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「AIが要らないではないですか!」[20240711]


今週は、イノベーションについての「悲しい現実」。

食料廃棄と言えば、家庭の冷蔵庫の中で起きている事件もあるが、スーパーマーケットなど小売店での売れ残りの廃棄に課題を見出したチームがある。

特に生鮮食料品については消費期限よりも販売期限の方が早く到来してしまうことが問題なのだ。

さて、このチームが提案してきたアイディアはAIを使うもの。

簡単に言うと、閉店時間に近付いてきたら販売期限が近い生鮮食料品については、値引きして売り尽くしてしまえというものだ。

その値引きをどうするのかをAIで計算してマーケットにも店側にも最適に調整し、かつ時刻に対してフレキシブルに対応するそうだ。

例えば、キャベツ1個を定価250円で売っていたものを閉店1時間前になればAIが自動的に180円に設定する。

在庫量や客の入り(曜日やお天気など)を加味してセール価格を決め、更にメルマガ読者やメンバーカード保有者にはメールでセール価格をお知らせするというプッシュ機能まで提案してくれた。

必ず売り切るということを、AIを使って効率的かつ科学的に実施したいというアイディアだ。

正直、なかなか面白い提案だと思ったが違和感が無い訳ではない。

第一にAIを使うと言う話である。

そもそもAIが必要なのか?

私の自宅近くのスーパーなどで、夕方になると20%OFFとか40%OFFというシールを貼り付けている店員が出没するのを見ている。

本当のところは知らないが、かなりアナログな対応だがそれで大きな問題はなさそうに見える。

もう一つは、メールプッシュだ。

毎夕のようにやってくる「セール・ニュース」は有り難いが、顧客の購買行動を考えると「安くなってから買いに行こう」という層を生むのを促進しているようにも思う。

さて、仮説の話ばかりしても仕方ないので実際の広島県福山市に本部があるスーパーマーケット「エブリイ」の事例をお話したい。

どの店舗も生鮮食料品の売れ残りを出さないことで有名である。

更に「エブリイ」は、どのお店も開店前にお店の前に行列が出来ることでも有名だ。

この二つは「完全に繋がっている」話なのである。

「売れ残りが出たら惣菜にするのですよね」という声があがることもあるが、答えは「ノー」だ。

惣菜は全ての店舗で調理されているのだが、100%その日に入荷した新鮮な食材を使用している。

売場の生鮮食料品はその日中に「完売」するのである。

どうしているのか?

仕入れ量を閉店1~2時間前くらいに完売するように調整しているのだ。

「そんなことをしたら閉店間際に来たお客さまは、目的のモノを購入することが出来ないじゃないですか!」

エブリイの店長さんに尋ねたことがあるのだがこんな回答だった。

「当店では閉店近くになると生鮮食料品の在庫が無くなります。しかし、当店で購入いただいた生鮮食料品にはハズレが無い(鮮度も価格も)ことをお客さまは良くご存知なので、どうしても当店でお買い求めになりたい方が、朝からお店の前でお待ちになるという現象が起きるのです」

価格も?と思うかもしれないが、廃棄ロスがゼロなのでそれを価格に転嫁できるそうだ。

なるほど、良いコトだらけである。

だから、廃棄をゼロにする方法は、AIとかメール(アプリも)などをこねくり回さなくても可能だということ。

ちなみに、広島や岡山のような田舎だから朝から購入可能なお年寄りが多く、夜買い物をする単身者が少ない地域だからそんな話が通用するのだという話も出る。

これも店長さんに尋ねてみたが、顧客層は様々らしく田舎だからという特殊事情は無い様に思うとのことだった。

実際、閉店間際に来て「売り切れちゃったか」とガッカリする方も少なく無いが、それでもエブリイは「売れ残りを作らない仕入れ量」を徹底し「安心してご購入いただける鮮度(品質)と価格をご提供している」ことに誇りを持っている。

店長さんとお話をして、清々しさすら感じた。

「AIが要らないではないですか!」そう言ってアイディアを発表してくれたチームは苛ついていたが。

悲しい現実である。

合同会社タッチコア 小西一有

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