT開発でごっそり儲けるという図式になっている。

コンサル会社の景気が良いのは、IT開発を行うからである。

開発は桁違いの金額が発生する為に利益率が同じだとしても絶対的な金額は凄まじく大きくなる。

しかもコンサル会社に頼むのとITベンダーに頼むのと金額的な比較をするとこれも圧倒的に前者の方が高価になる。

しかし、弊社は通常IT開発をしない。

(儲かるのに)IT開発をしないのには、理由がある。

1つは、弊社はシステム開発要員を持たないので、協力会社と協働でサービス提供しなければならない。

そうなると、品質を担保するのが難しいからである。

もう1つは、「情報の価値」を最も大事にしているからである。

後者の「情報の価値」とIT開発に何の関連があるのか分からない方が殆どだと思うので説明をしておきたい。

まずは「情報」の性質というか機能について。

「情報」は何の役に立つのか考えたことがあるだろうか?

「分析してマーケティングに資するのが情報でしょ?」

間違ってはいないが端的に性質を示していない。

「会計情報で自社の状況を素早く把握するために情報が必要なのですよね?」

これも、間違ってはいないが端的に性質を示していない。

答えは「情報とは人々の気持ちを動かすための資源」である。

コンサルティングの主活動は「情報提供」だ。

つまり、コンサルティングを実施することによって「人々の気持ちを動かしている」のだ。

コンサル会社は、当然のことながらこのことを良く知っている。

だからコンサルティングの主活動である情報提供を「棒引き」にしてその後に繋がる仕事(IT開発)でガッポリ儲けるのである。

企業サイド部内に外部のコンサルタントのカウンターになり得る人材がいて、結果的にIT開発が必要かどうか判断出来るような体制になっていれば騙されることも無かろうが、企業サイドにそのような人材が存在することが少ない。

CIOの役割を軽視している日本においては特に危険な水準になっている。

コンサルティング会社が(棒引きで)提供してくれる情報は、半分は正しいことだがもう半分はITを導入したら「問題解決する」というPromotionになっていることが多いという話なのだ。

情報は人の心を動かす性質を持っているので「IT導入しなきゃいけないのね」という気持ちにさせるのが悪いコンサルティングの儲けの極意だ。

何故、このような商法が成立するのか。

情報はタダが当然とか、安い方が良いと考えている日本人が多いからだ。

本当の情報はタダではない。

以前に勤めていたGartnerのコンサルティング部門はこんな風にクライアントに言っていたそうだ。

「後続の仕事を作る為のコンサルティングをしません」

後続の仕事とはIT開発・導入である。

導入とは「特定のソフトウェア・パッケージ」を指している。

IT開発・導入を実施するコンサルティング会社は「会計なら○○○パッケージ」「人事なら○×△パッケージ」「CRMなら▲◎□パッケージ」と言う風に、取り扱いラインナップを決めているのが通例だ。

パッケージメーカーの代理店になっているのでバックマージンも入ってくるから旨みが増える。

代理店をしていると様々な技術情報、メンテナンス情報などが入手できるというのが表向きの理由だが。

ついでに話をしておくとソフトウェア・パッケージには「業務ノウハウ」が実装されている。

システムを導入することにより「業務ノウハウを獲得出来る」から高価なソフトウェア・パッケージを購入・導入するのだ。

では、そのパッケージが目指す業務ノウハウとは何か?を理解している人は存在するのか。

自社にパッケージを導入する際に「一番大事なこと」は価格でも無ければ機能(星取り表を作る人達も多いのだが…)でも無い。

その「パッケージが目指している業務の方向性とは何か」が自社の方向性と合致するのかどうかが大事なのだ。

大事なことだから再度言う。

「パッケージを導入する際に大事なことは機能では無い」

一番大事なことは「パッケージが目指している方向性と自社が目指す方向性とが同じかどうか」である。

「現場が自分たちの業務を定義してくれないので、パッケージ・ソフトウェアを導入することを決めました」という話も良く耳に入ってくる。

こういう状況に陥っているならば、本当に危険だしシステム導入失敗の引き金になることが多い。

正解かどうかは別にして、現場には現場のやり方や考え方があって、それは当該現場が知らなくても周辺部門の価値観や経営戦略から導き出すことが可能である。

実際のところ現場は言われたことを言われた通りにしかしないことが多いので業務の方向性や目的について自身で語ることが出来ないだけで、本当は決まっているのだ。

今週は「情報」という資源とコンサルティングについて考えてみたい。

合同会社タッチコア 小西一有


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