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ベクトルが違う組織[20240724]


今週は、ちょっと笑えるが、イノベーションが生まれない深刻な現実について話している。

マネジメントが「失敗しろ!」と指示を出すも、会社全体からするとアンバランスな状況が生まれたりする。

アンバランスな状況とは何だろうか?

実は、世界中の企業や組織でこのアンバランスが発生してイノベーションを阻害している。

凄く簡単に言うと、イノベーション組織は他から見ると『遊んでいる!』と映る」ということだ。

非イノベーション組織は「額に汗して、血が滲む想いをして」利益を捻り出しているのは周知の事実だ。

そんな思いをしてようやく生み出した「利益」をイノベーション組織は、やすやすと「無駄遣い」をしているように見えて腹が立つのだという。

本当は、多くの学習をしているのだが無駄遣いと映るのは致し方ないのかもしれない。

しかし、このベクトルが全く違うイノベーション組織と非イノベーション組織の両方を上手にマネジメント出来てこそ素晴らしいイノベーションを創出し続けられるのである。

早稲田大学大学院の入山教授は、このベクトルの違う2つの組織を「両利きの経営」と呼んで別々の方向性でマネジメントすることを推奨している。

また、一般社団法人 Japan Innovation Networkでは、二階建ての経営と呼び、同様に別々のマネジメントを実施することを推奨している。

更にGartnerでも「バイモーダル」と呼んでいる。

このように多くの知見が存在しているということは、世界中でイノベーション組織と非イノベーション組織の両立に苦戦していることが見て取れるし、難しい問題であるのだ。

「マネジメントの方法が違う」を端的に表すと、非イノベーション組織は「知の深化」をするところだと入山先生は説き、Gartnerの最上級アナリストのDave Aronは「知を搾り取る」のだと言う。

入山先生は”exploit”という英語を深化と上手かつ上品に訳されたのだが、Aron氏は“exploitとsqueezeは同義”と言い、搾り取りという日本語で表現した。(個人的には、搾り取りの方が分かりやすいと思う)

そして、イノベーション組織は、入山先生の訳でもAron氏の訳でも”explore”で「探索する」としている。

探し求めることが中心的なミッションであり「搾り取る」ことではないのだ。

ミッションの違いが益々両組織の確執を生んでしまうのだが、少しでも軽減する為に弊社では以下のことを推奨している。

(1)非イノベ組織の人材とイノベ組織の人材の必要とされる「能力の価
  値」に違いはないことをマネジメントが理解をして社内に知らしめる。

(2)非イノベ組織とイノベ組織との間で敢えて人事異動を発生させる。

(3)非イノベ組織とイノベ組織の共同研究会を公式イベントとして実施す
  る。

上記の推奨事項でさえ簡単ではないだろうが、これをやり遂げてこそ秀逸なマネジメントを実現出来るのだと信じていただきたい。

このようなご質問をいただくことがある。

「イノベ組織に適合する人材は、何処にでもいる訳ではないですよね」

答えは「Yes」だが「隠れイノベ人材」とでも言うべき方々も企業内には存在していたりもするので、一般的な行動様式だけで甲乙つけてはならないと考えている。

だからこそ、上記の(2)で実際に異動させてみてイノベ人材かどうかを注意深く見抜かなければならないのだ。

話は変わるが、企業訪問した際に「彼は、当社の中ではイノベ人材として嘱望されているのです」と紹介を受けることもある。

そして「ワクワク」しながらその方と話をしてみると「あ、ただの無礼な方だったのね…」と気付くこともある。

皆さまも十分にご注意を。

合同会社タッチコア 小西一有

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